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4年目2ndQ (7〜9月) Part1

《目次っぽいもの》
雨の日の決意[WR]再戦の市ヶ谷[WR]区切り:そして前に[WR]注釈?



札幌には無いはずの梅雨。
それが来たかと思えるほど雨の日が続く、7月のある日。
WRERA社長秘書・霧子は、事務所でマイティ祐希子と向かい合っていた。

ゆっこ

「半年前とは、あなたの立場が違うのよ、祐希子さん。 WWCA世界王者として新日本女子さんに殴りこむ──それがどういうことか、わかってるの?」 *1

「うん。 じゃなくて、はい。 わかってるつもりです」

「新女さんは、理沙子選手との WWCAタイトルマッチを喜んで組んでくれるでしょうね。 でもそれは、あなたの希望だからじゃなく、世界王座を奪う大チャンスだから。 飢えた狼たちが待つアウェーに、お土産持参でノコノコ訪れるようなものなのよ?」

「わかってます。 それでも、あたしは戦ってきたいんです。理沙子さんと。 そうしないと……」

「そうしないと?」

「──あたしは、先に進めない。
このままじゃ、市ヶ谷やカオスを迎え撃つこともできない。 あんな勝ち方で王者になってから、ずっと悩んでて……あたし、ようやく答えが出たの」 *2

いつの間にか、祐希子の言葉から慣れない敬語は消えていた。 霧子はそれを咎めない。

「理沙子さんに、あのパンサー理沙子に勝つことで、あたしははじめて誇りを持ってベルトを腰に巻けるって。 他の誰でも、たぶんダメ。 今の、ううん、プロレスラーになった時から、あたしにとってそれは理沙子さんだったんだよ」

「……あなたと理沙子さんの関係は社長から聞いているわ。 でも、会社として、あのベルトを万が一にも流出させるわけにはいかない。 負けたらどうするつもりなの?」

「あたしは……負けない。 今度こそ本当に、理沙子さんを超えてみせる!」

質問への答えになっていない。 霧子はそう口に出そうか迷って、結局止めた。
おそらく祐希子はその答えを用意できないし、決して用意しないとも思ったからだ。

「いいでしょう。 意気込みだけは、よくわかったわ。
──さて、社長。 というわけなのですが、どうなさいますか?」

「……そこで、こっちに振るかい? 霧子くん」

無茶振りもいいところだ。

しかし、苦笑の裏側で、社長の腹はすでに決まっていた。
霧子もそれは察しているだろう。 だからこその無茶振りだった。

そしてWRERA女子プロレス社長は、一つの決断を口にした。




「ふう。なぜか世間では、AAC世界王座よりもWWCA世界王座の価値が高いように言われてますわね……まったく、不愉快ですわ!」 *3

AAC

WRERA 7月興行最終戦。 *4

AAC世界ヘビーのベルトを燦然と腰に輝かせて、ビューティ市ヶ谷は、リングにダークスターカオス──最強の挑戦者を迎えていた。

「あの忌々しい祐希子に、直接見せ付けられないのは残念ですけど。“前”WWCA王者のあなたを今度こそ叩きのめし、AAC……いえ、この私こそが格上なのだと、証明してさしあげますわ! オーッホッホッホ!」

「格上か……フッフッフ。果たしてどちらがそうなのか、思い知らせてやろう」

自信と不遜さでは相譲らない二人の再対決は、ゴング直後から探りあいなど何も無い、全力のぶつかり合いとなった。

「我が破壊の鉄槌を、喰らうがいい……!」

初手のヘッドバッドで市ヶ谷を流血させ、続く必殺のパワーボムで、一気に戦いの趨勢を握ろうとするカオス。しかし、市ヶ谷も負けてはいない。

「あなた如きに、祐希子に負けたあなた如きに! 二度も負けるわけにはいきませんのよ!」

伝家の宝刀、ビューティボム。そして、前回の敗戦と祐希子のカオス戦から得た成果として、ヘッドシザースホイップやギロチンドロップといった首を基点とした攻めでカオスの苦手を突いていき……。 *5

「一つ……! 二つ……! そして三つめ! これでおしまいですわっ!!」

《こ、これは、まさかのパワースラム三連発、ハットトリック! カウント2.5、2.8と凌いできたカオスでしたが、最後はついに力尽きたぁ! ビューティ市ヶ谷、WWCA王座戦の雪辱を今日ここで晴らしましたっ!》 *6 市ヶ谷

「オーッホッホッホ! 生まれついての王者である私が、ベルトを失うなどありえませんの。 これこそ当然の結果ですわ!」




(デビュー前に会ったあの子が……。 ふふっ、月日の経つのは早いものね……)

WWCA

新女 7月興行の目玉は、単身殴りこんできた王者マイティ祐希子が自ら希望した、パンサー理沙子とのWWCAタイトルマッチ。

1月の一騎討ちでは、ほぼ互角の展開の末に祐希子が勝利。
しかし、理沙子は、敗れてなお強し、の印象を観客にも祐希子にも残していた。

「理沙子さん……ずいぶんと、落ち着いてますね。
ひょっとして、あたしなんか眼中に無い、なんて思ってます?」

「あら、そんなに尊大に見える? ただ、逆ならまだしも、この展開は予想していなかったわ。
──まさか、あなたの持つベルトに、私が挑戦することになるなんてね?」

ゴングが鳴った。
負けられない。ベルトの重みゆえか序盤を慎重に動こうとする祐希子に対し、理沙子は最初から激しく打って出た。

“リングの女王”、パンサー理沙子には似つかわしくない、しかし、挑戦者としてはこの上なくピタリとはまった戦い方。

「私もね……最初から“女王”だったわけじゃないのよ!?」

激しいラッシュから、得意技の一つ、裏投げに繋げ、早々に試合を決めようとする理沙子。超満員の観客席からも、熱いコールやチャントが理沙子の背中を押す。 *7
ここは、新日本女子のホームグラウンドなのだ。

「次は飛ぶの? 投げるの? それとも……もう終わりかしら?」

「へへっ……こうでなくっちゃ。 こうでなくっちゃ、あなたを倒す意味、無いもんね!」

吹っ切れたように笑った祐希子は、彼女本来の戦い方──炎を思わせる熱い闘いぶりに軌道を修正。
理沙子を迎え撃つのではなく、挑むように向かっていく。

「私の全身全霊の炎、受けてみなさい!!」

マットに荒れ狂う、祐希子必殺のJOサイクロン。
観客の悲鳴の中、何とか2.5で肩を上げる理沙子。
だが、祐希子は決して詰めの甘いレスラーではない。 そのままフィニッシュに向けての組み立てを計るが……

「まだよ……。 まだ、終わりじゃないわ……っ」 *8

フェイスクラッシャー、シャイニングウィザード、ノーザンライトスープレックス……祐希子の絶え間ない攻めをニアフォールとロープブレイクで耐え凌ぐと、理沙子はついに、息をついた祐希子の隙を捉えた。

「強い者が勝つ! ただ、それだけなのよ!」

危険な角度からの裏投げに、逆転勝利を信じて立ち上がる観客。 しかし、祐希子も決して譲れないものを持ってリングに上がっている。

「あたしは勝つんだ……そう約束したんだから!」

ロープを掴んでカウントを止めると、続く理沙子の代名詞、キャプチュードをキックアウトし、フェイスクラッシャーからムーンサルトプレスに繋ぐ。
それでも理沙子は連続2.9カウントで望みをつなぐが、最後は祐希子渾身のシャイニングウィザードが、理沙子の意識を勝利ともども奪い去った。

27分49秒、マイティ祐希子、WWCA王座初防衛に成功──。

理沙子

「負けたわ、祐希子」

「理沙子さん。あたし、あの……」

感謝、決意、喜び、達成感。その何かを告げようとした祐希子の口を、理沙子は、そっと添えた人差し指一本で止めた。
ゆっこ

「何も言わないで。 だけど、一つだけ約束してくれない?
このまま立ち止まらないで、誰も追いつけないくらいに前に前に進んでいくって。 ね、祐希子?」 *9

「……わかりました。やってみせますよ。 あたし、約束は必ず守る主義ですから!」




*13年目4Q以来のゆっこ新女殴りこみ。本っ当にしつこいようですが、ゆっこと理沙子とは因縁設定付きです。
*24年目1Qでの「納得いかない大逆転勝利」から引きずってる…という妄想設定でよろしくです。
*3初期タイトルホルダーが、カオス(評価値1360) > チョチョカラス(評価値1153) なために、どうしてもこんな感じに。
*47月のWRERAは、化粧品スポンサー(ゆっこ)、来島FC、堀特撮映画(お断り)、市ヶ谷冒険映画(お断り)、ゆっこ一日署長、もありました。
*5飛び技に弱点(飛防6)を持つカオスには、飛攻A止まりの市ヶ谷でも、かなり有利に戦えます。
*616分49秒、パワースラムで市ヶ谷 AAC四度目の防衛
ジャーマンでもないのに「ハットトリック」などとは言わないでしょうが…。
*7理沙子さんといえばキャプチュードですが、COMは例によってもう一方の必殺技である裏投げばかり使ってきます。
*8理沙子の試合中体力減少時のセリフ。これが真に迫る、理沙子さんの粘りでした。女王の意地を見た気がしてます。
*9ここのセリフは「V1」での理沙子VSゆっこ(アジアヘビー)から部分的に拝借してます。
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