10年目2ndQ P2 へ ←  リプレイトップへ  → 10年目2ndQ P4 へ


10年目2ndQ (7〜9月) Part3 〜 資格の証明 〜

《目次っぽいもの》
遊びじゃないんだから[WR]資格の証明[WR]タッグの力[WR]注釈?



WRERA 7月最終戦の“叛乱劇”から数日。
祐希子たちとの馴れ合いを避けるためにと、生活時間をずらすなどの工夫をしていた武藤めぐみと結城千種は、ジムでもいささか寂しい人数での練習を続けていた。

しかし、8月に入ったばかりのある日のこと── *a1

富沢

「あら。 遅いじゃない、二人とも。 もう練習始めてるわよ」

「レ、レイさん!? いったいここで何を!?」

「何をって……いくらなんでも失礼ねえ、結城。
ジムでやるのは練習に決まってるでしょ」

「そ、そんな。 まさか、富沢さんが自主的に練習を……!?」

「ちょっと、武藤。 そこはそんなに驚くとこじゃないってっ。
私だって、たまには真面目に練習することだってあるわよ。
ま、あの子たちの手前、てのもあるんだけどさ」

富沢が顔を向けると、ちょうどタイミングを計ったかのように更衣室のドアが開き、中から二つのトレーニングウェア姿が現れた。
成瀬2p 理沙子2p

「あら、富沢さんが私たちの目を気にしているなんて。
少し意外ですね」

「ほんまですねぇ。 明日は雪でも降るんちゃいます?」

「佐久間ちゃん! 成瀬ちゃんも!?」

「あなたたち、どうして? この時間は、私たちの練習時間でしょ?」

「私たちは、私たちでもあるんですよ、めぐみさん」

「そうやで、先輩がた。 詳しくはほら、あっちの貼り紙をご参照、と」

めぐみと千種は顔を見合わせると、成瀬の指した掲示用ボードに駆け寄った。
貼られた紙に書かれた「チーム分け表」という言葉と、表そのものを見て、二人の目が丸くなる。

最強世代チーム:祐希子、市ヶ谷、来島、堀、越後、小縞
新世代チーム:武藤、結城、富沢、佐久間、成瀬
一騎当千チーム:桜井、龍子、千秋


「……千種。 なによ、このチームっていうのは?」

「わ、私に訊かれてもぉ」

「まぁまぁ。 全ては社長と霧子さんの発案やって。
二人とも今回の抗争劇勃発には相当慌てとったみたいやけど、『こうなったら楽しもう!』とか社長が言い出したらしいねん。 で、なんやチーム名までつけて、団体メンバ全員どこかのチームに入るように、ってお達しが来たつーわけで」

「それで私たちは、お二人と一緒に戦おうと決意したんですよ」

佐久間の微笑みは柔らかかったが、その瞳には固い意志の光が見て取れた。

「お二人の足を引っ張るだけではと迷いましたが、私もいつかは祐希子さんや市ヶ谷さんたち大先輩に追いついて、追い越したいと思っています。 だから、めぐみさんと千種さんの選んだ道を私も選びたいんですよ」 *a2

「ウチの場合は、新人はこっちやろなーって単純に思うただけなんやけど。 あとは、成功したら、こっちのがお金にはなりそうやしね」

「そ、そうなんだ……」

「はい。 小縞さんも誘おうと思いましたが、ちょうど現れた市ヶ谷さんに引っ張っていかれて、向こうのチームに入ったようです」 *a3

「……富沢さんは?」

「私はまあ、こっちの方が後輩ばっかで大きな顔できそう……じゃなくて、越後さんもいないから練習もサボれそう……でもなくて、純粋にプロレス界の未来を考えてのことよ」

「はぁ。 そうなんですか……」

ぼんやりと返した千種は、もう一度、めぐみと顔を見合わせた。
めぐみ 千種

「どうする? めぐみ……?」

「どうするもなにも……仕方ないでしょ。
社長と霧子さんが決めたことなんだから。
まったく社長も、こっちは遊びじゃないっていうのに……」


「はっっくしょぉいっっ!」

WRERAの社長の口から予告も予感も無しに飛び出た、盛大なくしゃみ。
下手をすれば机の向こうに立つ二人に直撃するところだったが、とっさに横を向いたことで、何とか被害は回避させることができた。

「社長さん、大丈夫ですか〜?」

「夏カゼかい? 気をつけなよ」

笑いを含んだ二人の声に、わざとらしい咳払いで応えてから、社長は思わぬくしゃみで中断させられた話を、すぐさま再開した。

「と、というわけで、これで契約は完了。 君たちはわが団体の一員だ。
よろしく頼むよ、二人とも」
龍子 石川

「はーい、コーチの石川でーす。
楽しくプロレスしましょうね〜、龍子♪」 *a4

「はいはい。 楽しくやろうな、石川。
──しかしさ、本当によかったのかい、社長さん?
てっきりフリーのままの参戦契約だと思ってたのに、わざわざ所属契約を結んでくれるなんてさ」

「一ヶ月やニヶ月で終わりそうな抗争なら、そうしただろうけどね。
今回はそれほど簡単に決着がつきそうもない。
そうなれば、むしろ短期契約の方が高くつくから……と、霧子くんが言ってくれたんだ。
それにね……」 *a5

「それに?」

「あのサンダー龍子を自分の団体に迎えられると思うと、それだけでうれしくてね。
社長としてももちろん、一人のプロレスファンとして、やっぱり放ってはおけないんだよ」

「はは、光栄だね。 捨てる神あれば拾う神ある……ってとこか。
それじゃ、期待には、責任をもって応えなきゃね!」 *a6




8月。
WRERAの興行は、一月あたり六戦という全体構成こそ普段通りだったが、先月の“叛乱劇”つまりは団体内抗争の勃発と、それによるサンダー龍子の参戦もあって、先月までとは一線を画する試合構成になっていた。

龍子 ゆっこ

「はぁい、龍子。
いきなりの市ヶ谷戦勝利、おめでとさん。
勘は鈍ってないようだけど、どう? うちの団体は?」

「祐希子か。
わかってたことだけど、さすがにレベルが高いね。
ファンも熱いし、それに、温かい。
大ブーイングを覚悟してたのに、私のことも応援してくれたしな」

「あはは、そりゃ、あんたの実力も苦労も、みんなが知ってるからねえ。
でもその分、気を抜いた試合とかやろうもんなら、それこそ大ブーイングよん?」

「肝に銘じとくよ。 次の興行では早速、桜井と組んで、あんたと来島とメイン戦だしな。
ただ……いいのかい?」

「へ? なにが?」

「武藤と結城のことさ。
このシリーズ、私はいきなり、あんたや市ヶ谷と、セミやメインでやらせてもらえてる。
なのに、抗争の引き金を引いてくれたあいつらは、全試合が前座やセミ前止まりだ。
ちょっと、申し訳ないって気がしてね」 *b1

「いいのいいの。 あんたや桜井ちゃんとあの子たちじゃ、実績も何も違いすぎるんだからさ。
それにね、あんだけのこと言ってのけたんだから、まずは証明してもらわなきゃ」

「証明……だって?」

「そ。 世界を変えるために頂点に立つ、少なくともその挑戦権があるっていう証明よ。
生意気は言わせない。 きっちり順番守って上がってきてもらわないとね」

その言葉と、どこか嬉しそうな声の響きで、龍子は祐希子の想いに気付いた。
少なくとも、その一部分に。

「──なんだい。 どうやら、私の勘違いだったようだね。
ていうかむしろ、私の方が刺身のツマだってことかな?」

「はぁ? どこに龍を刺身のツマにできる料理屋があるってのよ?」

笑顔で肩をすくめた龍子に、祐希子も同じく、苦笑とともに肩をすくめてみせた。




「アジアタッグのベルトかぁ……。
うん、新女の伝説、あの革命だって、まずはこのベルトからだったもんね。
それにこれを獲れれば、市ヶ谷さんと千里さんに辿り着く扉も開けるはず。
今月は、私が越後さんから、めぐみが堀さんから、シングル王座を守ってるし。
タッグでもきっと勝てるよね、めぐみ?」 *c1

「『シングルとタッグは別物』──なんて、いまさら言わせないでよ、千種。
あの二人は、もうずっと長いこと王座を守ってきてる名コンビよ。
タッグでの実力は、シングルの倍くらい強いと思ったほうがいいわ」

「……驚いた。 めぐみにしては、弱気発言よね……?」

「弱気? なに言ってるのよ。
相手が名コンビなら、私たちはベストタッグでしょ。
それぞれがシングルでやるより……そうね、五倍は強いかな。
私はそう思ってるんだけど、千種は違うのね?」

「……めぐみの、いじわる」

ASIA-T

WRERA 8月シリーズ、最終戦。

セミ前とはいえ、今後を占う上でも重要な一戦として注目を集めた試合こそが、テディキャット堀&越後しのぶの王者組に、“新世代”の盟主・武藤めぐみ&結城千種が挑む、アジアタッグ王座選手権だった。

「武藤! 結城!
お前たちがやっていることは、祐希子さんたちからの恩をアダで返すような真似だ!
その間違った根性……この私が、叩き直してやる!」

上下関係を重視し、そうでなくても先輩たちを心から尊敬している越後にとって、めぐみと千種が翻した叛旗は、とうてい許せるものではなかった。

しかし、その怒りが試合序盤の越後を空回りさせてしまう。
得意の打撃勝負でめぐみからカウンターを食らいまくり、いきなり大きなビハインドを負った。

「しのぶちゃん、落ち着いて! ここは一旦、私に替わるにゃ!」

「了解です! とりあえずは、これでお返しだ!」

大技・延髄斬りで越後がめぐみに借りを返してから、双方がタッチ。
堀が得意とする投げは千種の得意分野でもあるが、堀にはもう一本、飛び技という柱もある。
それを軸に攻めたてれば、試合を優位に進められるはず──

「今の私たちの力、見せてあげます!」

王者側の目論見は、千種の奮戦によってもろくも打ち砕かれた。

ベアハッグなどのパワー技で堀のスタミナを奪い、互いに小刻みなタッチを挟んで再び向かい合った時には、ついに千種必殺のバックドロップが炸裂。
越後のカットとタッチがなければ、試合はここで終わっていたかもしれない。 *c2

「アジアタッグ王者の底力、なめるなよ!」

序盤のミスを取り戻さんと、越後は小技の積み重ねから、一転して再びの延髄斬り。
タッチで飛び込んできためぐみをも、堀とのWドロップキックで迎撃しようとするが、

「勝つのは私──私たちなんだから!」

めぐみのフライングニールキックが、迎撃技もろとも越後を吹き飛ばした。

「しのぶちゃん!? ……でも、これは逆にチャンスにゃん!」

大技を敢行しためぐみの隙をついて、堀のフィッシャマンバスターが、逆転勝利への糸を手繰り寄せる。 しかし。
千種 めぐみ

「こんなところで、立ち止まってられないの!」

「私たちの輝き、誰にも邪魔はさせません!」

めぐみのWパワーボム、両チームのタッチから、千種のWインパクト、そして、バックドロップ。

ベストタッグというめぐみの言葉を裏付けるような連携ぶりを見せて、挑戦者組はついに王者組を振り切った。

決着は 35分13秒。 めぐみと千種は、タッグとして初のベルトを手に入れたのである。




ページトップへ
■ 注釈(?) ■
*a18月の WRERAは、来島FC、市ヶ谷FC、理沙子2p一日署長、宿舎Lv5に、などがありました。
本文では取り上げないタイトルマッチは、堀のAACジュニア三十度目の防衛(vs千秋)、です。
*a2「1」「V1」ではゆっこたちの「反乱」を受けてたった理沙子さん。
2Pキャラとはいえ、いわば理沙子さんが反対の立場になるわけです。
*a3まあ、やっぱり「V3」での市ヶ谷&小縞話が印象に残ってるので…。
あと、千秋はまあ、「めんどくせーなー。群れるのは嫌いなんだよ…」とか言って、干渉が一番少なそうなチームに入ったということで。
*a4ゲーム中で石川さんがコーチになる時のセリフほぼそのまま。
この時の石川さんの声、なんかメチャクチャかわいいんですけど。
*a58月、石川さんをコーチにするとともに、龍子を獲得した WRERA。
短期参戦では操作もできないし、そのまま放っておけば11月には引退してしまいます。
引退させないためには、雇うしかない状況だったりも。
*a6「3」で龍子さんをスカウトした時のセリフ、ほぼそのままのはず。
当時、このセリフの格好よさから龍子さんを好きになったと言っても良いでしょう。
*b1実際、意識してそんな感じで試合を組みました。
*c1「新女の伝説」云々は、「1」「V1」でのゆっこたちの革命話でのことです。ま、パラレルワールド的に…。
この月は、めぐみが堀を相手に NJWP十一度目の防衛を、千種が越後を相手にEWA四度目の防衛を果たしてます。
*c2王者側を操作したプレイヤーとしても、堀が千種にここまで一方的にやられるとは計算外でした。
ページトップへ


10年目2ndQ P2 へ ←  リプレイトップへ  → 10年目2ndQ P4 へ


トップへ
(C)2008 松永直己 / TRYFIRST
(C)2005 松永直己 / SUCCESS 運営サクセスネットワーク
(C)2005 松永直己 / SUCCESS
All rights reserved.
当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しております。
※画像等については「このサイトについての注意書き」もご覧下さい。