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9年目2ndQ (7〜9月) Part1 〜 団体交流戦 (1) 〜

《目次っぽいもの》
団体交流戦:全員参加対戦カード秘められた意味前半戦結果[SL,WR] − 注釈?



WRERAに届いた一通の FAX。
それが二ヶ月にわたる夏の祭典の始まりだった。

「スレイヤーとの団体交流戦!? マジかよ、霧子さん! もちろんやるんだよな!」

「…………」

「……霧子さん? どーしたんだよ、固まっちゃって」

「あ、いえ。 何でもないのよ、来島さん。 ただちょっと、デジャヴを感じてね……」

三年前の秋に行なわれた、スレイヤー・レスリングとの団体対抗戦。 *1a
その時も、まずは来島がいち早く参戦の意を表明したはずだった。

確かその次は──と、社長秘書の霧子が記憶を探ったところで、ジムに集めた十一人の選手のうち、一人が律儀にも手を挙げた。
それが、引っ張り出したばかりの記憶と、ものの見事に一致する。

「……千里さんは、ルールが知りたいのかしら?」

「はい。 ただその前に、名称も気になりました。
三年前は“団体対抗戦”で、今度は“団体交流戦”。 どういう違いがあるのかと」

「さあ、それは……。 まだ FAXをもらっただけで、先方と話はしていないから。
ただ、ルールは少し違うわね。 前回は 5対5の選抜戦だったけれど、今回は 12対12。
つまり、こちらは選手全員での参加を要請されているの。 その点かしら」
小縞

「ぜ、全員参加!? ってゆーことは、私も出られるんですかぁ?」

キラキラと目を輝かせたのはじきにデビュー二周年を迎える小縞聡美だ。

昨年は新人が入らなかったこともあって、彼女がシングルで戦う顔ぶれはほとんど固定されてしまっている。
彼女にしてみれば、誰であろうと他団体の選手と戦えることは願っても無い話なのだ。

「あまり浮かれないほうがいいぞ、小縞」

小縞に冷たく釘を刺したのは、先輩の越後しのぶだった。
越後

「全員参加を指定してくるなんて、どうも怪しい。 若手を潰そうとか全員亡き者にしようとか、向こうがそんな腹づもりだったらどうするんだ?」

「し、しのぶちゃん。 いくら団体の名前がスレイヤーだからって、そんなマフィアみたいなことはしないと思うにゃ」

越後の過激な発言に、アジアタッグ王座のパートナー、テディキャット堀がたしなめるように苦笑する。
しかし、越後も自説を曲げる気はないらしい。

「興行面では、前回のようなトップ数名の対戦で話題性充分のはずです。
それをわざわざ、互いの手間をかけてまでウチの全員とやりたいなんて。 *2a
それだけじゃありません。 前回、武藤が病院送りにされたことを忘れてませんか?
あれはライラって奴の暴走だったにしろ、同じことを組織ぐるみで仕掛けてくるかもしれませんよ?」

「組織ぐるみで仕掛けなんて……そんなお話は漫画の中だけよ、越後さん」

心配性なんだから、とでも言いたげに、霧子は微笑んだ。

スレイヤーにいる同姓同名の社長秘書とは違い、こちらの井上霧子は人が良い。

「ただ、無茶なカードを組まれないように私たちも気をつけて調整するわ。
対戦相手の希望があれば早めに言っておいてね。
もちろん、まだ承諾はしていないから、みんなが嫌だというならお断りもできます。
スレイヤーとの交流戦……やってもいいという人は、手を挙げてもらえる?」

越後を含め、ほとんどの選手が次々に手を挙げた。

埼玉の豪邸に帰って不在の市ヶ谷を除けば唯一、富沢レイだけは「面倒だから嫌」と顔に書いてあったが、他の十人が手を挙げたのを見ると、しぶしぶと自分も手を挙げた。

かくして、現時点での女子プロレス界の両雄、スレイヤー・レスリングと WRERAの全面対決、団体交流戦の開催が決まったのだった。




スレイヤーと WRERAの交流戦期間は、7〜8月の二ヶ月となった。

すでにある程度決まっている巡業スケジュールに上手く組み込めるよう、互いに三名の選手を貸し出して、一ヶ月に 6試合、二ヶ月で12試合をこなそうというのだ。

組み合わせは、「実力が近く、しかしなるべく対戦経験の少ない組み合わせを」というスレイヤー側の要望に、WRERA側の意見と両団体で何名かの選手が出してきた希望を加味して、以下のように決められた。

スレイヤー VS WRERA 団体交流戦(第二回対抗戦)
7月8月
サンダー龍子 VS ビューティ市ヶ谷永沢舞 VS テディキャット堀
森嶋亜里沙 VS マイティ祐希子ライラ神威 VS 越後しのぶ
フレイア鏡 VS 桜井千里ウィッチ美沙 VS 小縞聡美
メイデン桜崎 VS ボンバー来島真田美幸 VS 武藤めぐみ
RIKKA VS 富沢レイ石川涼美 VS 村上千秋
ケルベロス小鳥遊 VS 佐久間理沙子メロディ小鳩 VS 結城千種

なお、龍子 VS 市ヶ谷戦に関しては決して『対戦経験の少ない組み合わせ』ではないが、前回の対抗戦での騒ぎに懲りた WRERAの社長が、真っ先に市ヶ谷の希望を聞いた結果である。




「査定マッチ……だってぇ?」

所属選手は WRERAの 12名に対して、スレイヤーは 15名。
自然、交流戦枠に入れない選手がスレイヤー側に 3名存在する。 *1c

その「外れ組」に双子の姉・千春が入っていたことで、WRERAの村上千秋は嬉々として「選外かよ。 情けねぇなあ、千春」と嫌味の電話をかけたのだが……。

千秋 千春

『そう。 査定マッチだよ、千秋。
今回の交流戦とやらは、おそらくこっちの団体の選手をふるいにかけようって目的があんのさ。
クビにするのは誰がいいか、それを決めるためのふざけた試合なんだぜ?』

昨年末、社長と秘書の井上からスレイヤーの選手全員に告げられた、いわば「条件付きのリストラ宣告」。 *2c

千春からそれを聞いた千秋も、スレイヤーの動向には注目していた。
この半年間特に動きが無かったことで、単なる脅し文句だったんじゃねーかとの認定を済ませてしまっていたが、千春の言葉はその話がついに動き出したと告げていた。

『ま、ウチのお気楽連中も、ほとんどは忘れてるっぽいんだけどよ。
ところが最近、スカウトの奴らが活発に動いてやがんのさ。
選手を増やせないはずの状況で、明らかに新人を獲ろうとしてやがる。
……そのタイミングで、この交流戦だぜ? うかつに動くわけにはいかねぇだろ。
だから、上手いことやって 12人枠から外れたのさ』

「……おいおい、逆効果じゃねぇのか、千春?
お前の言うとおりとして、査定の対象から外れりゃあ、その分不利だろが。
策に溺れて、お前がクビにされたって知らねーぞ?」

『はっ。 誰かの手のひらの上で踊らされるのなんか、私は真っ平なんだよ!
あの性悪腹黒女秘書の手のひらなら、なおさらさ。
ま、これでクビになんなら、どのみち長くはねーってことだ。
そん時は、お前の団体に口きいてくれよな、千秋?』




「社長。 WRERAとの交流戦指定試合、7月分の結果が出揃いました」 *1d

「うむ。 見せてくれたまえ、井上くん」



交流戦

「お前……そんな細腕で、私の巨体をどうこうできると思ってんのかよ!」

黎明期のレジェンド対決を思い起こした者も多い小鳥遊 VS 佐久間の一戦は、途中の流血で佐久間の動きが鈍ったこともあって、体格とパワーの差が如実に出た試合となった。

佐久間も重量級の巨体を得意のキャプチュードで投げきるなど見せ場は作ったが、結局は連打でコーナーに押し込まれてからのガルムズディナーで小鳥遊の勝利。
交流戦開幕試合はスレイヤーがまず一勝をあげた。

○ ケルベロス小鳥遊 −(16分13秒 ガルムズディナー)− 佐久間理沙子 ×

「ちょっとちょっと!
これのどこが実力の近い組み合わせなのよぉ!?」

交流戦

富沢のクレームもわからなくはなかった。
仮にも AAC世界タッグ王者の肩書きを持つ富沢ではあるが、百戦錬磨の RIKKA相手ではまだまだ分が悪い。
関節技に活路を見出そうとするも容易くロープを取られ、場外戦で痛めつけられた挙句に不知火であっさりとカウント3。
この月の交流戦 6試合では最速タイムでの決着となってしまったのである。

○ RIKKA −(12分05秒 不知火)− 富沢レイ ×

交流戦

「ギミックレスラーだからと侮っておいでですか?
痛い目を見ますわよ、来島お嬢様!」

「富沢タイプかよ」と言った来島に悪意は無かったが、その言葉が桜崎に火をつけた。
そもそも、この試合は『勝利、しかもできれば格上から』にこだわった桜崎が、関節技に弱いと聞いて来島を希望したもの。 *2d
中盤まではナパームラリアットを含む来島のパワー技で押せ押せムードを作られるが、目論見通りに関節技ラッシュで流れを変えた。
最後は、メイド・イン・ヘヴンを何とか凌いだところにトラースキックが一閃。
桜崎は格上・来島から見事に勝利をおさめたのだった。

○ メイデン桜崎 −(19分57秒 トラースキック)− ボンバー来島 ×

「アァッ……かつての屈辱、そしてこの苦痛。
何倍にもして返せるかと思うとゾクゾクしますわ」

交流戦

かつて、カオスとの二人がかりでも桜井千里に及ばなかったフレイア鏡。 *3d
この試合も開始直後から千里が圧倒、わずか数分で勝負がつくかと思われたが、龍子すら退けた GWA王者もそこまで甘い相手ではなかった。
掌底からのフォールをロープで凌ぐと、冒頭の呟きから必殺のクレッセントヒールを二連発。
さらに場外でラフファイトに持ち込み、リターン後のシャイニングウィザードでカウント2.9まで奪い取る。
最後はからくもエクスプロイダーで沈めたものの、千里にとっては薄氷の勝利であった。

○ 桜井千里 −(13分01秒 エクスプロイダー)− フレイア鏡 ×

交流戦

「いいですこと、龍子。 これから先、この私に一勝でもできるなどと思わないことですわ!」

対龍子のシングル「無勝」記録も昨年に止まり、連勝に向けて鼻息の荒い市ヶ谷。
しかしその気合が空回りしたか、開始直後にビューティボムを決めて以降はペースを握られ続け、気付いてみればプラズマサンダーボムまで食らって敗北寸前まで追い込まれていた。
それでも意地のビューティボムから消耗戦に持ち込んだのはさすがだったが、フォール合戦の結末はのど輪落としに行ったところを捕らえられての DDT。
市ヶ谷の大口を龍子が再び実力で封じる結果となった。

× ビューティ市ヶ谷 −(16分31秒 DDT)− サンダー龍子 ○

「…ここであなたを倒せば、団体王座への挑戦も来月に繰り上がるわ…」

交流戦

今期、スレイヤー無差別級王者である龍子と互角の戦績を残している森嶋。 *4d
すでに次々戦・11月の王座挑戦は内定していたが、龍子戦無敗を誇る祐希子を倒せば来月にでも挑戦を、という約束まで取り付けてリングに上がった。
だが、はやる気持ちを祐希子に見透かされたのだろう。 完全に試合をコントロールされ、15分が経過した頃には森嶋の息が大きく上がっていた。
そこから得意の SSDを立て続けに二発。 さらには場外で敢行したフェイスクラッシャーで祐希子の額を割ったのは見事と言うべきだが、お返しのフェイスクラッシャーを返す余力までは森嶋に残っていなかったのである。

○ マイティ祐希子 −(18分39秒 フェイスクラッシャー)− 森嶋亜里沙 ×



「……ほう、我々スレイヤーの 4勝2敗か。 選手諸君も健闘しているようじゃないか」

「はい。 祐希子選手と桜井選手相手の試合は負けてしまいましたが、率直に申し上げれば、これは順当というもの。 もともと分が悪い組み合わせでしたから」

「しかし、だ。
IWWFと NAの両王座戦で、龍子くんまでもがその二人に連敗したのはいただけんよ。
今月は、森嶋くんと鏡くんのタッグも NAタッグのベルトを奪えずじまいだ。
トップレベルでは WRERAに差をつけられた感がないかね?」 *5d

「否定はいたしません。
ですがそれは、“プランB”を選択した時に、ある程度見据えていたではありませんか。
高いコストで最強の選手を一人抱えるよりも、バリエーション豊かな選手を複数揃える。
それで経営が充分に成り立つどころか、利ざやは大きくなる──そういう方針だと」 *6d

「そうだな。 だが、やはり勝負事というのは負けるとそれだけで悔しいものでね。
どうせならこの交流戦も勝ち越したいものだが……井上くんは、来月の対戦をどう見るね?」

男の人というのは、どうしてこう勝ち負けにこだわるのだろう。
内心では少し呆れていたが、他ならぬ社長の問いかけだ。 井上は、仕方なく彼女なりの分析で来月の勝敗を予想してみた。

「3勝3敗、あるいは 4勝2敗。
トータルは 7-5か 8-4で我々の勝ち、といったところでしょうか。
向こうの若手、特に武藤・結城両選手の勢いが気になりますが、真田選手や小鳩選手が経験で優る分、ここで 2敗することは無いでしょう」

「武藤と結城、か。 確か来月はタイトルマッチも組んである二人だったかな」

「はい。 武藤選手はスレイヤー王座への挑戦ですが、これははっきり申し上げて消化試合。
挑戦者の顔ぶれが固定されつつあるため、ここらで新顔を……というだけのカードです。
注目すべきは、結城選手の持つ EWA王座に、石川選手が挑戦する一戦ですね。
他ならぬ EWA王座ということで石川選手の気合も充分。
タイトル奪取の期待も大かと考えられます」

「EWA王座……我々とは何かと因縁があるベルトだしな。
よろしい。 それでは、来月を楽しみにするとしようか」 *7d




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■ 注釈(?) ■
*1a団体対抗戦については6年目3Qをご覧いただければと。
今回も、全試合AUTO観戦です。
*2a実際のところ、プレイヤー側としても結構手間がかかるんですけどね。
*1c千春、中森2p、真帆2pの三名です。
*2c8年目3Qをご覧ください。
*1d7月の他のイベントは、スレイヤーで IWWF提携切れ→WWCA提携、WWCAジュニア遠征防衛、ライラFC、小鳥遊2pCD(「あまり」売れず…)、美沙一日署長、岡山グッズショップ。中森2pプライベートイベントもありました。
WRERAでは WWCA提携切れ→IWWF提携、ゆっこグッズバカ売れ、来島CM、理沙子2pCD(「かなり」のヒット)、ソニック参戦(二ヶ月)、岩手グッズショップ。桜井プライベートイベントその2もありました。
*2d体力や手足の耐久力が十分に残っていても Lv5程度の関節技であっけなくギブアップ取られてしまうことがあまりに目立つ来島さんです。…南とかハンに良いカモにされてしまいそう…(涙)。
*3d8年目3Qにて、桜井が実質ハンデキャップマッチを制してます。
*4d評価値でも森嶋は龍子に迫ってきてます。すでに能力下降気味の龍子に対して、晩成長寿タイプの森嶋はまだしばらく維持期のはず…と考えると、スレイヤーのトップ評価値交代も間近?
*5d7月のタイトルマッチは、スレイヤー主催がフレイアの GWA三度目の防衛(vs越後)、森嶋の WWPA十三度目の防衛(vsめぐみ)、永沢の JSW四度目の防衛(vsRIKKA)、桜崎&真田の GWAタッグ九度目の防衛(vs来島&富沢)。
WRERA主催が堀の GWAジュニア十度目の防衛(vsソニック)、あとは本文でも触れている桜井&市ヶ谷の NAタッグ六度目の防衛(vs森嶋&フレイア@前年EXタッグ優勝チーム)、桜井の IWWF十一度目の防衛(vs龍子)、ゆっこの NA十九度目の防衛(vs龍子)、です。
*6dここまで来ると、スキャンダル一回食らっても会場は超満員をキープできてます。
経営方針的に売上UPは望みにくいこともあって、高年棒の選手を抱えないほうがむしろ利益は増える状態。
ちなみに WRERAは市ヶ谷を筆頭に高年棒選手が多くスレイヤーよりも人件費が高い (選手は3人少ないのに…) ため、利益は少なめです。
*7dEWA王座を巡る話は…たくさんあります。ご興味あれば、まとめっぽくなってる8年目1Qをご覧ください。
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