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7年目3rdQ (10〜12月) Part3 〜 大乱の陰で 〜

《目次っぽいもの》
大乱の陰で[WR]初戴冠?[WR]EXタッグリーグプロレス大賞結果注釈?



「しかしまぁ……みんな、ホントに成長してくれたもんだよ。
祐希子は今や押しも押されもせぬ世界の頂点だし、
市ヶ谷も来島も千里も、れっきとした世界王者の経験者。
寮長──堀も、私ゃからベルトを防衛するくらい、たくましくなってくれたしね。
……さぁて……あとはどうするか、か……」 *1a

ビューティ市ヶ谷の失踪とサンダー龍子と世界王者たちの激闘が衆目を集めた、11月の WRERA興行。

しかし、この月に起こった重要な出来事は、これだけではなかった。

六角 めぐみ

「葉月さん! 待ってください!」

「お? めぐみじゃないか。
コーディとの NJWP王座戦、決まったって?
勝ったら、私ゃが挑戦させてもらうから。 覚悟しときなよ」

「その王座戦のこと……社長から聞きました。
社長は、葉月さんを今回の挑戦者にするつもりだったって。
それを私に譲って、代わりに自分は次の挑戦者になる──葉月さんがそう決めたって」

「あらら……ったく、あの社長もホントに口が軽いねぇ」

「譲っておいて、次の挑戦者に名乗りをあげるなんて……どういうことです?
私でもコーディでも、どうせどっちにも勝てる。 だから私にベルトを巻くチャンスを上げよう……なんて思ってるんですかっ?」

「うーん……。 ま、その通りっちゃその通りかな?」

「!!」

「あんたがそう思ってるなら、その通りにしかならないよ、めぐみ。
そんなんじゃ、確かに時期と相手が変わるだけで、私ゃの戴冠は変わらないだろーさ。
……いや、私の相手は同じかな。 あんたがコーディに負けたら変更無しだもんね?」

「葉月さんっ!」

「怒ったかい? それなら、勝ってみせてよ。 コーディに。 それから、私にも……さ?」

NJWP

NJWPヘビー級王者、ジュディ・コーディ。
それに挑むは、“次代のエース”、武藤めぐみ。

“孤高の天才姫”との二つ名も聞こえるようになってきためぐみは、これがタイトル初挑戦。

高度になった近年の女子プロレスにおいて、デビュー二年半でヘビー級王座奪取を果たせば、それはまさに“天才”の所業。 *2a
しかし、王者・コーディは、出る杭を打ち砕くに充分なパワーを持つレスラーだった。

《ジュディ・コーディ、得意のパワーで猛攻!
武藤めぐみは、ここまで手も足もでない苦しい展開だ!
タイトル初挑戦の緊張か、それとも、これが彼女の実力なのか!?》

「お前の実力など、関係ない。 これは、私の実力だ!」

コーディのハードタックルが、めぐみを軽々と吹き飛ばす。
コーナーに打ち付けられた彼女に、容赦なく突き刺さる串刺しラリアット。
さらには大技・アルゼンチンバックブリーカーが、めぐみの喉から絶叫を引き出させる。

互角、あるいは挑戦者有利との声もあった下馬評を覆す一方的展開に、めぐみの初戴冠を信じて声援を送っていた会場のファンも、次第に声を失い、静かになっていく。 *3a

──だからこそ、その声はめぐみの耳にしっかりと届いた。

「めぐみちゃん、しっかりするにゃん! 私の分まで頑張らなきゃ、ダメだからね!」

それは、先輩・テディキャット堀の声。
コーディに NJWP王座を奪われた彼女自身こそ、この舞台に立ちたかったはず。 それを、葉月の推薦があったとはいえ後輩のめぐみに笑顔で挑戦権を譲り、あまつさえ自ら志願してセコンド役も引き受けてくれた。

めぐみは、そんな彼女にお礼を言っていない。
それは決して、彼女がクールだからとか、コミュニケーションが苦手だからとか、そんな理由ではなかった。

「この恩は……必ず……!」

チョークスラムを狙ったコーディの腕を取ってロープに飛ばし、戻ってきたところに片脚ジャンプから身体を捻っての鋭い錐揉み回転で、遠心力を乗せた右足を叩きつける──

「私が勝つことで返すって、決めたから!」

めぐみの得意技、フライングニールキックが、コーディを吹き飛ばす。

同じ技の使い手は多かれど、そのスピードと破壊力は、天性のバネと体幹を持つ彼女だけのもの。 それ故に、彼女はこう呼ばれるようになったのだ。
──“天才姫”、と。

「クゥッ……なるほど、大した技だ! だが、この程度で私が倒れるとは──」

「思ってないわ! だから……!」

フロントスープレックス、フェイスクラッシャー、不知火、そして──

「だからもう、あなたには何もさせない!」

怒涛にして華麗な連続技を締めくくる二発目のフライングニールキックが、コーディの鍛え抜かれた身体をマットに打ち倒した。 *4a

鮮やかな大逆転劇の幕は、17分49秒。
NJWPヘビー級のベルトは、挑戦者・武藤めぐみの手に渡ったのである。
めぐみ

「私は、この場所でもっと輝いてみせる!」

リング上では先輩の堀や親友の千種が次々と祝福の声をかけ、離れた場所では葉月が微かな笑みを浮かべて見守っている。

その中でめぐみは、さらに上を目指すという宣言とともに、手にしたばかりのチャンピオンベルトを片手で掲げたのだった。




「さぁてと。 それじゃ、私はこっちのベルトをもらおうかねぇ?」

「え、えええっ? は、葉月さん、本気だったんですかぁ!?」 *1b

11月に WRERAで行なわれたタイトルマッチは、もう一試合存在していた。
TTT

それが、富沢レイが持つなんちゃって王座に、何と世界的実力者の六角葉月が手を挙げた、TTT王座戦だったのである。

「本気も本気。 全力で奪らせてもらうよ? なんつっても、私ゃにとってお初のシングル王座になるかもしんないからね♪」

「うううっ、痛いのはやめてくださいね……?
ベルトはどーせ返上してもらえるから、負けるのはいいんですけど……」

「何言ってんのさ、富沢。 返上する気なんかないよ?」

「え゛っ!? だ、だって、TTT王者には十四箇条もの必須事項があって、コスプレ入場とか、アニメ見るとか、そーゆーのこなさないと強制返上なんですよ!?」 *2b

「知ってるって。 ま、何とかなるっしょ。
コスプレとかおすすめアニメのアドバイスは、よろしく頼むよ、富沢?」

「だだだ駄目ですって! 当落通知が当選だった富沢が、12月を前に王座を失うわけにはいかないんですよぉ!」

「当落……? よくわかんないけど、今回の TTTはそれかな?
いいから、覚悟を決めなって。 あんたも“関節のヴィーナス”目指してんでしょ? 関節使い同士、熱くて痛ぁい試合をしようよ♪」

「いやぁぁぁ! 葉月さんが楽しそうだよぉぉぉ!」

王者の富沢が半泣きの状態で行なわれた試合は、10分40秒──意外に健闘したと言えるだろう──大方の予想通り、葉月の圧勝に終わった。

富沢の返上懇願もどこ吹く風で、初のシングル王座(?)を肩に悠々と退出した葉月は、翌朝、選手寮の富沢の部屋のドアにコンビニのレジ袋を掛けておいた。

その袋の中に、『冗談だってば』と書いた紙とともに TTTのベルトが入っているのを見て、富沢は心から安堵の息をついたという。




団体の垣根を越えた最強タッグ決定戦、EXタッグリーグ。 *1c

新女が開催するこの大会は古くからの年末恒例行事だったが、昨年からは『優勝者に NA世界タッグ王座への挑戦権を与える』とされたことで、微妙に位置づけと意味合いが変化してきていた。

桜井 市ヶ谷

「というわけですのよ、千里さん」

「すみません、市ヶ谷さん。 何が『というわけ』なのか、説明いただかないとわからないのですが」

「……ノリの悪いお人ですわね。 まあ、いいですわ。
単刀直入に言えば、この私と組んで EXタッグに出る栄誉、さらには NA世界タッグ王座を手に入れる栄誉を、あなたに与えて差し上げようというのです。
当然、承諾なさいますわね? オーッホッホッホ!」

「すみません、お断りします。 それでは、これで」

「……お待ちなさい!」

今年の WRERAは、EXタッグ常連の六角葉月が早くから不参加を表明。 *2c

NAタッグ王者でもある龍子への復讐のため、まずは EXタッグリーグ制覇を、と考えた市ヶ谷にとって、タッグパートナーでもある葉月の不参加表明は悩ましい話だった。

祐希子や来島と組むことは、さすがにいろいろな意味でありえない。
かといって、実力のおぼつかない後輩とのタッグでは、NAタッグ王座奪取は不可能だ。

というわけで、市ヶ谷としては、特定のタッグパートナーを持たない千里に頼らざるを得ない状況だったのである。 *3c

「……わかりました、お受けします。
ただし、EXタッグと NA世界タッグ限定で。 それ以外は、葉月さんとお願いします」

「少々ひっかかりますが……まあ、いいでしょう。
先月、あの龍子を倒したあなたと、そのあなたに自分よりも強い人と言わしめたこの私のタッグであれば、世界に敵はいませんわ!」

「いえ、あの場で言ったのは、市ヶ谷さんのことではなく……」

「NAタッグ王座、もはやもらったも同然ですわね! オーッホッホッホ!」

「……聞いていませんね」

EXタッグリーグ参加チーム
パンサー理沙子&佐尾山幸音鈴新日本女子
ソニックキャット&菊池理宇新日本女子
斉藤彰子&ミミ吉原新日本女子
八島静香&ドルフィン早瀬新日本女子
十六夜美響&南利美ワールド女子
ガルム小鳥遊&氷室紫月日本海女子
RIKKA&フレイア鏡スレイヤー
ビューティ市ヶ谷&桜井千里WRERA

海外団体が不参加ということも影響したか、今年の EXタッグリーグも、最終戦は WRERAとスレイヤーのチームによる全勝対決となった。
EX

スレイヤーの RIKKAとフレイア鏡も、世界トップクラスの実力者が組んだタッグ。

ここ何年かそうであるように、今年も引き分けによる再試合が予想されていたが……。

「オーッホッホッホッホ! 結果はやる前から、わかりきっていましたわ!」

最終戦は、21分21秒、WRERAチームの勝利で決着。
実に四年ぶりに、延長戦無しでの優勝決定となったのだった。 *4c




この年のプロレス大賞受賞者は、以下の通り。 *1d

ベストバウト:ジュニアソニックキャット VS メロディ小鳩
ベストバウト:タッグマイティ祐希子、武藤めぐみ
 VS ビューティ市ヶ谷、ダークスターカオス
ベストバウト:シングルサンダー龍子 VS ビューティ市ヶ谷
最優秀新人ウィッチ美沙
最優秀外国人ダークスターカオス
最優秀選手マイティ祐希子

美沙

「やったのです! 美沙の魔力は無限大なのですよ――!」

新人賞は、スレイヤー・レスリングのウィッチ美沙。

他団体が新人獲得を差し控えたための消去法的な選出、という面もなかったわけではないが、デビュー戦で初勝利を挙げるなど、将来有望な選手であることは論を待たない。

最優秀選手は、四連覇中の龍子をおさえて、ついにマイティ祐希子が選ばれた。

五連覇を阻まれた龍子本人を含めて誰からの文句も出ない、満場の拍手の中での初受賞となったのである。




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■ 注釈(?) ■
*1a本文ではほぼスルーしてますが、7年目1Qで堀は NJWP王座を葉月相手に防衛してます。
…それでいて葉月より格下のコーディに負けちゃったんだから堀にも(操作してた自分にも)困ったもんで。
*2aタイトルホルダーの実力(評価値)が高くなっているので、デビュー一年半で AAC王座を獲ったゆっこや、三年目で WWPA王座を獲った石川のようなことは、もはやなかなかできません…ということにしておきましょう。
*3aめぐみのカード運がとことん悪く、コーディの体力が80%残っている状況で、めぐみは25%まで削られました。
*4a実際にはコーディの技が一つ間に挟まったので連続技ではありませんが。
最後は、飛カードでのフライングニールキック。
めぐみ専用のフライングニールは、なにげに返し技無しなので遠慮なくぶっ放せます。
*1bTTT王座なんてものをやっちゃってるため、最近は富沢の本文登場率が主役級に高いです。
*2b6年目4Qで軽くルール説明してます。
*1c12月は、WRERAでゆっこグッズがバカ売れ、ゆっこFC、来島FC、市ヶ谷FC、来島写真集(「それなり」)、静岡に飲食店設置。理沙子プライベートイベントも発生。バカンスは…行きそびれました。(ごめん。>選手一同)
スレイヤーでは、龍子CM、小鳥遊2pCM、福岡にグッズショップ設立。バカンスでは真田が登場してます。
*2c葉月の EXタッグ参加を既定路線とする社長と、後輩に譲りたい葉月の駆け引き(?)は、5年目3Q6年目3Qにて。
無用な駆け引きを避けるために早くから不参加を公言した…という妄想設定でよろしくです。
*3cもともと、桜井には南っぽい役割の代行も期待していた…のですが、ここに至るまで、すっかり忘れていました。
*4cEXタッグはフルオート観戦が基本 (実力差ありすぎる試合は否観戦)。
なので、WRERAとスレイヤーの自団体対決では時間切れ引き分けがもはや当たり前なのですが、この試合は実力で上回る市ヶ谷と桜井が好調でした。
*1dなにげに、ジュニアでは久しぶりに堀がベストバウトを外してます。
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