「うわっ…! い…市ヶ谷さん!?」
「オーッホッホッホ! ソニアさん、あなた、このまま祐希子の下にいては、ベルトに挑戦する機会は巡ってきませんことよ?」
「え? ど、どうしてですか?」
「あの女はすっかりフ抜けてしまっていますわ。自分から世界王座を取り戻そうという気がさらさらございませんもの。そんな女と一緒にいては、いつまでたってもチャンスはやってきませんわ!」
「そ…そうでしょうか…?」
「そこで! あなたに特別に、わたくしの計画に参加させて差し上げますわ!」
市ヶ谷の計画、それは「世界王座統一計画」とでも言うものだった。
現在、世界王座と名の付くベルトは、カオスのIWWF、サンダー龍子のWWCA、市ヶ谷の弟子 (←あくまで市ヶ谷の言) メガライトのEWA、の3つ。その全てを自分が奪おうというのであった。
「まずはWARSにわたくし直々に乗り込んでいって、龍子からWWCA王座を奪いますの。
続いてWOLFに乗り込んで、エース面してふんぞり返っている山田をコテンパンにして差し上げて、メガライトを引っぱり出しますの。
そこでEWA王座を奪い、後は新女に戻ってカオスを倒せばこのわたくしが史上初の統一三冠王者となる…ああ! 何と素晴らしい計画なのかしら!
かつてこのような雄大で崇高な野望を持ったレスラーが存在しましたかしら? いいえ存在などいたしませんでしたわ!
なぜなら、そのような野望を持つことのできる、真に強く美しいレスラーなど、このわたくしの他には存在しないのですから!」
(…ここまでキョーレツに自画自賛できる人なんて、他にいるんですかね…)
「わたくしが統一王者となれば、それに付き従うあなたがたにもチャンスが巡ってきますわ。
返事は今すぐにとは申しません。ですが、ご自分の今後を考えた場合、答えは自ずと決まってくるでしょうけども! オーッホッホッホ!」
まさに嵐のように過ぎ去った市ヶ谷に呆然とするソニアだったが、世界王座が3人もいる必要は無い、というその言に一理はあると感じていた。
そして、本当は祐希子こそがそういうことを言うはずではないか、とも。
「祐希子さんにはもう、ベルトへの執着心がないのかな…
…あたしが何かすることで、祐希子さんの気が変わるなら…」
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