北の地に舞うのは雪か、それとも白き風か──
西北海道は札幌に設立された、WRERA(レラ)女子プロレス。
プロレスを愛するコーチ上がりの若手社長が、少ない資金をやりくりして、ようやく船出にこぎつけた団体。*1
社長を優しく支える女性秘書・霧子を始めとする、不慣れながらも有能なスタッフたちが運営するこのインディは、果たして今後どのような道を歩んでいくのであろうか……
「あー、疲れたあ。スカウトされたからフリーパスかと思ったのに、結局は入門テスト受けさせられるんじゃないの」 *2
「文句を言わないで、祐希子さん。社長の推薦といっても、体力レベルはちゃんと見ておかないといけないのよ。まあ、あなたは十分に基準をクリアしてましたけどね」
クリアどころか、かなりの素質だ。こんな子と偶然出会ったという社長の幸運に感謝しつつ、霧子はここに来ることになった経緯を祐希子に訊ねた。
「うーん。それはちょっとね。社長さんに聞いてほしいっていうか、性悪女の口車に乗せられたっていうか」 *3
「性悪女……?」
「あはは、まあいいじゃない。それより、霧子さん、だっけ。あたしの他にも合格した子っているんでしょ? 会ってみたいんだけど、いいかな」
「ええ。合格者は一人だけどね。名前は来島恵理さん。体力だけならあなたよりも凄い数値だったわ」 *4
「来島の恵理ちゃんね。これから、長いつきあいになるのかなぁ」
「そうね。あなたたちのどちらも、途中で音を上げたりしなければね」
「あと、この団体が潰れなければ、だよね?」
「……頑張るわ」
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