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5年目3rdQ (10〜12月) Part1

《目次っぽいもの》
わだかまりの結末[WR]龍の降臨[WR,SL]反逆への反応[SL,WR]注釈?



広島は若鯉球場にて行なわれた、10月のWRERA巡業初日。 *1

死闘となったセミファイナルを制し、興奮冷めやらぬ荒い息で喜びを噛みしめるボンバー来島の控室を、すでに試合を終えていた後輩の桜井千里が訪れた。

「TWWA世界ヘビー級王座奪取……おめでとうございます、来島さん」

「おおっ! ありがとよ、千里!」

無表情に近い千里の賛辞を、こちらは満面の笑顔と手にした輝くベルトで迎えた来島は、次いでその笑顔に大量の意地の悪さをブレンドしてみせた。

「ま、いつだったか、このスタイルじゃ世界は狙えない、なんて言い切った誰かさんの予言は外れたわけだ。 思いっきり『ざまーみろ』て言ってもいいよな?」 *2

「……お好きにどうぞ」

「ああ、そうさせてもらうぜ。それじゃ……」

来島は意地の悪い笑顔のまま、わざとらしく胸を張り──
見事なまでの豹変ぶりで、表情を真顔に変えて、言った。 桜井 来島

「今日は、お前のおかげで勝てたぜ。千里」

「!!?」

来島の言葉で、千里の無表情が豆鉄砲でも食らったかのように変わり──

「場外で意識が飛びかけた俺に、リングサイドから叫んでくれたよな?
『あなたが貫くと決めたスタイルも、あなたが信じたパワーも、こんなものだったんですか!? しっかりしなさい!』……てよ。
あのゲキが無かったら、俺は負けてた。
このベルトは、お前がくれたもんだ。 ホントにありがとな、千里?」

そのダメ押しに、千里の顔は、ボンッ、と火でも噴きそうな勢いで紅く染まった。

TWWA

TWWA世界ヘビー級王座選手権、クリス・モーガン VS ボンバー来島。

パワーファイター同士、といえば互角にも聞こえるが、モーガンはパワーだけの王者ではない。
試合も、来島が序盤に見せたパワーラッシュを凌いだモーガンが反撃に転じると、その後はほぼ一方的な展開になった。

終盤、場外に落とされた虫の息の来島に、“神の一撃”ポセイドンボンバーが命中。実況席を壊さんとばかりに来島の身体が叩きつけられた時は、誰もが万事休すと思った。

それがリングに戻るや、起死回生のナパームラリアット二連発。

あまりに突然の、そしてそれだけ劇的などんでん返しに、来島が3カウントを奪ったときには、会場中が興奮のるつぼと化したのだった。 *3

その立役者が、他ならぬ千里だったとすれば……
来島 桜井

「ま、まあ、来島さんがどう思ってくれようと勝手ですが」

頬を赤らめた千里は、努めて平静を装って声を出した。
ただし、全く成功していない。

「ゆ、油断しない方がいいです。 私は、自分が負けたクリス・モーガンを恨んでるだけかもしれないんですから。 そのうち、来島さんのベルトを狙って闇討ちでもするかもしれませんよ?」 *4

「……お前ってあれだな? 富沢が時々口走ってる、ツンデレってやつだろ」

「違います!」

千里がさらに顔を紅くして異議を叫んだその時──

「来島ちゃん、千里ちゃん! た、大変にゃん!!」

控室のドアが、テディキャット堀の大きな声とともに開いた。




来島と千里、そして堀が駆けつけた時、場内は不気味なほどに静まり返っていた。

メインイベントは、マイティ祐希子 VS ビューティ市ヶ谷。
翌月シリーズに予告された二人による NA世界無差別級タイトルマッチの前哨戦として、ノンタイトル戦ながら TWWA王座戦すら押しのけメインに位置づけられた試合である。

どうやら今回の軍配は祐希子に上がったようだが、リング上の選手二人も、観客たちも、全ての視線は、球場に設置された花道に立つ、チャンピオンベルトを肩に掛けた一人の女性に釘付けになっていた。

──全身に龍が如きオーラを纏った、その女性に。

龍子

「いつぞやのEXタッグリーグ以来か。ご無沙汰だね、祐希子」 *5

「……サンダー、龍子……!」

マイクを通した龍子の声に、会場の沈黙が、微かなざわめきへと変わる。
祐希子の呟きは、そのざわめきの中に埋もれた。
それなのに、龍子にはその呟きがしっかりと届いたようだ。

「覚えてもらってて、うれしいよ。 いや、鳴り物入りの実力制世界王座、NAシングルの王者サマに知ってもらえてて、光栄ってとこかな」

淡々とした龍子の一言一言が、屋外会場ならではの夜空を渡る。
祐希子は、口を真一文字に結んで、応えない。
それが気に障ったわけではないだろうが、龍子は唇の端を微かに笑みの形に歪めて、呟いた。

「──ふざけんじゃないよ」

一瞬──再び沈黙の幕に包まれた客席を、わずか数秒でざわめきがもう一度奪い返した。今度は、さきほどよりも大きい波だ。

「実力世界一だって? 団体を超えた世界王座だって?
WRERAなんてちっぽけな団体の中で、ちまちま王座戦やってるだけのくせに、ふざけんじゃない! このサンダー龍子を差し置いた実力世界一なんて称号、何の意味も無いんだよ!」

スレイヤー・レスリング所属、サンダー龍子。
海外団体のトップ相手を含め、ここ半年はシングルで無敗を貫く、無敵の雷龍。 *6

だからこそ、その言葉にはこの上ない説得力が込められていた。

「さっさと私とやって、真の王者にそのベルトを渡すんだね……マイティ祐希子ぉっ!」

龍子に集中していた視線が、今度は彼女が突きつけた指先、その延長線上に集中する。

── NA世界無差別級王者、マイティ祐希子。
勝利者用にと彼女に渡されていたマイク。それを握った左手をゆっくりと持ち上げて──

「オーッホッホッホ! 何を勘違いしていらっしゃるのかしら、このサンダー馬鹿子さんが!?」

市ヶ谷 祐希子を後ろから蹴り倒しつつ、器用に奪い取ったマイク。
それを握った左手をゆっくりと口元に当てたビューティ市ヶ谷は、龍子と祐希子の一触即発の舞台へ、絢爛豪華に割り込んだ。

「実力最強? それは私。 世界最強? それも私。
いえ、この広い夜空を見渡しても並ぶもののいないこの私、ビューティ市ヶ谷が、ようやく私の価値の一千万分の一でも表現してくれそうなベルトを、この腰に巻いてあげる気になりましたのよ?
真の王者に渡せというなら、このまま大人しくお帰りなさい……そうすれば、来月には真の王者であるこの私が受け取っているのですから! オーッホッホッホ!」

「……あんたもEXタッグ以来だけど。 相変わらず良く回る口だね、ダーティ市ヶ谷」

龍子の口ぶりには敵意と興ざめの色が濃かったが、不思議と苛立ちは無かった。
この展開もあると、ある程度は予想していたのかもしれない。

「次のコンテンダーがあんただって聞いた時から、はいそうですか、で挑戦権を譲ってもらえるなんて思ってなかったよ。
それでも、挑戦権は力ずくでも私がもらう。 代わりといっちゃなんだけど……」

ざわめきが、どよめきに変わった。
龍子が肩からベルトを外して、照明の光にかざしたのだ。

「こいつを賭けて勝負してやるよ、市ヶ谷」

四方からの人工光を浴びて虹色に輝くのは、スレイヤー無差別級王座ベルト。
紛れも掛け値も無い、スレイヤー・レスリングの至宝、団体最高位王座である。

「それで負けたら、大人しく私に NAベルトを譲るんだね。 あんたにも、そのうち挑戦させてやるけどさ」

「オーッホッホッホ! 飛んで火に入るカモネギとはこのことですわ! 予定調和の NA王座だけでなく、先にスレイヤー王座までいただけるなんて、これはもう笑いが止まりませんわね!」

そうして、夜空に市ヶ谷の高笑いが響く中、今月の最終戦におけるサンダー龍子 VS ビューティ市ヶ谷のスレイヤー無差別級王座戦が、なし崩しに決定したのであった。 *7

「えっと……NA世界王者は、このマイティ祐希子サマなんだけどなぁ。……ま、いっか」




スレイヤー無差別級王者、サンダー龍子の WRERA殴りこみ。

その話題は、翌日のスポーツ紙に一面を差し替えさせる大騒ぎになった。

サンダー龍子も、その一身に集めた期待と注目を裏切らず、参戦した10月巡業第二戦から、六角葉月、クリス・モーガン、桜井千里、ボンバー来島と並み居る強豪を次々と撃破。 *8 SLAYER

その圧倒的な実力を見せ付けつつ、龍子はスレイヤー無差別級王座と NA王座第一挑戦権の二つを賭けた、市ヶ谷との一戦を迎えることになったのである。

「……やってくれましたね、龍子選手は」

「ああ、やってくれたよ。大したものだ」

聞きようによっては称賛ともとれる言葉だったが、実際にこもっている感情は苦味と嫌味、そして怒りだった。

スレイヤー・レスリング──特に、社長と秘書の井上にとって、今回の騒動は全くの寝耳に水。 WRERA殴りこみもスレイヤー王座戦も、全ては龍子の独断だった。

万が一にも負けるようなことがあれば、団体にとってもダメージは計り知れない。
そうでなくても、「団体最高位王座戦が、NA王座の挑戦者決定戦である」というだけで既に、スレイヤー王座と NA王座の価値に後者が上という序列がつけられてしまっているのが問題だった。

龍子の行動は、団体の権威と利益を第一とする社長や井上にとって、裏切りにも等しいものだったのである。

「ましてや、今の我々は、スキャンダルからの建て直しをはかる重要な時期にあります。 団体トップがそれを放り出すとは……綱紀粛正、未だ甘しということですね」 *9

「そうだな。 ただ、言って聞く相手でもあるまい。“反逆の女神”……最近はその実力も態度も、手がつけられないものになりつつある。 前者はうれしい話だが、後者はな……」

苦虫を噛み潰す社長だったが、いかに彼らでも、回りだしてしまった歯車はもう止められない。 結局は、龍子の勝利を信じて待つことしかできないのだった。

──そして、様々な注目の中でゴングが鳴らされたサンダー龍子とビューティ市ヶ谷の試合は、市ヶ谷が三発の──返した分も合わせれば計五発のプラズマサンダーボムを耐え抜いたものの、最後はSTOで力尽きた。 *10

龍子は、スレイヤー王座五度目の防衛を果たすと同時に、次シリーズでの NA王座挑戦権を奪ってみせたのである。 *11

「今度はそっちが来な……待ってるよ!」

「望むところよ!」

試合後に、龍子と祐希子の間で交わされた言葉はそれだけ。
二人には、それだけで十分だった。




*110月のWRERAでは、ゆっこFC、市ヶ谷FC、堀学園祭、ゆっこコメディ映画(お断り)、がありました。
また、宿舎をLv4にしてます。
*24年目1Qをご参照ください。桜井なりに、この時のことを気にしていたから、後述のようなゲキを飛ばしたのでは…という妄想設定です。
*324分44秒、ナパームラリアットで来島がTWWA王座奪取。
場外に出ていなかったら、そこでポセイドンボンバーを食らった後に必殺カードが出なかったら…と、終盤の来島に向いた運には、本当に誰かのゲキによる奮起でもあったのではないかと…
*45年目2Qで、桜井はモーガンに惜敗してます。
*5一応、3年目のEXタッグで顔合わせしてます。当時は最後の一行で終わらせてますが…
*6戦績まで確かめてないので実は見てないところで負けてるかもしれませんが、否観戦も含めて、シングルで龍子に×マークはここ半年ほどついてません。
*7もちろん、ゲーム中では巡業途中からの殴りこみなどはありえません。龍子は10月頭から参戦してます。
*8全部観戦&龍子操作で、全員なぎ倒してます。
*95年目1Qのスキャンダルの爪あとは、未だに大きいです。
*1020分36秒、STOでの決着です。龍子と市ヶ谷の評価値は、60ほど龍子が上。いかに市ヶ谷様でも、COM操作ではプレイヤー操作の龍子にはなかなか勝てません。
*1110月のスレイヤーは、IWWFタッグ遠征防衛、フレイアFC、小鳩学園祭、千春CM、小鳩CM、石川写真集(「かなり」の売上)、宿舎をLv4に、桜崎プライベートイベントその2、などがありました。
また、フレイアが上原を相手にWWPA四度目の防衛(15分20秒、ローリングクラッチホールド)を果たしてます。
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