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10年目2ndQ (7〜9月) Part4 〜 世代交代の波 〜

《目次っぽいもの》
世代交代の波[SL]疾風怒濤・破竹の勢い[WR]注釈?



ライラ

「ひゃーっはっはっは! なんだぁ?
あんた、こんなに弱かったのかよ、真田先輩!
それとも、私がそんだけ強くなったってことかぁ?
どっちにしろ、こいつはとんだ拍子抜けだぜぇ!」

8月のスレイヤー興行。 *a1
ASIA 第五戦のセミファイナルに置かれた真田美幸 VS ライラ神威のアジアヘビー王座タイトルマッチは、誰も予想しえなかった展開となった。

わずか 6分07秒、挑戦者のライラがベルトを奪取。
しかも、王者・真田に一発の有効打も許さない完全勝利。 *a2

一年前には名勝負を繰り広げたカードの意外な結末に、会場はブーイングや拍手も忘れて、しばらくの間、ざわめきだけに埋め尽くされたのである。

そして、三日後──

桜崎

「真田お嬢様……。
いつまでもふさぎ込んでいると、お身体に毒ですわよ?」

「…………」

真田が敬愛する先輩にしてタッグパートナーでもある、メイデン桜崎。
彼女がかけた気遣いの声にも、真田は反応を見せなかった。

ジムにこそ来るが、練習にも身が入らずに座り込んでいる。
この二日間、真田はずっとこんな調子だったのだ。

「お気持ちもわかりますが、勝負は時の運。
実力差以上の一方的な展開になることだってありますわ。
お嬢様お得意の気合と根性で気持ちを切り替えて、明日の試合でリベンジなさればよろしいではありませんか」
GWA-T

明日の第六戦では、桜崎と真田の王者組が EWAタッグ王者のライラとケルベロスを挑戦者に迎える、GWAタッグ王座戦がある。
真田にとっては願ってもないリベンジの機会となるはずだった。

もちろん、桜崎にとっても大切なベルトであり、真田がやる気を出せずに足を引っ張られては困る、という打算的な想いもある。

「……世代交代っスかね……」

「はい? なんですか、真田お嬢様?」
真田

「桜崎先輩も、この前 JSWヘビーに挑戦して、永沢に負けてるっスよね……」

「え、ええ。 そうですね」 *a3

なにいきなり人の傷をえぐってるのよこの子は、と内心カチンときながらも、桜崎は柔和な笑顔のままで頷いた。
その顔を見もしないまま、真田は独り言のように話を続ける。

「WRERAでも、革命だとかで大盛り上がり。
越後さんと堀さんのアジアタッグも、後輩に獲られちゃってたっス。
うちの団体のタイトルホルダーも、どんどん若返ってるし……。
自分たちはもう旧世代で、これからはもう後輩たちの時代なのかもしれないっスね……」

「真田お嬢様……」

桜崎は、一つ、小さな息を吐いた。

「そうかもしれませんね。 もう、私たちの時代は終わった。 そうなのかもしれません……」

「…………」

「──なんて、言うと思ってんのっ!?」

真田は、想像もしていなかった。
まさか胸倉を掴まれ、爪先立ちになるまで強引に持ち上げられるとは。

「さ、さささ!? 桜崎先輩っ!?」

「ざけてんじゃないわよ、真田っ! あんたらしくもなく、一度負けたくらいでウジウジと!
ブッコロされたいわけ!?」

「せ、先輩っ!? キャラが! かぶったネコが、脱げてますっ!」

「うっさい、黙れっ!
何が後輩たちの時代よ! WRERAの革命よ!
一度や二度の試合結果で、わかったようなこと言ってんじゃない!
あっちの旧世代は今でも最強で、だから追い抜くほうも必死で戦ってんでしょーがっ!
後輩の時代だってんならなおさら、私たち先輩が強くなくっちゃいけないんだっての!」

投げ捨てるように真田を解放して、桜崎は身を翻した。

「気合と根性は、無敵なんでしょ! だったらそれを証明してみなさい!」

「桜崎……先輩……」

大股で去っていく桜崎を、真田は床にへたり込んだまま見送っていた。

翌日。
8月最終第六戦、GWAタッグ王座選手権試合。
挑戦者の待つリングへと向かって、桜崎はただ一人で長い通路を歩いていた。

「真田は来ない……か。 まったく、あのバカはっ。
いいわよもう、こうなったら、一人でもやってやる。 絶対にベルトを守ってやるから!」

「いいえ! ベルトは二人で守るっスよ! 桜崎先輩ぃっ!」

「さ、真田っ……お嬢様!?」

背後から猛スピードで走ってきた声に、桜崎は慌てて振り向いた。

「お嬢様、今までいったいどこに──きゃあっ!?」 桜崎 真田

「心配かけてすみませんっス!
気合と根性入れなおしで、山奥で滝に打たれてました!」

「た、滝っ!? 山奥ぅ!?」

「場所は斉藤に教えてもらったんすよ! *a4
おかげでスッキリしました!
気合も十分、今日は最初から全開で行くっスよ!」

「ぜ、全開で行くのはいいんだけど……!」

桜崎は、真田の大声に負けないように叫んだ。
リングへと走る真田に抱え上げられた、その腕の中で。

「どうして、私をお姫様だっこしてんのよぉっ!?」

── 19分32秒、ライラを打ち倒したのは、真田の斬馬迅。

GWAタッグ王者・桜崎&真田組は、勢いに乗る後輩の挑戦を一蹴して、十二度目の防衛を成し遂げたのだった。




富沢

《ば、ばかなぁぁぁっ!
と、富沢レイが、あの富沢が!
“至高の存在”クルス・モーガンから、まさかの大逆転勝利っ!
自称とはいえタイトルマッチと銘打たれたこの試合で、モーガンから TTT王座を防衛してしまいましたぁぁっ!》

「おめでとうございます、富沢さん! 本当にすごい試合でしたね!」

「あはは、ありがと、佐久間。
いやー、勝った私が一番驚いてるわよ。
TTT防衛戦をモーガンとやるなんて冗談が通るとは思わなかったし、試合が決まったら非難のメールや電話も一杯届くし、試合はあっという間に追い込まれるし。
いったい何回カウント2.9聞いたか、わかんなかったわ」 *b1

「それなら、11回でしたよ」

「……わざわざ数えてくれてたのね、あんた……」


WRERAの 8月と 9月の両シリーズでは、“新世代”軍の活躍が目を引いた。 *b2

TTT ETC ETC

8月は、めぐみ&千種のアジアタッグ奪取はもちろん、富沢まさかの対モーガン・TTT防衛。
9月には、ノンタイトルとはいえ、千種がシングルで市ヶ谷から初勝利。 同じくめぐみも祐希子から勝利をあげた。 *b3
ETC

さらには、叛乱勢力の盟主対決となったタッグ戦、千里&龍子 VS めぐみ&千種の一戦でも、周囲の予想を覆し、めぐみ&千種組が勝利。

その破竹の勢いが評価される形で、9月の最終戦・札幌興行では、IWWF世界王座戦・桜井千里 VS 武藤めぐみの一戦がメインに組まれた。

二つの叛乱勢力、そのいずれが翌月に予定される祐希子との NA王座戦に挑むのか──。

公に宣言こそされなかったが、その挑戦権が賭けられた試合であることは、固唾を呑んで見守る誰の目にも明らかであった。


「めぐみ、頑張ってね! これに勝てれば、次は間違いなく祐希子さんとの NA王座戦だよ!」

「そうね、千種。 これも、みんなが活躍してくれたおかげよ。
思ってたより早くもらえたチャンス。 千里さんは強いけど、きっと勝ってみせるわ。
私の目標は、もっと先にあるんだから!」


IWWF

世界の頂点・マイティ祐希子の NA王座を狙うめぐみにとって、桜井千里も IWWF王座も、その通過点にすぎない。

もちろん、めぐみも知っている。
千里が、決して油断できる相手ではないことを。
それどころか、時に祐希子をも凌ぐ強さを見せる、真の強敵であることを。

「長引けば……私が、不利。 だから、一気に行くわ!」

ゴング直後から飛び出た、めぐみのラッシュ。
かつて先輩の六角葉月から序盤の甘さを指摘された、あの頃の武藤めぐみではもう無い。 *b4

めぐみ得意のフライングニールキックも決まり、千里はまさかの防戦一方。
その勢いの前に、このまま決着がついてしまうかとも思われたが──

「目標はもっと先にある……それは、私も同じこと!」

千里のミドルキックが、めぐみのボディを抉った。
よろめいためぐみを、もう一撃、同じ軌跡の蹴りが襲う。
めぐみは十字受けの形で、中段をガードした。

「甘い!」

読みきっていたのか、千里の蹴りは寸前で変化し、上段へとその軌道を変える。
千里必殺のハイキック、その変化形が、めぐみの無防備なこめかみを打ち抜いた。

「祐希子さんも私も! 立ち止まって追いつかれるのを待っているなんて、思うな!」

「そんなこと……百も承知よ!」

まさに、激闘。
フェイスクラッシャーや DDT、そして投げ技を交互に出し合うという、意地の張り合いのような展開で、互いが互いの体力と気力を削っていく。

序盤のアドバンテージはすでに無く、めぐみはこのまま押し切られてしまうかと思えたが、

「勝ってみせるって、千種に言ったの! 約束は守ってみせる!」

ジャンピングニー、フロントスープレックス、ニーリフト、不知火。
めぐみ再度のラッシュが、千里をマットに打ちつける。
入ったカウントは、2.8。
押し切れる、そう判断しためぐみはさらに前へと出た。

「約束を守るため──そんな考えでは、私に勝てない!」

そこにカウンターで入った千里の掌底が、勝負を決した。
崩れためぐみをそのままグラウンドで STFに捕らえて、めぐみには無念のタップアウト。

自身十五度目となる防衛を成し遂げるとともに、桜井千里は、一気に頂点まで辿り着くかと思われた“新世代”の旗手に、鋭く重いクサビを突き刺したのだった。




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■ 注釈(?) ■
*a18月のスレイヤーでは、斉藤2pFC、小鳩CM、美沙CD(「すごい」ヒット)、小鳩一日署長、ライラ写真集(「あまり」売れず…)、美沙のプライベートイベント、など。
タイトルマッチは、本文のもの以外に、フレイア&千春の NJWPタッグ八度目の防衛(vs小鳩&美沙)。
9月は、真田CM、小鳩のTWWAジュニア十二度目の防衛(vsコリン)、真田&桜崎の WWPAタッグ四度目の防衛(vsカオス2p&コーディ2p)、がありました。
*a2茫然自失の、自分操作のタイトルマッチにおける最短敗北記録にして初の攻撃成功回数ゼロ
手札ボロボロの状態から始まり、ヘッド、ヘッド、必・地獄落とし、スクラップバスター、STFでギブアップ負け。
真田にはホントにごめんなさい。 でも、最初から詰んでた感もあります。
なお、一年前の同じカードでは真田が勝ちを収めてます。
*a3この 8月に、19分33秒、タイガースープレックスで JSW八度目の防衛を許してます。
*a4まあ、斉藤さんと言ったら山ごもり、山ごもりと言ったら斉藤さんですよね。
あ、ここでの「斉藤」はスレイヤー所属の斉藤2p、コンバット斉藤です。
*b1プレイヤーがおそらく二番目に驚いてます。
多大な評価値差を証明するようにあっという間に体力0%vs70%になり、必殺パワースラムで終わった…と思ったら2.9。そこからポセイドンボンバーとか何度喰らっても、その度ゾンビのように2.9で凌いだ富沢 (本当に11回です)。必カードのフランケンシュタイナーやトラースキック、関節技でじわじわ追いつき、最後は飛カードのフランケンシュタイナーでまさかの勝利でした。
*b29月のWRERAは、千秋軽傷、小縞FC、来島アクション映画(どうせGWA遠征なので。結果は「ヒット」)、市ヶ谷CM、めぐみプライベートイベントその2、など。
本文で取り上げないタイトルマッチは、堀のGWAジュニア十五度目の防衛(vs小縞)、千秋のWWPAジュニア七度目の防衛(vs堀)、でした。
*b3市ヶ谷vs千種、ゆっこvsめぐみは、どちらもフルオート観戦でした。
ちなみに、同じくフルオート観戦のゆっこvs龍子は、またも龍子が敗北。ゆっこの龍子戦無敗記録が継続中です。
*b4一応、7年目4Qでそれっぽい話を。
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