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5年目1stQ (4〜6月) Part2

《目次っぽいもの》
世界王座談義[WR]逆風の中で[SL]注釈?



6月某日。札幌は、曇りのち晴れ。 *1

この二ヶ月でようやく慣れてきたハードなロードワークを終えて、練習生の少女が WRERAのジムに戻ってきた時のこと。

出てくる時には無人だったジムでは、一ヶ月ぶりに顔を見る二人の先輩レスラーが、私服のままで何やら話し込んでいた。

めぐみ

「あれ? 祐希子さんと来島さんじゃないですか。アメリカから戻ったんですね」

「やっほー! 久しぶりだね、めぐみ。 どう? 練習は慣れた? 逃げ出したりしてない?」 *2

「今のところは、何とか。
──祐希子さんたちは、二階の事務所に用ですか?
今日は社長も霧子さんも、休みのはずですけど……」

めぐみ、と呼ばれた少女の視線の先には、二つの大きなトランクがあった。

空港からここへ直行したのだろうが、海外遠征に出ていた二人が、いくらなんでも帰国したその足で練習するつもりとは思えなかった。

「あはは。 それがねえ、恵理が一刻も早く練習したいってうるさくって。 あたしは寮に帰ってゆっくりしたかったんだけどさ」

「……期待を裏切りませんね。 さすがは来島さん。 世界タッグ王者は伊達じゃないって──」

少女のセリフは途中で止まった。
あさっての方を向いていた来島が凄い勢いでこちらに振り向くや、鬼の形相で一睨みしたのだ。
その程度で気圧される少女ではなかったが、さすがに空気を読んで口をつぐむ。

「もう、恵理ったら! 練習生に八つ当たりしてどーすんのよっ。 ごめんね、めぐみ? 恵理ったら、タッグベルト奪られたこと気にしちゃってね」

「タッグベルトを……!? 祐希子さんと来島さんのタッグが、負けたんですか!?」

「そ。 ついでに、あたしのシングル王座も奪られちゃったのよん」 *3

「!」

マイティ祐希子の持つ、WWCA世界ヘビー級王座。
彼女とボンバー来島の持つ、WWCA世界タッグ王座。

WRERAが持つ二つのベルトの防衛戦を地元アメリカで行なうよう、認定団体のWWCAが要請してきたのが、一月前のこと。
提携契約切れを 7月に控えたこのタイミングでの要請をいぶかしむ声もあったが、だからといって要請に応じなければ、最悪ベルト剥奪もありえる。 *4

WRERAとしては、二人を信じて敵地へと送り出したのだったが……。

ゆっこ 来島

「ああ、負けちまったよ。悪かったな!
だけどよ、実力で負けたんじゃねえ!
どっちの試合も──いや、あんなの試合なんて呼べねーぜ! 俺は全然負けたと思ってないね!」

「うーん……それはあたしも否定しないけどさ。
ま、あちらさんもいろいろあるのよ。
市ヶ谷や寮長にずっと世界と世界ジュニアのベルト持たせてくれてる、AACみたいな団体の方が、珍しいのかもね」 *5

「……まあなぁ。スレイヤーでも、EWAの世界ベルト巡っていろいろあったみたいだしよ。あの上原さんとサンダー龍子も、敵地の地元判定で GWAタッグを奪られてたし……」 *6

「あの。 ちょっと、聞いていいですか?」

「ん? なんだよ、めぐみ?」

「さっきから、いろんなベルトの名前が出てきてるんですけど……『世界王者』って、そんなに何人もいるものなんですか? 細かい体重別でもないのに……」

「…………。おーい、祐希子。昔のお前みたいなのがいるぞ?」

「どういう意味よ、恵理?」

少女──武藤めぐみは、つい二ヶ月前に WRERAに入団した練習生なのだが、社長にスカウトされるまでプロレスなど見たこともなかった、という経歴の持ち主だった。

かつての祐希子も、入団するまでプロレスには興味がなく、知識も皆無。
プロレス通の来島から毎日のように基礎知識を教えられた、という過去を持っていた。

「まあ、王座ってのは各団体の認定制だからよ。ボクシングとかもそれは同じなんだろーが、プロレスの方がメジャー団体の数が多いからな。 その分、世界王座の数も多いってことさ」

団体が認定した王座だから、他団体に流出すると面白くないし、立場も無い。だからこそ、いろいろ条件を課したり、コントロールしようとしたり、場合によっては返還を強要したりもする──それは来島の私見と私怨も入った話だったが、この世界では事実無根とは言い切れないことも確かだった。 *7

「統一王座、なんて構想も時々出るみたいだけどな。市ヶ谷のやつもほざいてたことがあったし。ただ、選手はともかく、統一しても団体にはいいこと無いからよ。なかなか実現しねえのさ」

「以上、プロレスマニアの来島恵理さんによる、世界王座についての解説でした。わかったかな、めぐみちゃん?」

「……大体は。 勉強になりました。 ──でも、おかしなものですね」

「? 何がだよ?」

「王者──チャンピオンって、誰かに認められるものじゃないのに。
ただ、一番強い人……それこそがチャンピオンじゃないのかな……って」

素人の素朴な感想ですけどね、と付け足したところで話を終えると、めぐみは軽く頭を下げてから更衣室へと向かった。汗の粘つきが気になってきたらしい。

トランクからトレーニングウェアを取り出した来島も、後を追うように更衣室へと消えていく。

──その場に一人残された祐希子は、夕飯のメニューを気にするような気軽な口調で呟いた。

「ただ、一番強い人……か」




《これは、ものすごいブーイングだあっ!
スレイヤー・レスリングの石川、RIKKA両選手が姿を現した途端、会場は凄まじいブーイングに包まれています!》

ワールド女子の 6月興行。 *8
4月に受けた殴りこみのお礼参り──あるいは興行参加への純粋な返礼──としてスレイヤーから参加した石川とRIKKAだったが、その二人を待ち受けていたのは、会場中からの激しいブーイングだった。

《ただでさえ、このワールド女子とは因縁浅からぬスレイヤー! *9
しかも先日にはブレード上原選手のスキャンダル疑惑で業界に激震を与えております!
スレイヤー側は完全否定の上、法廷闘争も辞さない構えのようですが……おーっと、ここで石川選手がマイクを取ったぁ!》 石川

「私たちに、やましいところはありません! リングの上で、それを証明してみせます〜!」

ワールド女子にとって、スレイヤーは仇敵ともいえる存在だったが、今回については石川とRIKKAの心意気を汲んでくれたのかもしれない。

石川の持つEWA王座戦を組むことを条件に彼らが用意したカードは、なんと世界最高峰のIWWF世界タッグ王座戦。
クリス・モーガンとルミー・ダダーンが他を寄せ付けず守ってきた王座に、過去タッグ経験のほとんどない石川&RIKKA組が挑むことになったのである。

IWWF-T

「…………千載一遇……」

「ええ、チャンスですよね〜。 勝ちましょうね、RIKKAちゃん!」

同月の興行で、すでに難敵ジェナ・メガライトを下し、EWA世界王座三度目の防衛を果たした石川。 *10
ここまでタイトルには縁が無かったが、今やパンサー理沙子クラスとも称されるその実力に疑う余地は無いRIKKA。

だが、その二人をもってしても、クリス・モーガンとルミー・ダダーンのタッグは強力に過ぎた。

「これで楽にさせたる!」

《出たぁ! ルミー・ダダーン得意技の一つ、アルゼンチンバックブリーカーがRIKKAに炸裂ぅ!
そのままタッチで出てきたのは、至高の女帝、クリス・モーガン!
果たしてどのような攻めを……あーーっと、これは!?》

「最強という言葉を……知りなさい!」

《こ、これは容赦ない、王者の鉄槌!!
クリス・モーガンのパワースラムが、RIKKAに叩きつけられたぁっ!
もうこれはほとんど反則! やはり、この二人に勝てる道理が無いのかっ!?》 *11

「…………まだだ。まだ……!」

「そうです! 終わりませんよ〜!」

一気に試合を決めようという王者組の怒涛のラッシュに早くも風前の灯火ながら、何とか耐え続ける、RIKKAと石川。

二人にようやくチャンスが巡ってきたのは、王者組に攻め疲れが見えてきた40分付近だった。

「…………勝負……!」

RIKKA必殺の無明蹴がついにモーガンを捕らえ、その究極の肉体をマットに這わせる。
しかし、カウントは2つ止まり。立ち上がったモーガンの足取りにもまだ不安の二文字は無かったが……

「…………石川……!」

「うん! ここが勝負どころですね〜!!」

序盤のお返しとばかりに、続けざまに繰り出されたのは、石川の決め技・のど輪落とし。
マットに叩きつけられたモーガンの顔が、苦痛と驚愕に歪む。

それでも、カウントは2.8。
攻めが続かずにフロントスープレックスで流れを切られ、ダダーンにタッチされた時点で挑戦者組は万事休すかと思えたが、

「…………忍……!」

後が無い状況でタッチを受けたRIKKAの、全てを賭けた無明蹴。
直後のフォールは2.5も、RIKKAにはもう一つの切り札が残っていた。

「…………散れ……!」

コーナーに駆け上っての後方回転式リバースDDT──不知火。
ここへ来ての大技連発に、モーガンも焦ってカットに飛び込む。
それを、しがみつくようにして石川が押さえ……

《1、2……スリー!! 試合終了っっ! 無敵の王者組、ついに敗れたぁっ!
勝ったのは、スレイヤーからの刺客、RIKKAと石川!
団体名の如く、見事な一撃でルミー・ダダーンの息の根を止めて見せましたぁ!》

44分39秒。IWWF世界タッグ王座戦は、挑戦者組がベルトを獲得。
リング上で小躍りする石川に抱きつかれながら、RIKKAは自らの気を引き締めるかのように、軽く首を振って呟いた。 RIKKA

「…………日々精進あるのみ……」




*16月のWRERAでは、ゆっこFC、千秋FC、ゆっこCM(お断り)、越後が延髄斬り取得(難易度8)などあり。また、桜井が新女に殴りこみ(理沙子戦あり。不知火で勝利)、バカンスで六角登場。六角さんの酒飲み姿は良い感じです。
5月は、市ヶ谷グッズバカ売れ、千秋完治、などがありました。
*24月に、スカウトでめぐみを獲得してます。
*3Part1で書いたように GWAタッグを遠征防衛戦で失ったばかりで、さらにWWCA世界ヘビー(5月)、同世界タッグ(6月)を立て続けにロスト。
正直、遠征防衛戦にはムカついてます
*4本当に海外団体は「契約切れ前にベルトを回収しておこう」とか思ってるんじゃないかと…
ちなみに、要請に応じないと自動で100%剥奪です。
*55月に、寮長こと堀がAACジュニア11度目の防衛(VSコリィ。19分31秒)。六角&市ヶ谷がAACタッグ七度目の防衛(VS久々結成のスナイパーズ。16分24秒)を果たしてます。
*6EWA王座を巡っての話は、4年目3Q P14年目3Q P24年目4Q P1、あたりをご参照ください。
*7この妄想設定はフィクションです。実在および実際のプロレスやゲーム中の個人、団体、設定、などとは一切関係がありません。
*86月のスレイヤーは、EWA契約終了、フレイアミステリー映画(「ヒット」してます)、森嶋写真集(結果は「それなり」)、真田写真集(結果は「かなり」)など。バカンスでフレイアが登場し、フレイアのプライベートイベントその2もあるなど、何気に鏡さんご活躍の月でした。
*9団体ベルト(WWPA)奪われたり、狙ってた千春を先に獲られたり、ということで目の仇にされててもおかしくありません。ゲーム中では仲良く殴りこみ合戦してますけど。
*1027分11秒、ステップキックで石川がメガライトに勝利。
場外で必殺カードのフィッシャーマンバスターくらったあたりはやばかったですが、最後は体力10%残してるのにフォール。メガライト、意外に情けないです。
「2」「V2」のボスキャラなのに、カオスやモーガンには大きく水あけられてるし…
*11評価値差がある上に、こちらは必殺カードゼロ、向こうは連続で二枚。ちょっと、げんなりしました。
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