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三枚の羽根


「こんちはーっ。なんですかあ社長、あたしに用って」

「よお、元気にやっとるな、祐希子。実はな、面白い企画が営業の方から上がっとるんだが、ちょっと見てくれんか」

「えー、なになに。『スーパーエンジェルクラウン』…?
エンジェルクラウンって、ウチの会社が何年か一度にやる、若手を集めたトーナメントでしょ? 確かあたしもデビューしたての頃に出た覚えがあるわ」

「そのエンジェルクラウンを、WARS、WOLFの若手も集めて開催しようっていう案なんだよ」

「ええ!? そりゃすごいじゃないですか!」


3団体の若手対抗戦、『スーパーエンジェルクラウン』。

新女からは小縞と金森、そしてソニアの3名が出場。
他団体の選手と戦えるのを喜びつつ「出るからには優勝」と言い切るソニアを頼もしく思う祐希子だったが、発表されたWARSとWOLFのメンバーには驚くことになった。


3-4

「あ、祐希子さん! 久しぶりですね!」

「まさかWOLFに入ってるとは思わなかったよ、華鳥ちゃん。やっぱりあのコートでヤマちゃんに?」

「はい! 山田さんに熱心にスカウトしてもらって。今は毎日が充実してます!」

「うん。いい顔してるわよ」

「ありがとうございます! それじゃまた!」

3-5

「祐希子さん、お久しぶりです!」

「ひよこちゃんじゃない! よかったねえ、レスラーになれて」

「はい! ありがとうございます! こうしてWARSに入れたのも、あの時祐希子さんに励ましてもらえたからです!」

「あたしなんて何もしてないよ。これはあんたの頑張りの賜物。諦めなかった気持ちのおかげよ」

「はい、プロレス諦めないで本当に良かったです! 祐希子さんも早くチャンピオンに復帰して下さいね!」

「はいはーい、まーかせなさいって!」


そして開幕した第一回・スーパーエンジェルクラウン。

3-1
3-3a 3-3b 3-3c

一回戦で今年の新人3人、木村華鳥、草薙ひよこ、ソニア稲垣がいずれも勝利するという驚きを提供した大会は、その後も熱戦を展開。

決勝は、金森を破ったひよこと辛くも華鳥を倒したソニアという全くタイプの異なる二人の激闘となり…


《ソニア稲垣です! 記念すべき第一回スーパーエンジェルクラウンを制したのは、新日本女子のソニア稲垣!
先輩である小縞、金森や、他団体のホープたちを押さえての優勝は見事と言えるでしょう!》

3-2

「ソニア、よくやった! おめでとう!」

「祐希子さん! ま、ルーキーのトーナメントですからね。このくらいは勝たないと」

「でも、正直あのメンバーの中で勝つなんて思わなかったよ。いい試合だった」

「信用ないんだなあ。自信あったのに」

「ははは、ま、あんたはその調子が一番よ。これからは周りのマークはきつくなるだろうけど、今まで通りやればいい」

「まかせてくださいよ。すぐにジュニアのベルトを狙えるとこまでいきますから!」


やがて、長期アメリカ遠征に出ていた来島がUSヘビーのベルトを土産に帰国。

その来島から、引退した菊池がロスでレスリングスクールを開く、という話を聞いた祐希子は、そのスクールへの合同留学という名目でソニアとWARSのひよことWOLFの華鳥を一緒に送り込もうと画策する。

「あの連中、スーパーエンジェルクラウンに出たおかげで、お互いに意識し合うようになってると思うんですよ、理沙子さん。そこでアメリカに一緒に送り込んでやれば…」

「刺激し合ってグングン伸びる…と。なるほどね。考えたわね、祐希子」

「あの年代は、歳の近いヤツが近くにいると予想以上に成長したりしますからね。めぐみと千種がいい例ですよ」


アメリカ留学の企画にはWOLF、WARSも賛同。
受け入れ先の菊池からも快くOKをもらって話はトントン拍子に進み、早くも翌月、ソニアたち三人はアメリカはロサンゼルスに降り立っていた。


3-6

「はじめまして。今日からあなたを預かる菊池理宇よ。祐希子さんに聞いていたイメージ通りのコね」

「ええ? あなたが菊池さんですか? …あ、ソーリー。ちょっと想像してたイメージと違ったものですから…」

「あはは、元レスラーだから、もっと体格のいい人だと思ってたのかな?」

「は、はい。…と言いますか、何かちっちゃくてキュートな人だなって…おっと、フォローになってませんね」

「フフフ、いいのいいの。それじゃ、ジムに案内するね」

「はい、よろしくお願いします」


菊池はロスにあるインディペンデントの一つ、ECWWと話を付けてくれており、華鳥、ひよこ、ソニアの三人は、早速翌シリーズから初体験となる海外のリングに上がる。

3-7

「ソニアちゃん、おつかれさまー。…ね、ココのリングに立ってみてどうだった? あたし緊張しちゃって…」

「これくらいどうってことないわよ。今から音をあげてる様じゃ、これから持たないんじゃない? 早めに日本に帰ったらどう?」

「…んっ! あ、あたしはちょっと緊張したって言っただけで、別に音をあげるとかそんなんじゃないわっ」

「おっと、ごめんなさい。あたしっていつも一言多いのよね、気をつけるわ。また明日からもがんばりましょう、お互いに」

「ええ。あなたにそう言われないようにがんばるわ。それじゃ」

「…またやっちゃった。まずかったかな…」

「あの…」

3-8

「あ、ひよこ。お疲れさま」

「…あのね。華鳥ちゃんね、あなたのことすごく褒めてたんだよ。あんなふうになりたいなって。だから、ああいう言い方されたら余計にショックだと思うの」

「…」

「今度ちゃんと謝った方がいいんじゃないかな? あたしもあなたに悪気はなかったんだって言っておくから」

「…そうだね。うん、ありがとう。そうするわ」

「うん。そんなカンジの笑顔でいこうね!」


そして、翌日。

3-4

「よーし、だんだん慣れてきたぞお。…あ、ソニアちゃん…」

「ハ、ハーイ。そのお、華鳥さ、今日のファイト…とっても良かったよ! その調子でどんどん行けばいいんじゃないかな。あ、でも、あたしも負けないから。
あっ、あたし、ちょっと用事思い出したから失礼するわね! それじゃ!」

「……アハッ、アハハハッ! 一生懸命照れくさいのガマンしてたんだろーなあ。
うんっ、あたしだって負けないよ、ソニア!」


その後、ECWWに短期参戦してきた現IWWF世界チャンピオン・ダークスターカオスの妥協しない姿勢に刺激を受けたこともあって、三人はほぼ休み無しで留学期間を終える。

全員が自分の成長に手応えを感じ、この機会を作ってくれた祐希子に感謝しつつ、再びそれぞれの団体で戦う日々に戻るため帰国の途についた…


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