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世界へ


IWWF世界ヘビー級王座に挑むには、世界トップクラスのレスラーからベルトを奪うことで実力を世界中に認めさせる必要がある──

そう告げた理沙子の導きで、『仮面の貴婦人』チョチョカラスの持つAACヘビー級王座を狙って、仲間たちと再びメキシコの地を踏んだ祐希子。

しかし彼女らはそこで、チョチョカラスのAACヘビー級王座がエム・サンドという謎のマスクウーマンに奪われたことを知る。

「エム・サンド…やっぱ世界って広いわあ。あのチョチョカラスから、あっと言う間にベルトを取っちゃうなんて…」

エム・サンドのタイトル戦を望む祐希子だったが、その前には王座奪還を期するチョチョカラスと、そして、祐希子の持つ世界ジュニアベルトを狙うデスピナ・リブレが立ち塞がっていた。


2-1

「ハイ、祐希子! 昨日のタイトルマッチはやられちゃったよ。でも、次はこっちから日本へ乗り込んで世界ジュニアを奪ってやるからね!」

「へへ、デスピナもなかなかやるじゃない。驚いたよ! …でも、実は世界ジュニアは返上しようと思ってるんだ。防衛戦に勝って義理は果たしたしね。これからは世界ヘビーを狙っていこうと思ってるし」

「そうか…頑張りなよ、祐希子。でも、そうなるとベルトは軽く取れるね。なにしろ、強敵らしい強敵はリタぐらいしかいないからね」

「そう簡単にはいかないと思うよ? ウチにも、結構有望株の若手がいるからね」

「誰、そいつは? ここに来てる奴等の中にいるの?」

「菊池理宇ってんだ。ハチマキしたちっちゃいけどガッツのあるレスラーだよ」

「…OK、名前だけは覚えておこう。キクチね…」


デスピナとの世界ジュニア戦を終え、続くチョチョカラスとの一騎打ちでは彼女に実力を認めさせた祐希子は、いよいよAAC王者、エム・サンドとのタイトルマッチを迎える。

試合前に顔見知りの記者がつぶやいた「エム・サンドのファイトぶりは何かどこかで見たことがある」という言葉を少し気にしながら…


5-2

「完敗ね…祐希子。やっぱり、思った通りに強くなったね」

「…その声…!! まさか、う…上原さん…!!?」

何もないところから、もう一度やりなおそう。メキシコに渡りマスクを被った上原は、呪縛から解き放たれたような活躍を見せられるようになり、世界を狙えるベルトを手にすることもできた。

しかし、祐希子が理沙子を倒したと聞いた彼女は感じてしまう。理沙子や自分たちの時代そのものがもう終わりに近づいているのだと。

そして、自分が目指すプロレスは、ベルトや世界にあるのではなく「楽しさ」にあるということも。

「今思えば、あたしも新女のワクに囚われすぎてた。でも理沙子はそんなものとは関係なく、自分のプロレスを作り上げようとしてたんだよね。…それが分かるから、理沙子とも今なら笑って会えると思うよ」

「上原さん…何だか新女にいた頃より生き生きしてますね」

「ハハッ、そう見える? でも、あんたたちには世界を目指して頑張って欲しい。それが、あたしたちの世代を乗り越えていったものの義務だと思って」

「…相変わらずキビシーこと言ってくれるなあ、この人は。…分かりました! 上原さんや理沙子さん…それに、藤子さんの分まで頑張って、必ず世界王座を取ってきます!」


自由と希望の大地、アメリカ。

西海岸を経由し、ついにIWWF世界ヘビー級王者、レミー・ダ・ダーンが待つニューヨークに辿り着いた祐希子たちは、しかしそこで驚愕の事実を目の当たりにする…


『ジャパンのビューティ・イチガヤ、王者レミー・ダ・ダーンを沈めたあ! IWWF世界ヘビー級王座は、ニュージャパンレディのパワーモンスター、元ジュードーチャンプのイチガヤの手に!!』

5-3

その実力と「何か汚い手」(祐希子談) でIWWFのお偉方からタイトルマッチの権利を得た市ヶ谷は、その機会を見事に活かしてみせた。

日本人初の世界ヘビー級王座は、祐希子ではなく市ヶ谷の手に渡ったのである。

「…呆れてモノが言えないわ…」

「どこぞのズン胴田舎娘には、一万年かかってもこの世界のベルトを巻くのは無理でしょうけど、太平洋のような広い心を持つこのわたくし、あなた方にチャンスを差し上げようと思いますの。」

「なんですって?」

「今度日本で開催されるEXタッグトーナメント。この大会でわたくしに万が一! 勝つことができましたら、この世界ヘビーのベルトに挑戦させてあげてもよろしくてよ?」

「EXタッグトーナメント…? よーし、その約束をしたこと、後悔させてやろーじゃないの!」


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