V2トップへ  → 1. 序章 へ


オープニング


3月、東京──

厳しかった冬の寒さは既に感じられず、春を感じさせる優しい暖かさを、ふと感じさせるそんな頃。街角に、見るからに地方からやってきたと分かる女の子が一人、途方に暮れたように立ち尽くしていた。

0-1

「え〜と、ここ、どこだろう…早くしないと入門テストが始まっちゃう!
せっかく、ドラゴン藤子さんみたいなレスラーになりたくて東京までやって来たのに…!」

また、そのすぐ近くの街角に、なにか不機嫌そうな表情の少女が歩いていた。
こちらも東京の人間ではなさそうだが、その軽快なファッションは、街で遊ぶのになれている、そんな雰囲気を感じさせる。

0-2

「だいたい、エミは彼氏と遊べばいいけどさ、あたしはこっちに知り合いなんかいないんだから…。東京って言ってもこんな郊外でどうすればいいのよ…あ〜あ、なにか面白いことないかなぁ」

「と、とにかくなんとかしなくちゃ…そ、そうよ! こんな時には誰かに道をきけばいいんだわ! あのう、すみませ〜ん!」

0-3

「へ? あたし?」

「は、はい、そうです。あ、あの〜、新日本女子プロレスの道場がこの近くにあるハズなんですけど、わかりませんか?」

「しんにっぽんじょしプロレス〜? あなた、プロレスラーなの? あんまりそんなふうには見えないけど…」

「い、いえ、あたしまだレスラーじゃなくて…その、だから、テストがあるから合格したらレスラーになれるかもしれないんだけど…」

話しかけてきた少女の焦りをよそに、もう一人の少女は興味を示した。
プロレスのテスト…なんだか、面白そうだ。

「まあ、待ちなさいって。おもしろそうだから、あたしも一緒に探してあげるわよ」

「本当!? あ、ありがとう! 助かりますぅ!」

「確か、さっき交番があったハズだから、そこできこうよ。あ、あたし武藤めぐみ。めぐみって呼んでいいよ。あなたの名前は?」

「あ、あたしは結城千種っていいます!」

武藤めぐみ。
結城千種。
これが2人の天使の運命の出会いであった。


新日本女子プロレス…
IWWF世界ヘビー級チャンピオン、マイティ祐希子をトップに掲げ、彼女に挑む最強の女神達が集う国内屈指の女子プロレス団体。

それだけに、毎年、入門を希望する少女達は後を絶たないが、その狭き門をくぐり、リングへ昇る資格をつかめる天使の卵達はほんの僅か…

0-4

「ふわわ〜。思ったよりきつかったけど、他のコと比べたら、あたしずいぶんマシだったよね」

「…め、めぐみったら、余裕あるね…(ドキドキ)」

そして、さらに、その中から幾重もの黄金の翼を持つ女神が誕生することは、まさに稀なことだが…

「28番、結城千種!」

「は、はいっ!!」

「やったじゃない、おめでと千種!」

「ありがとう、めぐみ! めぐみのおかげだよ!」

「29番、武藤めぐみ!」

「へ? …まいったな、あたしも受かっちゃったの!?」

とにかく、こうして2人の天使達は最強の女神達が待つリングへと上がる資格を手に入れたのだ…


       V2トップへ  → 1. 序章 へ


トップへ
(C) GREAT CO.,LTD. / 1995 KSS / 1996 KSS / PLUM
All rights reserved.
当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しております。
※画像等については「このサイトについての注意書き」もご覧下さい。