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トリプル・クラウン


7-1

「祐希子さーん、どんな服着ていきます?」

「へ? どこへ?」

「やだなあもう。理沙子さんとファウルチップさんの結婚式ですよ。今度の日曜日じゃないですか!」

「あははは、そーだったっけ? あたしは菊池の結婚式に着ていったスーツがあるから、あれでいいわよ」

「そういえば、市ヶ谷さんアメリカ遠征に出かけたそうですね?」

「うん、たぶんカオスの持ってるIWWF世界ヘビーに挑戦するんじゃないかしら」

「…じゃあ、市ヶ谷さんホントに世界王座を統一してたのかも知れないんですね」

「そーね。確かにそうするだけの力はあるヤツだからね」

「祐希子さんは…王座を、三冠を統一しようとは思わないんですか?」

「…」

「あたしには、市ヶ谷さんが祐希子さんをその気にさせようとしているように思えるんですけど…」

「まさか、あいつがそんなこと考えてるわけないじゃない。そんじゃ先に上がるわね」

「…はい。お疲れさまでした」

「…ははっ、あいつもいっちょ前のこというようになったな。市ヶ谷についてったのも結果的にはいい経験になってるみたいね。
…もうあたしが言う事はほとんどないな。このまま、まっすぐ伸びてってくれれば…」


──服沢朗・佐久間理沙子 結婚式会場。

《…続きまして、新婦の後輩でいらっしゃいます、新咲祐希子様よりお祝辞をたまわります》

「ほへ? なになに、もうあたしの番? …えへへ、どーも。
えーとお、理沙子さん、服沢さん、ご結婚おめでとうございます」

何をやらかすかと来島や菊池がヒヤヒヤする中、何とか無難にスピーチを進める祐希子。
しかし、その時、タイミングを見計らったかのように一人の人物が式場のドアを開けた。

7-2

「オーッホッホッホ! 遅れて申し訳ありませんこと!」

「あーら市ヶ谷、お帰りなさい。あんたの席はあっちよお」

「今日の良き日、華燭の典を上げられるお二人に、さらなる吉報をお届けに上がりました。わたくし、昨日ニューヨークにおきましてダークスターカオスを破り、IWWF世界ヘビー級王座を奪回いたしましてよ!」

「…市ヶ谷…」

「一度は棚上げいたしましたわたくしの偉大なる三冠統一計画、今ここに再発動を宣言いたしますわ!
…ま、そこのマイクの前で間抜け面をさらしていらっしゃるズン胴田舎娘には、なーんの関係もないことでしょうけれども。オーッホッホッホ!」

「市ヶ谷さん、やっぱり祐希子さんを…」

「…へへっ、いーちがやあ、やってくれるわねえ。あんたにそこまで言われて、しかも実際にカオスからベルトを奪ってこられちゃ、あたしもその気になるしかないわよねえ。
マイティ祐希子、久しぶりに腹の底から燃えてきたわ! WWCA、EWA、IWWF、この3つの世界王座を統一して、初代三冠王者になるのはマイティ祐希子よ!」

マイティ祐希子、ついに動く。

その衝撃に、自分たちの結婚式の真っ最中でありながらファウルチップは実況モードで叫びだし、理沙子も現場責任者モードで運営の検討を開始。
その光景に唖然とする出席者を尻目に、祐希子の構想はさらに膨らんでいく。

「どーせなら舞台はでっかい方がいいわ! 3団体からそれぞれ選手を出してトーナメントを開催! その勝者が3つのベルトを手にするってのはどう!?」

「オーッホッホッホ! あなたにしてはなかなか上等な発想でしてね!
よろしいですわ。このIWWF世界ヘビーベルト、一旦お預けしようじゃございませんこと!」

「へっへえ、あんたもこーいう時は話が早いわねえ。よっしゃ! 決まりぃ!」

「うわあ…何かエライことになってきた。祐希子さんと市ヶ谷さん…この二人が動くと、凄いことが起こるんだな…」

「もう止まんないからね! 三冠王座は祐希子サマのもんよっ!!」


祐希子のぶち上げた三冠統一トーナメント。
参加団体であるWARS、WOLFとの調整は順調であったが、EWA世界ヘビー級王座を持つメガライトの説得だけは難航が予想された。ところが…

「おう祐希子、こんなトコにいたのか」

「あら恵理、どーしたの?」

「今、事務所に連絡が入ってな。メガライトが王座から転落したらしいぜ」

「ええ!?」

「相手はWOLFの木村華鳥。押されっぱなしの試合だったけど、一瞬の返し技で決まったらしい」

「華鳥が…!?」

「ところが、木村はその場で王座を返上、ベルトをコミッショナー預かりにして、トーナメントへの参戦を宣言したってよ」

「ふーん…そっかあ。これで全てノープロブレムになったってわけだ! 後は開催に向かって突っ走るだけね!」


ついに、三冠統一王者決定トーナメント『アテナ・スーパーノヴァ』の開催が決定した。

参加選手は16名。
 マイティ祐希子、ビューティ市ヶ谷、ボンバー来島、
 結城千種、武藤めぐみ、サンダー龍子、
 羽田和子、山田遥、南利美、
 ダークスターカオス、チョチョカラス、
 ナスターシャ・ハン、ジェナ・メガライト、
 そして、草薙ひよこ、木村華鳥、ソニア稲垣。

このメンバーによる苛烈なトーナメントの優勝者が、史上初のWWCA、EWA、IWWFの三冠統一王者となるのである。


7-5 7-4

「祐希子さん」

「ソニア、トーナメント出場おめでとう」

「…ありがとうございます。祐希子さんのおかげで、ここまで来れました」

「あたしは何にもしてないわ。あんたにここまで来るだけの力があっただけ。自信持ってトーナメントのリングに上がればいいわ」

「はい。華鳥とひよこも出てきますからね。あの二人には負けられません」

「うん。周りは強敵ばっかりだけど、できればあんたとは決勝で当たりたいね。あたしを倒すっていう目標、忘れてないわよね?」

「もちろんです! 祐希子さんは誰にも倒させません。倒すのはあたしですから!」

「…祐希子、ソニア」

「あ、理沙子さん」

「組み合わせが決まったの。祐希子とソニア…あなたたち二人が初戦で当たることになったわ」

「…!」

「…いきなり祐希子さんと…」

「あなたたち二人の試合はもっと上の方で見たかったわね…
でも、ソニアにとってはチャンスよ。祐希子を破ってトーナメントに勝ち上がってくれば、注目度は全然違うわ」

「…そうですよね。決勝で当たれないのは残念だけど、ものは考えよう。祐希子さん、勝った方が三冠統一王者ですよ!」

「あははは、言うわねこのー! 全開で行くからね。覚悟しときなさい!」


──そして、『アテナ・スーパーノヴァ』の戦いは幕を開ける。

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