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5年目3rdQ (10〜12月) Part3 〜 他団体を訪ねて 〜

《目次っぽいもの》
他団体を訪ねて[SL]EXタッグリーグプロレス大賞結果注釈?



桜崎 真田

「静香お嬢様、今日は私がお相手いたします!」

「よっしゃあ! 斉藤さん、勝負っス!」

11月。 スレイヤー・レスリングのメイデン桜崎と真田美幸は、新日本女子への殴りこみに出ていた。

桜崎は八島静香、真田は斉藤彰子と、一度ずつメイン戦の機会を与えられた二人。 *1A
ともに格上の選手を相手に辛くも収めた勝利は、最近伸び悩む二人に、自信という名のカンフル剤を与えたのである。 *2A

桜崎 真田

「いやー! 大観衆を前にメイン戦で勝つってのは、気持ちいいっスね、桜崎先輩! 自分、自信もついたっス!」

「私もですわ、お嬢様。
けれど、あのメイン戦は新女さんのご好意。 私たちに、まだスレイヤーでメインを務める実力の無いことは、ゆめゆめ忘れてはいけませんわよ?」

「もちろんっスよ! うちの大先輩たちはレベルが高いから……一日も早く、追いつきたいっス! 来月の日本海さんへの殴りこみも、気合入れていきましょう!」 *3A

「そうですわね。 みんなと慰安旅行に行けないのは、残念ですけど……」

二人の発言どおり、12月は二人による日本海女子への参戦が予定されていた。
団体での慰安旅行に出られなくなる日程のため、取りやめることもできたのだが、二人は経験値を積むためにと半ば自ら志願したのだった。

そして迎えた、12月。 *4A
日本海女子の興行に参加した二人は、あることに大きく戸惑うこととなった。

「なんか……手作り感たっぷりって感じですね、桜崎先輩……」

「…………」

日本海女子では、細々とした雑用はもちろん、会場設営や大道具作成まで、選手がフル参加して作業を行なっていた。

自団体の興行や、以前に参加した新女やワールド女子など大手の興行では、程度の差こそあれ、どこも大部分は専属のスタッフが作業をしてくれていた。
特に自団体──スレイヤーは図抜けて選手が優遇されており、興行中は試合に集中できる環境が整えられている。
スレイヤーでデビューした二人が、そのギャップに戸惑うのは当然といえば当然と言えた。

「……ああ、そんな気を使ってくれなくていいよ。 いくら何でも、お客さんに作業させるほど人手に困っちゃいないって」

手伝いを申し出た桜崎と真田に、日本海女子のトップであるガルム小鳥遊は、巨体とリング上でのスタイルにそぐわない、優しい笑顔で言った。

「いや、でも、ガルムさんっ。そうは言っても」

「……わかりましたわ、お嬢様。何か御用がありましたら、遠慮なく申し付けてくださいませ」

空気を読んだ桜崎は、真田の言葉を遮るように話をまとめて、引き下がった。

だが、人手は明らかに足りていない。
現に、ガルムなどはその体格と林業で培ったコツを駆使して、試合前だというのに三人分にあたるような運搬作業をこなしている。

(……あれでは、ツライわ。 試合でも後れを取るわけよね……)

かつては、あのサンダー龍子と同等とも言われたガルム小鳥遊だったが、今は広スポのランキング上位にも顔を出さず、ワールド女子の十六夜や新女の八島らにも水をあけられている。 *5A

その原因の少なくとも一端が、今の日本海女子の厳しい経営・運営状況にあることは明白だった。

(日本海さんも、私がこの世界に入った頃はワールド女子よりも勢いがあったのに……ブザマを通り越して、哀れね) *6A

そこまで考えてから、桜崎は軽く頭を振って、思考を打ち切った。

他団体の人間のことを気にしてあげるほど、桜崎には余裕も義理もないのだから。

巡業では、桜崎も真田も、ガルムや中森あずみらとメインやセミで試合を組まれた。
会場は小さく、観客も満員には程遠く、演出にもお金はかかっていない。
それでも、プロレスの熱さに何ら違いはなく、観客の声援や笑顔にもまた、何ら違いは無かった。

そして最終戦が終わり、桜崎と真田は、会場の後片付けをする選手たちに笑顔で送り出されて、神戸への帰途についた。

桜崎 真田

「桜崎先輩……」

「どうしました、お嬢様?」

「自分、甘えてたっス! どんなに恵まれたトコでプロレスやれてたか、わかってなくて……今回が、今までで一番、勉強になりました! 明日からまた頑張りますっ!」 *7A

(……はあ。 単純な……)

真田のわかりやすい短絡思考に内心ため息をつきつつ、桜崎はそれをおくびにも出さずに、ニコリと笑って頷いた。この辺りの演技は慣れたものだ。

「そうですわね、お嬢様! 頑張りましょう!」

単なる演技。
そのはずのセリフに、意外なほど想いがこもってしまった気がして、桜崎は自分自身に驚いた。




団体の垣根を越えた最強タッグ決定戦、EXタッグリーグ。

WRERAの社長は、ここ二年と同様に登録選手を相談するため、六角葉月を事務所に呼ぼうとしたのだが……。

「六角……あいつ、そんなに嫌だったのか……?」

先んじて社長の机に置かれた手紙には、六角の筆跡で『今年は若いやつに任せるよ。探さないでくれい』とだけ記されていたのである。 *1B

EXタッグリーグ参加チーム
パンサー理沙子&獅子堂レナ新日本女子
ソニックキャット&菊池理宇新日本女子
十六夜美響&南利美ワールド女子
ガルム小鳥遊&中森あずみ日本海女子
ジェナ・メガライト&キャシー・ウォン海外
ローズ・ヒューイット&ジャネット・クレア海外
サンダー龍子&石川涼美スレイヤー
マイティ祐希子&ボンバー来島WRERA

EX

「おーっと、菊池ちゃんじゃないの。久しぶりね。 元気してた?」

「はい! お久しぶりです、祐希子さん!」

「うきゅ? あー、ゆっこなのさ! お久しぶりさね♪」 *2B

「あら、誰かと思えば、爆食ヒロインのソニックじゃない! えへへ、またカレーの大食い行こうね。 今度は恵理もいることだしさ」

「え? ソニックさんと祐希子さん、お知り合いなんですか?」

「知り合いっていうか、大食い仲間ね。──あ、良かったら菊池ちゃんも行かない? 大食い比べで、負けた人が全額おごりだけどね」

「行きたいですけど……皆さん相手に、その条件はヒドすぎますっ」 *3B

……などと旧交を温めた話はさておき、今年も優勝決定は最終戦に持ち越された。

EX

「おーっと、龍子じゃないの。久しぶりね。 元気してた?」

「……なんか、ないがしろにされてる気がするな。
──ま、いいさ。 先月のシングルでは見事にやられたけど、タッグではそうはいかないよ。 せいぜい覚悟するこったね!」

親友タッグ対決と銘打たれた、WRERAの祐希子&来島組 VS スレイヤーの龍子&石川組による一戦は、龍子&石川組が終始有利に進めるも、決め手を欠いてのフルタイムドロー。
二年連続での再試合突入となった。 *4B

「ちっ、第一戦では足引っ張っちまったしな。 次はやってやるぜ! こういう疲れてる時こそ、筋肉の差が出るってもんさ!」

第二戦は第一戦を上回る激戦となった。
互いにカット、ニアフォール、すんでの逆転技タッチ、返し技タッチ、などで観客に息つく暇さえ与えない名勝負。 *5B
しかし、最後は本当に「筋肉の差」が出たのか、来島が STOで石川をフォール。
満場の拍手の中で、WRERAの二人が表彰台に上がったのだった。

「へへっ。プロレスは筋肉ってことが証明できたぜ!」




この年のプロレス大賞受賞者は、以下の通り。

ベストバウト:ジュニアテディキャット堀 VS コリィ・スナイパー
ベストバウト:タッグパンサー理沙子、獅子堂レナ
 VS ソニックキャット、菊池理宇
ベストバウト:シングルマイティ祐希子 VS ビューティ市ヶ谷
最優秀新人武藤めぐみ
最優秀外国人ダークスターカオス
最優秀選手サンダー龍子

めぐみ

「ありがとうございます。
でも、私が本当に欲しいのはトップのベルトです」

新人賞は、満場一致で WRERAの武藤めぐみ。
すでに新人離れしたファイトを見せる少女には、早くも次期エースとの声も上がっている。 *1C

最優秀選手は、マイティ祐希子を僅差で退けたサンダー龍子が三年連続の受賞。 *2C

ベストバウトについては、今年も選考基準に疑問の声は上がったが、取り立てて大きな抗議運動などは無く、落ち着いた年越しを迎えることになった。 *3C




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■ 注釈(?) ■
*1A何のてらいも無く「第二部」の開始です。
桜崎vs八島は、八島のパが+8、桜崎の極が+9と、得手不得手が噛み合った試合。斉藤vs真田は打撃対決。斉藤の必カードを受けで止めたのが勝敗分岐点でした。
*2A二人とも資質がCということもあって、なかなかスレイヤーでは上位に割り込めません。
*3A二人の評価値は40ほど真田が上。ただ、その上の石川とは200の差が…。
*4A12月のスレイヤーは特にイベント無し。バカンスでは、森嶋が登場してます。傷だらけ。
*5A1年目などは TOP5に名を連ねていたガルムさんですが、年齢による衰えもあって厳しいことになってます。
*6A2年目、3年目あたりはワールド女子より好調だったのですが…後進がなかなか育たなかったことと(資質B以上が氷室だけ。いまだガルムが団体トップ)、主力のオーガ朝比奈がワールド女子に引き抜かれたことが大きかったのでしょう。3000会場も埋められず、時おり赤字も見える厳しい経営状態です。
*7Aちなみに、ワールド女子と違って、今の日本海女子は殴りこみお礼参り条件を満たしていません。選手をこちらに派遣してくれないので、ついつい殴りこみを避けがちです。
*1B12月のWRERAは、めぐみFC、桜井プライベートイベント。桜井は、「守るものを持つ」祐希子や来島の活躍に幾分思うところがあった…とか?
バカンスでは市ヶ谷様が登場してます。…なんすか、コレ。
*2Bゆっこと菊池については、2年目4Qで少しだけ接点書いてます。ソニックは、名前だけですが1年目3Qで登場。その後も新女殴りこみなどで会っているってことでよろしくです。
*3BV1」ではチェルシー羽田のサイフを壊滅させた、ゆっこ&来島。これにソニックが加われば…菊池に太刀打ちできるわけありません。
*4Bこのレベルでフルオート観戦すると、高い確率で時間切れになります。
*5B再試合もフルオート観戦でしたが、かなり盛り上げる試合でした。
*1Cさすがの資質S。富沢には評価値でほぼ並んでしまいました。来年には抜くでしょう。
*2C僅差で…と書きましたが、評価値でも差は20ほど。資質差で逆転か、それとも「長寿」龍子が粘るのか?
*3C堀VSコリィがひそかに三連覇達成
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