5月のスレイヤー・レスリング巡業は全六戦。 *3
第五戦、横浜興行のメインは、ブレード上原にRIKKAが挑む、スレイヤー無差別級王座戦。
その結果は、ブレード上原の勝利による、5度目の防衛。 *4
そして、最終第六戦となる大阪興行のメインは、サンダー龍子にブレード上原が挑む、EWA認定世界王座戦であった。
《サンダー龍子、EWA王座防衛っ!! 序盤こそ苦しみましたが、あのブレード上原を相手にこの勝ち方! これはもう圧勝と言っても……おおっと、サンダー龍子がマイクを持ったぞ!?》 *5
「上原さん……おめでとうございます」
ざわっ。
自らが下した相手に対し、あまりに意外な言葉をかけた龍子に、観客はどよめいた。
「……横浜でのスレイヤー無差別級王座戦、見事な勝利でした。五度目の防衛、おめでとうございます」
なんだ、そういうことか──と、息をついた客席は、しかし、
「ですが、そろそろベルトの重圧から、解放されたがってるんじゃないですか?」
と続いた言葉に、再び、そして何倍も大きくどよめいた。
「今まで、私たちが不甲斐ないばかりにすみませんでした。でも、もう大丈夫です。 今度は……今度こそ、あなたからベルトを奪ってみせる! この団体の頂点、スレイヤー無差別級ベルトを腰に巻くのは、このサンダー龍子だ!」
龍子の宣言は、今日の圧勝劇もあって十分な説得力を持って客席に届いた。
しかし、それを黙って聞き流すブレード上原では無い。リング外からマイクを受け取ると、真っ向から龍子の挑戦を受けて立った。
「今日は確かにやられたよ、龍子。 ──でも、調子に乗るのは早すぎだ! 王者としての私をナメてもらっちゃ困る! 夏のシリーズで楽しみにしてるといいさ……去年と同じ結果をね!」 *6
堰を切ったかのような大歓声の中、VIP席からリング上の経緯を見守っていたスレイヤー・レスリング社長は、秘書の井上に二つの指示を出した。
一つは、8月シリーズで二人のスレイヤー無差別級タイトルマッチを組むこと。
もう一つは、ファンやマスコミを煽り、それまでの興行も成功に導くこと、であった。
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