『ついに、ついに無敵の王者パンサー理沙子が敗れ、その瞬間、新たなるチャンピオンが誕生いたしましたあ!! その新チャンピオンの名はマイティ祐希子!! 新女正規軍に牙を剥き続けたマイティ祐希子の戴冠に、今館内は大歓声に包まれています!!』
「…完敗ね、祐希子」
「さすがにドラゴン藤子が見込んだ人ですね…本当に厳しかったです。でも、しつこいようですが、パンサー理沙子の底はまだ見えないような気がするんですけど…?」
「…そうね、でもそれは出さなかったんじゃなくて、出せなかったのよ」
例え潜在能力があるとしても、それを限界まで引き出せなければ世界は取れない。
自分の実力以上のものをここ一番という大事な場面で瞬間的に爆発させる能力…それを持つ者だけが、”本当の王者”になれる。
自分には無かったその能力を持っている者が現れた…そのことを理沙子は「嬉しい」と言ってくれた。
「このまま立ち止まらないで、誰も追いつけないくらいに前に前に進んでいってね、祐希子」
「……理沙子さん、あたし何か、理沙子さんのこと誤解してたかも知れません」
「レスラーはね、お互いに戦ってみなければ分からないことが、たくさんあるのよ」
「…戦ってみなければ…ですか…そうかもしれませんね」
笑顔を見せる理沙子の前で、リングに上がってきた仲間からもみくちゃにされる祐希子。
そんな祐希子に、理沙子は一つの”約束”を持ちかける。
「女子プロレス界の最高峰、IWWF世界ヘビー級王座をあなたの手で奪ってくる…たぶん藤子さんや京子でも、同じ事を言うと思うけど?」
「…世界…あたしが世界ヘビーを…かあ。ははっ、何だかワクワクしてきたなっ」
「厳しい道のりとは思うけど、あなたなら大丈夫よ。私たちがどうしても届かなかった世界のベルトを、あなたの手で日本に持ち帰って」
「…持って帰りますよ、必ず。あたし、約束は必ず守る主義ですから!」
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