「よっしゃあ! どうだい、リリィ!? 俺のナパームラリアット……もう、決め技じゃないなんて、言わせねーぜ!」
11月のWRERA最終戦。
セミファイナルのボンバー来島VSリリィ・スナイパー戦は、『因縁の相手』リリィから初めて3カウントを奪うという、ノンタイトルながら、来島にとってはベルト並みに価値ある一戦となった。 *7
「……ハンッ。一度勝っただけで調子に乗ってもらいたくないけど──確かに、一年前とは見違えた。今日だけは、素直にオメデトウ、だね」
「へへっ。今日は、あんたたち姉妹にはアンラッキーな日になりそうだな。コリィも、市ヶ谷はともかく葉月さんには勝てないだろうからさっ」
メイン戦のAAC世界タッグ選手権は、前月のシングル戦で市ヶ谷がコリィを圧倒したことや、RIKKAとコリィが急造タッグということもあって、王者組の楽勝が予想された。
ところが、蓋を開けてみると──
「ええい、ちょこまかと! もうちょっと腰を据えて相手なさい!」
「落ち着きなって、市ヶ谷っ。敵さんのペースにハマるだけだよ!?」
スピードだけでは序盤はともかく後が続かないと思われたが、RIKKAもコリィも、投げや打撃を空中技に織り交ぜて相手を翻弄。特に、市ヶ谷のパワーを封じるべく、ロープワークと小刻みなタッチでの幻惑を繰り返す。
それでもさすがに終盤は、葉月が試合を落ち着かせ、あと一歩で市ヶ谷の勝利というところまで迫るが……
「ロックオン完了よ、RIKKA!」
「…………もらった……!」
RIKKAの不知火から、コリィのムーンサルトプレスへの流れるような連携。
市ヶ谷、まさかの逆転フォール負け──観客が息を呑む中で、かろうじて市ヶ谷の肩が上がった。カウントは2.9。
「許しませんわ……ひざまずいて、許しを請いなさい!!」
勝利を確信した直後の油断。跳ね除けられて転がり、身を起こそうとしたコリィに炸裂する、市ヶ谷のシャイニングウィザード。
結果は王者組の勝利だったが、決して順当勝ちとは言えない薄氷の勝利だった。 *8
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