9年目2ndQ P1 へ ←  リプレイトップへ  → 9年目2ndQ P3 へ


9年目2ndQ (7〜9月) Part2 〜 団体交流戦 (2) 〜

《目次っぽいもの》
団体交流戦:後半戦結果交流戦を終えて[SL,WR] − 注釈?



「いやぁぁぁーっ! 日本がっ、夏の一大イベントがっ、遠くにいっちゃうーっ!」

AACタッグ防衛戦のため、佐久間理沙子とともにメキシコへと向かう富沢レイ。
彼女が残したよくわからない悲鳴で、8月は幕を開けた。 *1a

この月のスレイヤー VS WRERA団体交流戦は、6試合。
スレイヤー社長秘書の井上は 3勝あるいは 4勝と見た組み合わせだが、果たして。 *2a



交流戦

「ウェイトレスと魔女……まだ 8月なのに、ちょっとばかしハロウィンちっくなのです」

同い年でデビューも近い、アイドルレスラーファン注目の対決。
ともに実力よりもギミックやスタイル、あるいは口数の方が目立つ選手ではあるが、この試合は純粋なプロレスファンにとっても見応えのあるハードな展開となった。
パワーとスタミナで勝る小縞を巧みな切り返しや状況判断で美沙がいなし、ダイヤモンドカッターや黄泉堕としといった互いの得意技もニアフォールで耐え切っていく。
引き分けのゴングが鳴らされた時には、選手も観客も悔しがる一戦となっていた。

△ 小縞聡美 −(30分00秒 時間切れ引き分け)− ウィッチ美沙 △

「武藤を始め、数々の選手への暴虐……目に余る!
その性根、私が叩きなおしてやる!」

交流戦

越後が対戦を希望した一戦は、常に先の先を取ろうとするライラを、後の先を取るのに長けた越後が、中盤まで一方的に押さえ込んだ。
無論、ライラも考えなしに暴れるだけの選手ではない。小技では受けきられるだけと悟ると、隙をついての地獄落としなど大技中心に切り替えて逆転を狙う。
だが、この日は越後の日だったのだろう。
越後の鋭いナックルで流血まで喫すると、ヒップアタックから裏拳まで立て続けに食らい、さしものライラも万事休すとなったのである。 *3a

○ 越後しのぶ −(12分25秒 裏拳)− ライラ神威 ×

交流戦

「わーい、ニャンコちゃんの堀さんだあ!
私、前から一度戦ってみたかったんです!」

……という永沢の熱望が通って組まれた試合は、その熱意ゆえか永沢が序盤を優位に進めた。
バックドロップやタイガースープレックスも飛び出し、大先輩の堀から勝ち星を挙げるかとも思われたが、そこは実績でも実力でも永沢を大きく上回る堀だ。
ノーザンライトスープレックスで永沢の動きを止めると、終盤は一方的に攻める展開。
ノーザンライトボムやシューティングスタープレス、さらには最近習得したパワースラムと大技を連発させて貫禄を見せつけた。

○ テディキャット堀 −(19分50秒 パワースラム)− 永沢舞 ×

「うわ〜、近くで見ても千春ちゃんそっくりですねぇ。
千春ちゃんにはいつもお世話になってます〜」

交流戦

試合前の挨拶こそノンキだったが、千春と千秋が同程度の力と考えた場合、石川にとって負けるとは考えにくく、また負けられない勝負だった。
事実、終盤まで石川が圧倒。 千秋も決め技のフェイスクラッシャーを二発繰り出して追いすがるが、20分のコールを待たずに試合は決すると思われた。
ところが、二人で場外に落ちたことから流れが変わる。
ラフファイトで石川を痛めつけ、それでも戻ったところでパイルドライバーを食らうが、これは何とかロープブレイク。 最後はフェイスクラッシャーからギロチンドロップに繋げて、千秋が下馬評を覆す勝利を挙げたのだった。 *4a

× 石川涼美 −(23分34秒 ギロチンドロップ)− 村上千秋 ○

交流戦

「あのギルティ美鷹の娘さんと戦えるなんて……
うん、プロレスやっててよかったよ、私!」

『展開が読めない試合。いろんな意味で』などと評された小鳩と千種の顔合わせ。
ただ、勝敗という点においては小鳩のものだろうという声が大勢を占めていた。
それが蓋を開けると、序盤にメロディスタンプやバックドロップといった大技が乱れ飛んだせいなのか、互角のまま終盤まで雪崩れ込む展開を見せる。
ここで光ったのは小鳩の器用さ。 千種のジャンピングニーを返すと関節技に巻き込んでギブアップ寸前まで追い込み、勝利を間近にまで呼び込む。
しかし、そこから千種が起死回生。 ノーザンライトスープレックス、そして得意のバックドロップで逆転の3カウントを奪い取った。
最後に光ったのは千種の根性の方だったのである。 *5a

× メロディ小鳩 −(15分20秒 バックドロップ)− 結城千種 ○

「ライラを一蹴したあんたとの試合、楽しみにしてたっス。
だけど、今日は勝利第一で行かせてもらうっスよ!」

交流戦

自分が苦戦したライラに一年前とはいえ圧勝しているめぐみ。 真田が彼女に興味を持ったのも当然だったが、真田はこの戦いを楽しめる状況になかった。
今月の交流戦指定試合は、この最終戦までスレイヤー側の勝利数がゼロ。
根が真面目な真田にとって、団体のため一矢報いなければという義務感に駆られるのもまた当然だった。
しかし、今回はそれが裏目に出てしまったのだろう。 早い時間帯に必殺の斬馬迅を決めたまでは良かったが、そこから真田は勝負を焦りすぎた。
気が付けばフライングニールキックから始まるめぐみの連続攻撃に晒され、リング中央のフェイスクラッシャーで勝負を決められてしまったのである。

× 真田美幸 −(12分09秒 フェイスクラッシャー)− 武藤めぐみ ○




EWA

《──さあ、スレイヤーのリングで開催されるのは、実に一年と三ヶ月ぶりになります、EWA認定世界王座選手権!
サンダー龍子の返上後、巡り巡って WRERAの結城千種の手に渡ったベルトを今宵狙うは、元王者でもある石川涼美!
交流戦では村上千秋に不覚を取った石川ですが、それだけに今日は背水の決意でリングに上がります!》

「背水の決意……まさにそう思って試合してもらわなければね。
ここで無冠となれば、立場的にも難しくなるわよ。 ねぇ、石川さん?」

会場の VIPルーム。
全面ガラス窓の前で腕を組み、文字通りにリングを見下ろす井上の目は冷ややかだった。

その斜め後ろでは、こちらはソファに収まってモニタを注視するスレイヤー・レスリング社長が、皮肉めいた笑みを浮かべている。

「…… 8月の交流戦はまさかの 5敗1分け。 通算でも4勝7敗1分けに終わる、か。
どうやら我々よりも WRERAの方が選手層は厚いと見えるな。 井上くん」 *1b

「失礼ながら、社長。 たかが一度ずつの勝負による結論付けは短絡すぎますわ。
むしろ私は、交流戦以外の試合、特にタイトルマッチの結果を重視しております」

「ふむ。 だからこそ、この二人が……そういうわけかね?」

社長が傍のテーブルに目を落とす。
そこには RIKKAと石川、二人の写真が厚い報告書にクリップされて置かれていた。

JSW ASIA WWPA-T

7月には、RIKKAが永沢の持つ JSW王座に挑んで、意外なほどの完敗。
今月は、石川が真田のアジアヘビーに挑んで、これも敗北。

これだけであればさほど騒ぐ話でもないが、二人が守っていた WWPAタッグのベルトを、ここへ来て真田と桜崎に奪われてしまったのはまずかっただろう。

GWAタッグ王者でもある真田と桜崎がその評価を高める反面、RIKKAと石川はこのタイミングで無冠の身になってしまったのである。 *2b

「もちろん、タイトルの有無だけで判断するのも短絡的とは存じております。
ですが、年齢や戦績、年棒や貢献度など──平たく言えばコストパフォーマンスですわね。
それらを総合的に判断すると、今のところはこの二人が有力候補というわけです」

「それはわかった。 だが、これは人と人の話──心情や関係性も絡み、失敗すれば取り返しのつかん複雑な話だ。 くれぐれも慎重に頼むよ」

はい、と井上が答えたところで、長い金属音とともに会場のボリュームが上がった。

結城千種と石川涼美の EWA認定世界王座選手権。 その試合が始まったのだ。

「お姉さんの意地は、普通の意地とは一味違うんですよ〜!」

攻勢に出たのは石川だった。

社長や井上の動きを、おそらく彼女は知りも意識もしていないだろう。
だが、一人のレスラーとして、そして思い出深い EWAのベルトが懸かっていることもあって、負けるわけにいかないと思うのは当然のことだった。

ショルダータックルやラリアット、得意としているパワー系の技で、7つも年が離れた現王者を攻めこんでいく。

「うわぁ、マズいよおっ。 マズいのはわかってるんだけど……!」

なかなか反撃の糸口が見つからない千種。
こちらも得意の投げ技で応戦したいところだが、石川はあからさまに投げを警戒していた。
それは半ばフェイクだったが、まだ経験の浅い千種では“名参謀”石川の智略は見抜けない。 強引に狙う飛びヒザもことごとく返され、自分のダメージだけを蓄積させてしまう。

「このまま行けば……もう一回、あのベルトを巻けます!」

石川が勝負に出る。
大技を狙って隙が出来た分だけ千種の技も受けてしまうが、それでも強引に伸ばした右手が、ついに千種の細い首を掴んだ。

「お姉さんパワー、受けてみなさいっ!」

のど輪落としがマットを揺るがし、千種の呼吸が一瞬停止する。
そのまま攻撃を緩めずに放ったパイルドライバーで、2.5まで入るカウント。

もはや立ち上がることもできそうにない千種をさらに引き起こして投げようとし──その腰にがっちりと腕が回された。

「しまっ……」

「ここで狙うのはただ一つ! 逆転満塁ホームランです!」

あらゆる切り返しを許さない芸術的なバックドロップが、石川の積み上げてきた策と勝利への礎を粉々に打ち砕いた。 *3b

27分14秒、ローリングクレイドルでの決着まではそれから 2分を要したが、その間、石川の反撃らしい反撃が見られることはなかったのである。
千種

「力を出し切れて楽しかったです。 またやりましょうね!」

清々しい笑顔で差し出された王者の手を、石川がこちらも笑顔で握り返す。

夜空に響き渡る万雷の拍手。
その中で再開された井上と社長の会話の内容を知ることができた者は、一人もいなかった。




ページトップへ
■ 注釈(?) ■
*1aコ○ケに行けなかった上、今回の遠征防衛戦も負けて帰ってくることになる富沢です。
そんな富沢の愚痴については8年目4Qもご参照。
*2a8月のイベントは、スレイヤーでは、龍子グッズバカ売れ、永沢FC、ライラCM、岡山飲食店、など。
WRERAでは、市ヶ谷CM、堀CD(「すごい」ヒット)、岩手飲食店、などがありました。
*3a評価値はほぼ同等ながら、防御の高い越後が一枚上手な感があります。
攻撃重視キャラより防御重視キャラの方が強い?
*4a番狂わせその1。評価値は石川が100も上です。
*5a番狂わせその2。こちらも評価値は小鳩が100も上です。
*1bさすがに後半戦の 5敗1分けはプレイヤーも予想外でした。
*2bEWA世界王座戦(8月第五戦)までの8月のタイトルマッチは、真田のアジアヘビー五度目の防衛(vs石川)、千春&フレイアのNJWPタッグ四度目の防衛(vsめぐちぐ)、堀のAACジュニア二十七度目の防衛(vsソニック)、堀&越後がアジアタッグ九度目の防衛(vsライラ&永沢)、めぐみがNJWP七度目の防衛(vsカオス2p)。
そして、真田&桜崎がWWPAタッグ奪取(vs石川&RIKKA)してます。
*3bここは必カードでの一撃ですが、そうでなくても千種専用バックドロップには返し技無し。
めぐみのフライングニール同様、返し技を気にせずぶっ放せます。
ページトップへ


9年目2ndQ P1 へ ←  リプレイトップへ  → 9年目2ndQ P3 へ


トップへ
(C)2008 松永直己 / TRYFIRST
(C)2005 松永直己 / SUCCESS 運営サクセスネットワーク
(C)2005 松永直己 / SUCCESS
All rights reserved.
当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しております。
※画像等については「このサイトについての注意書き」もご覧下さい。