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5年目2ndQ (7〜9月) Part1

《目次っぽいもの》
WRERAのシングル王座[WR]スレイヤーのタッグ王座[SL]葉月vs祐希子[WR]逆転[SL]注釈?



「えー。それでは、会見を始めます」

7月月初。WRERAの社長は慣れない記者会見を開いた。 *1

決して大規模ではないが、テレビ局の録画カメラも入る程度には注目された会見。
それは、WRERAが WWCAとの契約満了に伴ないアメリカのもう一つの雄である IWWFと提携したという、ちょっとしたサプライズ── IWWFはワールド女子と提携中だった──から始まった。

「ワールド女子さんとは、違約金を支払うことで調整しております。えー、そして、次の話。こちらが本題なのですが……」 *2

続いて緊張の面持ちで社長が切り出したのは、シングル王座ベルト創設の話だった。

WRERAもついに団体王座を作るのか。まあ、遅すぎるくらいだよな──といったささやきを交わした記者たちは、社長の言葉が進むうちに、あるいはざわめき、あるいは押し黙ってしまった。

WRERAが制定したベルトは、WRERAの名を冠しておらず、WRERAが認定するわけでもないベルト。しかし、まぎれも無い「世界王座」と銘打たれたベルトだった。

「いわば、実力主義の、非認定制世界無差別級王座、です」 *3

『世界王者にふさわしい実力ある者』が腰に巻けるよう、最小限のルールのみを定め、WRERAはその管理と指導とメンテナンスのみを担当する。
そこに団体としての権益は全く無い。

最強決定リーグや統一王座と同様に誰もが考え、しかし当然の如くどの団体も実現させなかったこの王座の制定に、記者たちは互いの顔を見合わせるのだった。 *4

そんな会見の様子を、後ほど事務所のテレビで見た選手たちは……

「非認定制って……やっぱり地味〜な名前よね。どーせなら、絶対とか最強とか宇宙とか銀河とか至高とか究極とかつければよかったのに」 *5

「祐希子……。その発想、市ヶ谷っぽいぞ」

「ちょっと恵理! ベルトに自分の名前をつけろって言った、あんなのと一緒にしないでよ。 ねっ、桜井ちゃんはどう思う?」

「特に、何も。……ただ、実力、とかそんなフレーズは、あっても良かったですね」

「なるほどねー。ねっ、寮長はどう思う?」

「にゃ!? えーっと、えーっと……むむぅ……」 越後

「はい、時間切れ。ねっ、しのぶはどう思う?」

「いえ、あのー、みなさん。……練習、しませんか?」




WRERAの会見を映していたテレビを消すと、スレイヤー・レスリング社長は、傍らの秘書、井上に視線を移した。

「WRERAの動き、どう見るね? 井上くん」

水を向けた井上の反応は、彼の予想した通りのものだった。即ち、侮蔑と冷笑。

「どうもなにも、小中学生の発想ですね。論ずるにあたわず、でしょう」 *6

「うむ。まったくだな。となると、ここは無視の一手かね?」

「それは、否、です。ここはむしろ、積極的に乗る一手かと」

「ほう? なぜかな?」

意外な策を献上され驚く社長に、井上は軍略を語る丞相の顔つきで、解答を披露した。

一つ。 他団体のトップ選手が、軒並み好意的な反応を示していること。特に、パンサー理沙子、ダークスターカオス、そして自団体のサンダー龍子のそれは、無視できない。

一つ。 WRERAには紛れも無く世界トップクラスの、マイティ祐希子、ビューティ市ヶ谷らがいること。彼女らが腰に巻くことによって、荒唐無稽のベルトが黄金の輝きを見せる可能性がある。

一つ。 WRERAの思惑が図にあたった場合のインパクトが大きいこと。各団体認定の王座が、いずれもその価値を一段階かそれ以上、下げてしまう恐れがある。

「一方、乗っておけば、WRERAにも借りを作れるでしょう。 よしんば失敗に終わっても、我々はさほど損にならないよう動くことができます」

「なるほど。 だが、乗るといってもどうするのだね?」

「ベルトというのは、シングルだけではありませんわよ。社長?
いえ、国内最高峰の大会、EXリーグとの親和性を加味すれば、むしろこちらが有利……ここは、この私にお任せいただけますか?」

目の前で優雅に礼をして見せた女性秘書の姿に、社長は重々しく頷いた。

そして、シングル王座から遅れること数日。
WRERAへの賛同表明とともに、スレイヤー・レスリングは、非認定制の世界タッグ王座創設を発表。

既に国内最大手となっていたスレイヤーの動向に、WRERAの会見を笑っていた各団体やメディアも、その嘲笑を収めざるをえなかったのである。




「社長さぁ。 私ゃに、なんかミョーな気を遣ってないかい?」

WRERAは、制定した世界無差別級王座──非認定制(Non-Authorized)から、NA王座と呼ばれることになる──初代王者決定戦のカードを、六角葉月 VS マイティ祐希子に決定。 *7

ともに現在はシングル無冠だが、その実力に疑いの余地は無い二人。

実力主義を謳うベルトを巡る初戦に相応しいカードだったが、その決定に、当事者である葉月自身が異を唱えたのである。

六角

「そりゃあね。 いきなり他団体の奴ら──龍子やカオスやモーガンってのも、どーかと思うよ。 いくら実力第一だからって、最初っくらいは作ったトコで持つ権利、あるだろうし。だろ?」

「……まあ、そういうことだ」

「でもさ、今はもう、祐希子と市ヶ谷お嬢が、団体の双璧。名実ともに適任っしょ? 私ゃみたいな、こんなロートルに今さら──」

「ロートルなんて言うな!!」 *8

自分の何気ない言葉で声を荒げた社長に、葉月は呆気に取られたように目を見開いた。
続いて、肩をすくめて失笑する。

「謝った方がいいかい、社長?」

「……いや。どなったりして、悪かった。 だがな、お前に気を遣ってるわけじゃない。
市ヶ谷には悪いが、最初だからこそ、他団体認定の世界ベルトを持っている選手に、このベルトを競わせたくないんだよ。 妙な色に染めたくないからな。
そうなると、今の祐希子に勝てるとすれば──六角、それはただ一人、お前だけなんだ」

「お褒めにあずかり、光栄です。 ボス」

「茶化すなよ。 とにかく、もう決めたことだ。
さっき市ヶ谷も来て、散々文句言われたが、それでも突っぱねたんだからな」

「へいへい」

再び肩をすくめ、降参のように両手を挙げてみせた葉月は、そのままで事務所を退出しようとした。そこを、社長に呼び止められる。

「? なんだい?」

「六角。……さっき、お前に気を遣ってないと言ったが……あれは、少しだけ嘘だ」

「へ?」

「お前のためじゃなくて、あくまでこっちのエゴだがな。
──見てみたいんだよ。 お前が、六角葉月が、シングル王者になった姿を……な」 *9

「祐希子の姿よりも、かい?」

「……団体の社長として、微妙に返事に困ることを言うなよ」

「はは。そいつは、悪かったね」

葉月はもう一度肩をすくめて──それから今度こそ、事務所を後にした。

そして。
NA 葉月と祐希子の NA王者決定戦は、7月のWRERA最終戦メインイベントとして組まれることになった。

会場はもちろん超満員。
WRERAを支える新旧エースの対決に、観客は二分してそれぞれに熱い声援を送った。

「いやぁ、すごい応援だ。こりゃ、期待にこたえなきゃね。てなわけで、今日は遠慮してくんないかな、祐希子?」

「えへへ、それはできませんよ、葉月さん。『初代王者』になれるチャンスなんて滅多に無いですもん。 こればっかりは先輩にだって譲れませんって!」

ゴングが鳴る。
序盤は完全に祐希子が支配した。
ロープを駆使したハイスピードな攻防に葉月を引きずり込み、葉月の好む落ち着いた展開に持ち込ませず、ペースを握り続ける。

「こりゃあ……キツイねっ!」

祐希子得意のJOサイクロンまでも飛び出し、葉月の頭上に早くも黄信号がともる。
だが、この程度で終わるような選手なら、“WRERAの用心棒”などと呼ばれはしない。

「あんまし調子に乗ると、痛い目見るってさ!」

祐希子とてスピード勝負は永遠に続けられない。足が止まったその時を、葉月のデスバレーボムが捕らえた。しかも連続で二発。
たまらず肺の空気を全部吐き出した祐希子に、今度は葉月得意の関節技地獄が、容赦なく待ちうけていた。

葉月のベルト奪取まで、あと少し。 観客たちの踏み鳴らす足の音も勢いを増す。

「さすが、は……葉月、さん……でもっ!」

今のマイティ祐希子もまた、この程度で終わる選手ではなかった。
序盤のダメージが効いたか、あと少しのところで祐希子を仕留めきれなかった葉月に対し、ここを先途と次々に技を繰り出していく。
フェイスクラッシャー、DDT、ヘッドシザースホイップ、そして──

「あたしは、なるんだ! 世界のトップに!」

祐希子がリングに生み出したオーロラの光──ノーザンライト。
葉月は、思わずそれに見惚れてしまったのかもしれない。

「ははっ……やっぱ大したもんだよ、祐希子。
こりゃあ、これからの挑戦者も苦労するね。きっと……」 ゆっこ

──14分32秒、ノーザンライトスープレックス。

怒濤の如きハイペースな試合を制して NA王座初代チャンピオンに輝いたのは、“炎の戦士”マイティ祐希子その人であった。 *10




《ここ日本武闘館で行なわれる、スレイヤー7月シリーズ最終戦!
スキャンダルの影響を感じさせない超満員の観客が今か今かと待ち受けるのは、噂の NA世界タッグ王座、その王者決定戦です!
先日、WRERAで行なわれたシングル王座はマイティ祐希子が手にしましたが、このタッグ王座を手中に収めるのは、どちらのチームなのかぁ!?》 *11

NA-T

アナウンサーが絶叫する中で同時にリングインしたのは、サンダー龍子&石原涼美組と、ブレード上原&RIKKA組。

今月から団体提携を結び、次シリーズからの参戦が予定されている WWCAのトップ── NA世界タッグベルトへの挑戦者としても有力視されている──ダークスターカオスとジュディ・コーディの見守る中で、試合は静かな立ち上がりを見せた。 *12

《昨年のEXタッグリーグを制したパワータッグと、飛び技では世界最高と思われる空中殺法タッグの戦い──先鋒は龍子と上原!
スレイヤー無差別級を巡る激闘はまだ記憶に新しいところですが、タッグでの対戦は果たしてどう転ぶのでしょう!?》

上原もRIKKAも、その力量は世界トップクラス。
しかし、龍子のそれは、今や別次元のものと言えた。

上原の切り札フランケンシュタイナーもカウント1で退け、替わったRIKKAにはお返しのプラズマサンダーボム。
石川との連携も絶妙で、ダブルラリアットやダブルドロップキックが次々と決まる。
何とか粘る上原&RIKKA組だったが、30分を過ぎる頃には、すでに二人ともボロボロの様相だった。
それでも、石川を追い込んで、勝利の糸をたぐり寄せようとするが……

《石川、ここで龍子にタッチ! まだまだ元気な龍子、上原相手に容赦ない波状攻撃だ! 一気に決めてしまうのかぁ!?》

しかし、ここで上原は驚異的な執念を見せる。
2.9のニアフォール、ロープブレイク、カット、ロープブレイク、場外……
合間合間に小技の反撃も交え、無尽蔵にも見えた龍子の体力を削っていく。そして──

《出たあっ、無明蹴っっっ!
息も絶え絶えの上原からタッチを託されたRIKKA、ここでとっておきいっ!
カウントは2.5! しかし、ここは石川、龍子にタッチを要求だ!》

この戦いに勝敗分岐点が一つあったとすれば、それはここだったのかもしれない。

《ぎゃくてぇん! 逆転勝利ぃっ!
上原&RIKKA組、最後はRIKKAの不知火が炸裂! サンダー龍子のカットも間に合わず、石川を見事にフォールしてみせましたぁっ!》 RIKKA

ダブルパワーボム、ダブルインパクト、そして、不知火。

47分42秒の死闘は、文字通りの逆転勝利で、上原&RIKKA組が初代 NA世界タッグ王座の栄冠に浴したのである。 *13




*17月のWRERAイベントは、千秋FC、堀ファンタジー映画(お断り)、めぐみ参戦、でした。
*2ワールド女子に払うわけではないですが、IWWFとは1500APでの契約。ちょっともったいないです。
*3ゲーム中、作ったベルトにどういう意味を持たせるかはプレイヤー次第ですから、妄想発動のさせどころ。
…厨房的発想なのは承知の上で。まあ、一度作ったベルトの改名とか出来ないですし…。
*4実際のところは、GWAタッグ、WWCA、WWCAタッグと立て続けに海外防衛戦でベルト失ったことで頭に来て、「それならアタシが世界一のベルト作ってやるもんね!」なんてお子様モード全開で作ったベルトです。
(子供心に感動した) 発足当初の IWGPの理念も影響してるかも?
*5それだけはさすがに勘弁してください。
*6スーパーウルトラギャラクティカダイナマイトスペシャルアルティメット王座的発想ですからねぇ。
*7結局「NA」という団体の王座みたいな名前になっちゃいました。
くれぐれも、N/A (Not Applicable, Not Available) ではありませんので。
*8ここでは六角に卑下(謙遜?)させてますが、実際のところは団体No.3、全体でもNo.4の評価値。COMが使うと必殺ラビリンススリーパーが弱いのが問題ですが、決してロートル呼ばわりされる人ではありません。
*9ベルトに全然興味なし、という妄想設定もあり、ここまでシングルベルトを腰に巻いてない六角。ちょっともったいなかった気もしてます。
かといって、無理矢理何かベルトを取らせる気にもならず…このままシングル無冠で終わるのかどうか?
*10六角本気操作で臨んだ試合でしたが、葉月になぜか飛カードばかり出てしまったこともあって、ここはゆっこにしてやられました。短い試合でしたが、大技連発もあって、やってて楽しかったですけどね。
*11スキャンダル後なのであまり無理はできませんが、さすがに主要会場の東京なら15000席は埋められます。
7月のスレイヤーは、飲食店TV紹介、ライラCD(「かなり」の売れ行き)、フレイア一日署長、森嶋誕生日、上原FC、石川FC、フレイアFC、真田FC、とファンクラブ増加を中心にイベントラッシュ。でっちあげスキャンダルに対するファンの応援活動?
*12WRERAとの契約が切れたWWCAと契約してます。
*13上原&RIKKA組を操作。
試合内容はほぼ記述通りで、中盤までは圧倒される展開。シングルのNA王座の時とは違った意味で、やりがいありました。
7月の興行では、他にフレイア鏡vs森嶋亜里沙のWWPA王座戦もあり、17分37秒、フェイスクラッシャーでフレイアが三度目の防衛に成功してます。
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