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6年目2ndQ (7〜9月) Part1 〜 海賊王女と暗黒女帝 〜

《目次っぽいもの》
豺狼血風[SL]海賊王女と暗黒女帝[SL]相手は二大怪獣?[WR]注釈?



ライラ神威。

古武術・神威流の遣い手で、流れる紅い血を好む残忍凶暴なマスクウーマン。
反則上等のファイトスタイルと普段からそのままの性格は、スレイヤー・レスリングの中でも異質な存在。

それでも、お目付け役を務めるフレイア鏡の見事な手綱捌きと、何よりもまだ大口に伴わないリング上での実力が、彼女の必要以上の暴走を食い止めていた。 *1A

しかし、その狂える仮面が強力な武器を手に入れたとしたら──

ライラ

「まっ逆さまに……壊れちまいな!」

死の谷──どころか地獄まで一直線に落とす、相手の受身や安全のことなど考えない高速高角度のデスバレーボムが、ジムのリングを揺らした。

「ひゃはははっ! 見たか? 感じたか? 壊れたか?
つっても、もう聞こえてねぇかぁ!? これが私の“地獄落とし”だ!」 *2A

「いひ♪ ベタな名前よね〜」

「うおっ!?」

地獄の底まで叩き落としたはずのスパーリング相手、メロディ小鳩が平気な顔してムクリと上半身を起こしたことに、ライラはおののき、次いでギリリと歯軋りした。その目に憎悪の光がともる。

「テメェ……」

「まあ、怖い顔♪ 技も凄く怖かったわ。 でも、まだちょっと、名前負けかしら♪」

「ナメんなっ!!」

ライラは立てた爪を振りかぶった。
さすがに試合では使わないが、皮膚を引っ掻けば流血させることも容易だ。澄ました先輩の顔に、その凶器を突き立てようとして…… 真田

「そこまでにしとくっスよ! ライラ!」

リング上で始まろうとした暴走を見咎めたもう一人の先輩・真田美幸が、鋭い叱責を飛ばした。

「チッ……」

「なんすか、その舌打ちは! お前、全然反省してないっスね!」

大きく舌打ちして手を引っ込めたライラに、真田はなおも食ってかかる。
正義の味方を気取ってはいないが、曲がったことはもともと看過できないタチだ。 *3A

「うっせぇなぁ、真田先輩。 舌打ちは、私にとっちゃ深呼吸みたいなもんだ。 いちいち突っかかるんじゃねぇよ」

「舌打ちはともかく、小鳩にわざと怪我させようとして! 鏡先輩が殴りこみから戻ってきたら、言いつけるっスよ!」

「言いつけるだぁ? チッ、ガキじゃあるまいし」

と、言いながらも、ライラのトーンは一段下がる。
別に怖いわけではなく、鏡の言うことを聞く気もさらさら無いのだが、気付いたら従ってしまっていることが多い。何か術でも使っているのかと疑いたくなるほど、どうも苦手な相手だった。 *4A

「こっちは新技の練習してただけだぜ。 なんだったら、あんたが相手してくれるかい?」

「……いいっスよ。 ただし、自分は手加減しない。 本気の実戦形式で良ければ、相手してやるっス!」

「…………。チッ!」

真田の本気を読み取って、ライラは激しく舌を鳴らした。
ライラは大口を叩くが、相手の力量を測らないほど愚かではない。

「やめとくぜ。 自分ばっか血ぃ流しても、うれしくねぇや。 あんたの打撃でボコられるのがオチだからなぁ」

二年近く先輩の真田に届く実力は、まだ無い。ライラは自らリングを降りた。
しかし、

「──今はまだ、な。 そのうち、あんたも試合で沈めてやるさ。 真っ赤な血潮の海によぉ! ヒャーハッハッハ!」

最後に真田の方へと振り返り、狂った獣の笑みを見せることは忘れなかった。




《……さあ、挑戦者、森嶋亜里沙の入場です!
高い実力はすでに専門家筋でもお墨付き。 しかし、タイトルには恵まれず、ここまで一度もベルトを巻いてはいない森嶋! 今日、ダークスターカオスに勝ち、「善戦女王」「無冠の帝王」といった肩書きの返上なるでしょうか!?》

「…まったく、不愉快なアナウンスね…」

WWPA

7月のスレイヤー・レスリング巡業、第五戦。 *1B
メインに組まれたのは、WWPA王座を賭けた、ダークスターカオス VS 森嶋亜里沙の一戦だった。

フレイア鏡が半年前に奪われた WWPAのベルト。
二年前と同様、本来の所持団体であるワールド女子の動きが気になってくる頃でもあり、スレイヤー・レスリングは必勝必奪の気構えで、王者・ダークスターカオスへの挑戦者を選んだ。 *2B

過去何度もタイトル戦に挑んでは、『善戦するも敗退』を繰り返した森嶋を避けようとする動きもフロントでは見られたが、

「本人には、これが最後と思ってやるように、と伝えてくれたまえ」

という条件付きで社長が発した鶴の一声で、彼女の挑戦が決定したのだった。

「…言われなくても、わかってるわ…」

背水の覚悟で黒い超新星に挑む森嶋だったが、開始3分、カオスのパワーボムでいきなりピンチに立たされる。

「…ピンチ? こんなもの、大時化の海に比べたら…!」

森嶋は、果敢に反撃を開始する。
相手はパワーとスタミナの権化。 しかし、森嶋もその攻撃力には定評のある選手だ。 *3B
時にカオスの重い一撃によろめきながらも、パワー技に飛び技、的確な状況判断に基づく技の組み立てで、王者・カオスにダメージを与えていった。

「なるほど、グレートな攻めだな、アリサ。 だが──諦めることだ!」

再び森嶋を襲う、カオスのパワーボム。

善戦し、勝ちが見えたところで、相手の攻めを許して敗れる。
過去の森嶋の、典型的な負けパターンだ。
それを知る観客たちは、またしてもか、と頭を抱えて呻き、ロープにもたれる森嶋に、カオスが下す審判を待ったのだが……。

「…知ってるかしら。 私の、海賊の掟ではね…」

フィニッシュに向けて掴みかかろうと伸ばしたカオスの腕に、森嶋の腕が巻かれた。
カオスに対処する間も与えず、体を入れ替えて後ろを取り、スリーパーで締め上げる。

すぐに振り切ったカオスだったが、間合いを取る時間も与えずに詰め寄った森嶋のコブラツイストに巻かれ、苦痛の呻きを上げた。 森嶋

「…諦めて戦いを捨てた者には、死あるのみ、なの…!」

森嶋の戦い方が一変した。

常に軸としてきたパワーファイトを捨て、関節技を主体に飛び技を混ぜる「蝶のように舞い、蜘蛛のように絡める」戦い。
それは、ダークスターカオスにとって、最も苦手とする戦い方だった。 *4B

「…そして、時にはこういう技もね…!」

満を持してのパワー殺法、SSD。
カオスはカウント2.9で返すが、森嶋はすかさずロメロスペシャルに取り込み、カオスの体力を搾り取る。
それでも、まだ残るパワーで強引に脱出したカオスだったが、

「…リングという海に沈みなさい…!」

顔から水面に叩きつけるかのようなフェイスクラッシャーが、カオスの意識を深い海の底へと引きずり込んだ。

森嶋

23分15秒、WWPA王座移動。
新王者は、これが初戴冠となる森嶋亜里沙。

「…海賊の末裔をなめないでね…」

“海賊王女(Princesa del Pirata)”──それは、その名に相応しい、鮮やかなまでのタイトル略奪劇だった。




桜井

「なあ、桜井。本当にいいのか? なにせ、相手が相手だ……片方を一月ずらすくらいは、調整するぞ?」

「問題ありません、社長。 ぜひこのままでお願いします」

7月は、WRERAの桜井千里にとって、激闘の月となった。 *1C

第五戦では、ビューティ市ヶ谷を挑戦者に迎えての IWWF世界ヘビー防衛戦。
最終第六戦では、王者・マイティ祐希子に挑む NA世界無差別級王座戦。

WRERAの誇る二大怪獣、もとい二大エースを相手にしてのタイトルマッチ二連戦には、社長ならずとも無謀との声が上がったが、結局は、千里自身の希望が決め手となって日程が決定したのだった。

IWWF

「オーッホッホッホ! たったの半年足らずでタイトルを失うとは、あなたも不運ですわね? せめて来月に延ばして、一月なりと余命を楽しめば良かったものを!」

「一戦必勝……ただ、それだけです!」

千里 VS 市ヶ谷の IWWF世界ヘビー防衛戦。
実況席には、翌第六戦で千里を迎え撃つ、マイティ祐希子の姿があった。

「どっちが有利かって言ったら……やっぱり市ヶ谷でしょーね。 ムカツクけど、あいつ強いから」

アナウンサーの質問に答えた祐希子の言葉通り、市ヶ谷は強く、試合も市ヶ谷優位に進んでいった。

序盤にいきなり炸裂したビューティボムを皮切りに、ハンマーブローやジャンピングニー、バックフリップなどで攻め続け、千里にペースを握らせない。

千里も得意のハイキックをジャストミート。流れを引き寄せようとするが、市ヶ谷の強大なパワーと強気な性格がなかなかそれを許さない。
15分を経過する頃には、ようやく形勢を立て直した千里が互角の攻防に持ち込んだものの、互角止まりで勝てる状況と相手ではなかった。

「ここで焦っては、駄目だ……!」

「何をしたって無駄無駄無駄ですわ! 私が勝つ、それこそが大宇宙の摂理なのですから!」

耐えて突破口を見い出そうとする千里の希望を打ち砕く、市ヶ谷のサソリ固め。
千里は苦痛に顔を歪め、レフェリーのギブアップコールにも必死に首を振りながら、諦めずにロープを目指す。だが、それはあまりに遠すぎた。

「さっさとギブアップなさい! ……どう、祐希子? この私の強さは……っ!?」

──不意に、千里を締め上げる市ヶ谷の圧力が半減した。
実況席の祐希子が、試合もそっちのけで──実際にはちゃんと見ていたが、市ヶ谷の誤解も無理のないことに、なんとカレーを食べていたのである。

その事実も、それを見て呆然とした市ヶ谷の心境も知らず、ただ千里は九死に一生を得るべく前進し、サードロープを掴んだ。

奇跡に近いロープブレイク。 立ち上がった千里にも、もう後は無かった。 *2C

「全力を、出し切るのみ!」

ミドルキック、エクスプロイダー、そして不知火。
先ほどのショックが大きかったのか、全てを食らった市ヶ谷は、そのまま逆転の3カウントを聞く羽目になったのである。 *3C

「あらー……市ヶ谷の奴、あそこから負けちゃった。 意外に詰めが甘いわねぇ」

自分のせいとは露ほども思わずに、スプーンを口に入れたままの姿で祐希子は呟いた。

「でもま、桜井ちゃんも強くなったわ。 今度の試合で、いつかの約束を果たされちゃったりしないよう、あたしも頑張んないとね!」 *4C

NA

それから数日。
最終第六戦でのマイティ祐希子 VS 桜井千里の NA王座戦は、互いに持ち味を出した熱戦の末、最後はノーザンライトスープレックスで、王者・祐希子が防衛回数を七に伸ばした。 *5C

この試合では、極めて珍しいことに、市ヶ谷が自ら志願して実況席に座り、なぜだか試合そっちのけで熱々のおでんを食べ続けていた。 *6C

ただ、その奇妙な行動が、試合の結果に全く影響しなかったことは確かである。

「ええい! 祐希子のくせに祐希子のくせに! 生意気なのですわ!!」

「わ、ちょっ、市ヶ谷! おでんの具を投げるのは止めなさい! もったいないでしょ!」

WRERAでは時おり見られる祐希子と市ヶ谷の場外乱闘も、この日ばかりはどこか微笑ましいものとなり、会場では最後まで笑いが絶えなかったという。




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■ 注釈(?) ■
*1A4年目1Qに書いたフレイアの兼任コーチは既に解除してますが、「フレイアが師匠役」という妄想設定はそのままにしてます。
*2A7月、難易度9の地獄落としを取得したライラです。
*3A本当は「正義の味方」の藤原やソニック、あとはジャスティス越後(2P限定)の方が適任かとは思います。
*4Aうちのフレイアさん(この月は日本海女子に殴りこみ)はこんな感じの能力を持ってる妄想設定です。
*1B7月のスレイヤーでは、龍子&石川が、ジュディ・コーディ&カオス相手にNAタッグ初防衛を果たしてます。
*2B「二年前」の騒動については、4年目3Qをご覧ください。
*3B似たタイプに育ってきた石川との住み分けとして、森嶋は防御犠牲の攻撃重視、石川はその逆の練習メニューにしてます。
*4B攻撃重視の森嶋は、パワー、関節、飛び、の攻がそれぞれ D,C,B。関節と飛びが苦手なカオス相手だと、カード運次第では無類の強さを発揮できます。
*1C7月のWRERAでは、六角プライベートイベントその2、等がありました。
また、本文ではスルーしてますが、市ヶ谷はAACヘビー十度目の防衛(vs六角。12分29秒、のど輪落とし)も果たしてます。
*2Cもちろん、実際の試合中にゆっこがカレーを食べたりはしてませんが、リング中央でのサソリ固めを体力ゼロで脱した後の桜井に高レベルカードが三連続で来なければ、そのまま負けていたかもしれません。
*3C21分10秒、不知火で IWWF王座初防衛です。
*4C1年目4Q妄想補完その5、あるいは5年目2Qをご覧いただければと…。
*5C16分12秒、ノーザンライトスープレックスでゆっこの勝利です。
*6CSP」おまけディスクによれば、市ヶ谷の好物はおでん、味噌汁、納豆だそうで。
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