かつてメキシコで戦ったときには完敗を喫したチョチョカラス相手のタイトルマッチ。
その日のトレーニングと試合にも気合が入るはるみだったが、数時間後、日本に届いた一報ははるみを驚愕させるものだった。
「あ、上原さん。…どーしたんですか? 険しい顔しちゃって」
「…はるみ、チョチョカラスがメキシコでの防衛戦で負けたらしいわ」
「ええ!? そ、そんなバカな、あのカラスが!? 誰にですか!?」
「それが…あなたもよく知ってる、ジャニス・クレアに…」
「!! ジャニスが、WWAのチャンピオンになったんですか!?」
「そう。今度のタイトルマッチは、ジャニスと戦うことになるわね。…皮肉なものね。国籍が違うとはいえ、海外でともに戦ってきた親友と王座を争うことになるとは…」
「…いえ、上原さん。もしかすると私は、こういう時を待っていたのかもしれません。今まで競い合ってきた相手と、王座を賭けたリングの上で雌雄を決する日が来るのを…」
「…そう。そこまで考えているのなら何も言うことはないわ。随分大きくなったわね、はるみ」
「上原さん…」
「もう私が教えることはなくなった。あとは”勝ってチャンピオンになって”、これしか言うことはない。勝ってきなさい!」
「…はい!」
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