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PARTNER IS RIVAL, FOREVER


「理沙子さん、でも、こうなってくると…」

「祐希子?」

「このふたり、どっちが強いのか、見てみたくなりません?」

「……二人の対決?」


「めぐみ」

「あ、千種。お疲れさん。今日もいい試合だったね」

「めぐみ…あたしたち、しばらくタッグ組むのをやめない?」

「…え? どうしたの千種…何で突然そんなこと…」

「ううん。別にタッグを解消して王座を返上しようって事じゃないの。そんなことはあたしだって反対よ。そうじゃなくて、タッグ王者である前に、めぐみはシングルの世界王者なんだ…ってことなの」

「…千種…」

「あたし、前に言ったよね。めぐみから王座を奪うのは、あたししかいないんだって。めぐみは今まで王座を守るっていう約束を果たしてくれた。だから、あたしはその約束に応えたいの。…めぐみをタイトルマッチの舞台で破ることで…ね」

「分かったわ、千種。あなたはやっぱり、最高のパートナーであると同時に最強のライバルでもあるんだ。やるからには、他の誰にもできないような凄い試合をしましょ。どちらが勝っても負けても…ね?」

「めぐみ…ありがとう。あたしの全てをぶつけて、めぐみから王座を奪うわ!」

「ベルトは、必ず守るわよ! 例え千種が相手でもね!」


次のシリーズ、二人は分かれてタッグでぶつかるカードを組んでもらい、お互いの気持ちと力を確かめあった。

そして、翌シリーズの最終戦。
ついに、世界王座タイトルマッチの日がやってくる…


7-1

「おはようっ、武藤。元気そうだな」

「ああ、来島さん! い…いつアメリカ遠征から戻られたんですか!?」

「昨日の遅くにな。もー時差ボケで眠てえったらねーぜ。…いよいよ今日だな、千種とのタイトルマッチ」

「じゃ…わざわざ今日のあたしたちの試合を見るために…?」

「バ、バカ。俺はそんなにヒマじゃねーよ。ちょっと忘れモンを取りに戻っただけだ」

「アメリカからですかあ? それなら言ってもらえば航空便で送ったのに…」

「い、いいんだよ別に! とにかく、戻ってみたらたまたまおまえらのタイトルマッチの日だっただけの話なんだよ!」

「…ありがとうございます、来島さん」

「…ま、とにかく頑張れよな。俺の納得する試合をしやがらねーと、承知しねえからな!」

「はい! 必ず来島さんを唸らせるような試合にします!」


試合まで会わないようにと相談して、行動時間をずらしためぐみと千種。
千種は一足先に会場へと向かっていたが…

7-2

「オーッホッホッホ!」

「うわああ! い、市ヶ谷さん!?」

「あなた、最近ちょっと調子に乗ってらっしゃるようですわね。まぐれでわたくしに勝って世界タッグを取ったからといって、あまり大きな顔をしないでいただきたいわ」

「そ、そんなことないです! 決してそんなことはないですううう!」

「ま、今のうちにせいぜい我が世の春を謳歌なさることね。今度試合する時には祐希子のように、赤十字病院に送って差し上げましてよ。オーッホッホッホ!」

「…あの市ヶ谷さん、どうして祐希子さんの運ばれた病院を知ってるんですか?」

「はっ! な、なんのことかしら?
わたくしが…祐希子の運ばれた病院など知っているわけがありませんわ! あーんなずーずーしくていまいましくてかわいげのない女がどこに運ばれようが知ったことではございませんわ! オーッホッホッホ!」

(ふーん、やっぱ心配だったんだなあ…へへっ…)

「それじゃこれで失礼しまーす」

「あ…! お待ちなさい! まだ話は終わってませんことよ!」


一方、時間潰しも兼ねてジムにやってきためぐみは…

7-3

「あら、早いのね」

「あ…南さん。おはようございます。南さんこそ、ずいぶん早いんですね」

「ちょっとこの前の試合で納得のいかないところがあってね。富沢とスパーリングの約束してるんだけど、まだ出てこないの。一時間も待ってるのに」

「ハハハ。富沢先輩らしーなあ。きっとまだ寮で寝てるんだと思いますよお」

「…リラックスしてるみたいね。この分なら、今日の試合も心配なさそうだわ」

「…南さん、あたしと千種のタイトルマッチのこと、気にかけてくれてたんですか?」

「同期対決ってのはタダでさえナーバスになるのに、ましてや世界王座を賭けて戦うんだもの。お互い意識しすぎて変な試合しやしないかと思っただけ。不甲斐ない試合をされちゃ、後々あたしたちも困るからね」

「あ…は、はい…。気をつけます」

(相変わらずキツいことをさらっと言う人だなあ…)

「…キツいこと言うのは、期待してる証拠…」

「! はい! 頑張ります!」

(うわああ、びっくりしたあ〜…かなわないなあ、この人には…)


会場入りした二人は、それぞれの控室で、今朝受け取った自分宛の手紙を取り出した。

「誰からだろ…。! サ…サンダー龍子!?」

「…え? 上原さんから!?」

7-4 7-5

『拝啓 結城千種殿
 貴殿の新日本女子プロレスのトップレスラーとしての活躍を耳にする度
 僅かながらでも貴殿とリングで戦ったものとして、嬉しく思います。
 新たな団体の旗揚げに向け忙しい日々を送っている私にとって、
 貴殿の活躍は支えとなるものです。
 本日、貴殿が敬愛してやまない同期の方とタイトルマッチを行うとのこと。
 素晴らしい試合となるよう、祈念する次第です。
 拙劣な文面ではありますが、貴殿の更なる活躍を祈りつつ筆を置きます。
                               敬具
                            吉田 龍子』

『めぐみ、あなたは今世界王者として、誇りと重圧を背負った毎日を
 送っていることでしょう。
 それらは必ずあなたの将来にとってプラスになります。だから決して
 プレッシャーに負けないで欲しい。
 今日は、あなたの同期である千種とのタイトルマッチがあるとのこと。
 心の通い合うライバル同士の素晴らしい試合を期待します。
 今日があなたと千種にとって、何ものにも代え難い日となりますように。
                            上原 京子』

「龍子さん…あたしのためにわざわざこの手紙を…。お気持ち受け取りました。頑張ります、龍子さん」

「上原さん…どこか遠くでプロレスしてても、ちゃんとあたしのこと見ててくれたんですね。ありがとうございます、必ずいい試合にします!」


《時を同じくしてプロレスの門を叩き、苦楽を共にし、分かち合いながら歩んできた同期という名の絆。それらの重みを全てぶつけ合う同期の対決が、世界最高峰の王座を賭けたこのリングで戦われます!

王者・武藤めぐみvs挑戦者・結城千種!

常に先んじていた武藤に、その背中を見続けていた結城! しかし今日のこのリング上では、これまで両者が歩んできた道のりの違いは関係ありません! 実力が全て、持っている力が全てです!

いよいよ始まります、IWWF世界ヘビー級タイトルマッチ! 最後にカクテル光の下に立っているのはどっちだ!?》

7-4 7-5

そして、戦いのゴングは鳴った──



〜 To be continued next "V3" or "Special". 〜


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