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6年目1stQ (4〜6月) Part1 〜 Blue rain or Amber rain 〜

《目次っぽいもの》
実力の不等式[WR]Make up her mind to...[SL]Blue rain or Amber rain[SL]注釈?



リナ

「へい、ムトー! もっと練習しなくちゃダメよ?」

4月。WRERAはダイナマイト・リナと個人契約を結んだ。 *1A

これはコリィ・スナイパーとの契約切れを5月に控え、ジュニア資格を持つ海外レスラーとの契約が急務だったこともある。

ただ、それよりも、千秋、富沢、そして武藤めぐみら若手選手の、ちょうどよいライバル兼教師役となることを期待してのフロント判断であった。 *2A

「めぐみ、おつかれさまー! 結果は残念だったけど、いい試合だったにゃ!」

「堀さん、ありがとうございます。 でも、やっぱり駄目ですね、勝たないと。 いい試合をできた意味が無くなっちゃいます」

「あはは、めぐみらしいね。 その調子なら、リナにリベンジできるのもすぐかな?」

「そうですね……ただ、悔しいけど、今は力の差があります。 リナは強かったですよ。
堀さんも、次の防衛戦は気をつけてください」

「うん! 頑張るにゃん!」

翌月の最終戦で組まれた、AAC世界ジュニアタイトルマッチ。 *3A AAC-J

長期政権を築くテディキャット堀に敢然と挑んだダイナマイト・リナだったが、王者との差は大きかった。

10分経過のアナウンスから間を置かずに試合終了のゴングが鳴り、堀は危なげなく十五度目の防衛戦に完勝したのだった。 *4A

「……あのリナを寄せ付けないなんて、やっぱり先輩たちは凄いわね。
私も、早く追いつくんだ……っ!」




《王者組、敗れるぅっ!!
NA世界タッグ王座をブレード上原&RIKKA組から奪ったのは、サンダー龍子&石川涼美組!
十ヶ月の時を経て、『実力世界最強タッグ』の称号は龍子と石川の手に渡りましたっ!》

4月、スレイヤー・レスリングで行なわれたタイトルマッチは、計三つ。 *1B

うち二つ、メロディ小鳩 VS 村上千春のWWCAジュニア王座戦、
RIKKA&石川涼美 VS フレイア鏡&ブレード上原組のIWWF世界タッグ王座戦は、ともに王者側がタイトル保持に成功。

しかし、最終戦に組まれた最後の一つで、タイトル移動劇が待っていた。 *2B NA-T

NA世界タッグ王座戦は、47分19秒、龍子がジャンピングネックブリーカーでRIKKAから 3カウント。親友・石川とのタッグで、タイトル奪取に成功したのである。

「RIKKA、すまないね……」

上原の言葉に、RIKKAはマスクから出た目を見開き、慌ててかぶりを振った。

今日の試合、上原の動きは切れており、あの龍子をも押していた。
逆転されたのも、フォールされたのも自分。謝るべきは、むしろRIKKAの方だった。 *3B

RIKKAは、言葉少なながらも、上原にそう伝えたのだが……。

「そうじゃない。そういう意味じゃ、ないんだよ……」

「…………上原、さん……?」

リング上では、華やかなベルト授与のセレモニーが行なわれている。
会場中がそちらに注目するその傍ら、RIKKAは、花道の奥へと消えていく上原の背中を、ただ茫然と見つめていた。

そして、5月初旬。雨。
ブレード上原が一人残ったジムに、スレイヤー・レスリング社長が赴く。

──緊急の記者会見が開かれ、ブレード上原が自らの口から引退を表明したのは、その翌日のことだった。




「社長室でブランデーとは……ステレオタイプが過ぎますわ、社長」

あれから二日、雨は時おり小休止を挟みながらも降り続いている。

その雨を眺めながら夜の社長室でグラスを傾けていたスレイヤー・レスリングの社長は、ノックも無しに入ってきた女性秘書に、手にしたグラスを穏やかな笑みとともに見せた。

「君もどうかね? 井上くん」

「いえ。 お酒は得意ではありませんし、仕事もまだ残っておりますので」

「そうか。 では、一人で失礼するよ」

社長はグラスに口を付け、ややあって離すと、軽く息をついた。量はほとんど減っていない。

そこまでを無言で見つめ、それから井上は、社長に声を掛けた。

「社長、上原選手の件、お見事でした」

「どの件だね?」

「引退を納得させた件、ですわ。
社長自ら出向かれても説得は極めて難航、最悪は決裂も──との予測が外れたこと、自分の不明を恥じるばかりです」 *1C

──沖縄に、帰ろうと思っています……。

「……私が説得したわけではないよ」 *2C

「え?」

「いや……」

社長は、もう一度グラスに口を付けた。今度は喉仏が何度か動き、アルコールが嚥下されていく。
それを再び無言で待ってから、井上は口を開いた。今度は、声に軽侮の色が含まれている。

「しかし、精神面は意外と脆かったようですね、上原選手は」

「…………」

「例のスキャンダルのショックと、タイトル戦で敗れ、ついに無冠になったことが効いたのでしょうが……ふふ、老兵はただ消え去るのみ。 手がかからないに越したことはありませんね」 *3C

「──そういう言い方はやめたまえ、井上くん」

「……社長?」

「我々の団体の黎明期。 仮にも、それを支えた一番の功労者だ。 その上原くんに、そんな言い方は失礼だろう」

「……そうですね。 申し訳ありません」

井上は、素直に頭を下げた。
社長はそれを見るでもなく、ただ手にしたグラスの中を小さく波立たせている。

しばらくの間、沈黙が続き……今度も、井上の方からそれを破った。

「社長……少々おかしなことを申し上げても、よろしいでしょうか?」

「……なんだね?」

「実をいうと私は……以前のような見方で、選手たちを見られなくなってきているのです」

「…………」

「ずっと、こう思ってきました。 選手たちは、ガラスケースの中の宝石と同じ。
美しく輝き人々を魅了するが、我々にとってただの商品にすぎない──と。
なのに、そのはずなのに、皆と触れ合っているうちに、そうは思えなくなってしまった……そんな気がしているのです。
──社長、私は……いえ、社長はどう……」 *4C

「井上くん」

「……はい」

「そんなことでは困るな。 我々が情にほだされてどうするというのだね? そのような考えは、事業において百害あって一利なし。 我々は商品の価値を最大に引き出すための戦略と戦術を練るまでだ。 いかに非情になろうともな」

「……そうでした。 申し訳ありません」

井上は先ほどよりも深々と、頭を下げた。

それから井上は、今後の予定などを少し話し合ってから、社長室を退出した。
冷静この上ないその表情に、妖艶とも言える笑みが微かに混ざっていることを、社長は見逃していなかった。

「……いつか、君が私を評した言葉だったな、井上くん」

一人残った社長は、もうこの場にいない秘書に呼びかけるように呟いた。

「他者を欺き、自らを騙してまでも、目的を果たす。 その一点において、私は君にまさっていると……」 *5C

社長は、グラスをあおった。
僅かに残っていた琥珀色の液体を一気に飲み干し、広いデスクの上にグラスを置く。

上原 「そうかもしれんな……」

窓の外で、雨はまだ降り続いていた。




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■ 注釈(?) ■
*1A4月のWRERAは、他に市ヶ谷写真集(「かなり」の売上)、ジムをLv4に。
来島が六角相手にTWWA二度目の防衛(20分07秒、裏投げ)、市ヶ谷がモーガン相手にAAC九度目の防衛(14分35秒、ビューティボム)も果たしてます。
*2Aいずれも、リナより評価値は下。リナは良いトレーニング相手になってくれます。
*3A5月のWRERAは、コリィ契約終了、六角始球式、ホリー・シエラ提携、等。また、千種を参戦させてます。
*4A10分40秒、逆水平チョップで堀の勝利。正直、楽勝でした。
*1B4月のスレイヤーでは、ヘレン契約終了、千春CD(「あまり」売れず…)、上原写真集(「かなり」の売上)、フレイアプライベートイベントその2、ユーリ・スミルノフ提携、等がありました。
*2BWWCAジュニア戦は、28分25秒、ヘッドバットで二度目の防衛IWWFタッグ戦は、24分06秒、RIKKAの不知火でこれも二度目の防衛成功です。
*3BRIKKAが石川に押されたものの、上原が龍子の必カードを必カードで潰し、その後も飛カードで龍子を押す展開でした。ただ、RIKKAにタッチした後、カード運に見放され、最後の最後で合カード1を引いてしまい万事休す、でした。
*1C5月、引退勧告にて上原に引退を決意させています。コーチを外していたこともあって、評価値がかなり下がってました。
*2C引退勧告した 5月、ちょうど上原のプライベートイベントその2が発生。この絶妙なタイミングには驚きました。
*3C上原スキャンダルは5年目1Q。その後 NAタッグ世界王座に就いたものの、ついにそれを失い…
*4C時々出てくる宝石アングル(?)です。過去には、1年目1Q妄想補完その2妄想補完その62年目4Q5年目4Q、などでこっそり登場。
*5C妄想補完その2にてそれっぽい話を出してます。
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