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2年目2ndQ (7〜9月)

《目次っぽいもの》
映画出演[SL]決め技[WR]カルチャーショック[SL]意識[SL,WR]注釈?



7月。スレイヤー・レスリングの巡業は、上原&龍子の王者組が、元王者・ローズ&ジャニス組を返り討ちにした GWAタッグ王座選手権の激戦で、その幕を閉じた。 *1

それからわずか、数日の後。
短いオフを終えてジムに顔を出したフレイア鏡は、二人の同僚・RIKKAと石川の姿を広い部屋の隅に見つけて、首をかしげた。

石川

「RIKKAちゃん〜。元気だしてくださいっ。ね?」

「…………かまうな……」

壁に向かって体育座りをしたRIKKAと、その彼女を何やら励ましている石川。
明らかに何かあったとしか思えない光景に、鏡の好奇心──というよりむしろ嗜虐心が大きく刺激された。

「なにをやってらっしゃいますの?」

「あ、鏡さん。それがですねえ……」

と、石川が始めた説明によれば、準主役級の役どころでRIKKAが出演した冒険映画が先日ついに公開されたものの、これが見事なまでの大ゴケ発進。ヤマもオチもない展開と陳腐な演出は、ネットや映画誌でもかなり叩かれているのだという。 *2

「私も見たんですけど、RIKKAちゃんのアクションは悪くなかったんですよ? でも、RIKKAちゃんは自分の力不足だって、落ち込んじゃってるんです」 *3

フレイア 「なるほど、そういうことですのね」

得心がいった鏡は、石川に向けて片目をつむるとRIKKAの傍まで歩み寄った。その顔にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいるが、背後の石川は気付かない。

「確かに、あなたの力不足ですわね、RIKKAさん」

「…………!……」

「ちょ、ちょっと? 鏡さんっ!?」

「ご存知のように、私も以前、映画に出演しましたの。率直に言って話も演出も主役の演技もB級でしたが、それでもかなりヒットしましたわ。その差がどこにあるか……それを考えてみると、どうなります?」 *4

「…………挑発か……?」

「違いますわ。私にあって、今のRIKKAさんには足りないものがある。それを教えて差し上げたいのです……今、ここで」

そう告げた鏡がRIKKAの耳元で何かを囁くと、RIKKAはゆっくりと立ち上がった。そのまま、どこか覚束無い操り人形のような足取りで、鏡に導かれるまま更衣室へと消えていく。 *5

「……え? え? 鏡さん? RIKKAちゃん?」

「ウフフッ、楽しみにお待ちなさいな」

いきなりの展開にただオロオロとする石川をジムに残して、鏡はドアを閉めた。
──待つこと、数分。

「さあ、できましたわ」

声とともにドアを開いた鏡がジムに戻る。その後ろに続いたRIKKAの姿を石川が目にした時──

「きゃあああああああ〜っ!?」

ジム中に鳴り渡った石川の悲鳴は、どこか嬉しげな、嬌声ともとれるような響きだった……。

数時間後。
石川の声を耳にしてジムに駆けつけた社長秘書・井上と、彼女がそこで体験した一部始終の報告を受けたスレイヤー・レスリング社長は、どちらもどこか疲れた顔で、決定したばかりの今後の方針を確認した。

「……今後しばらく、選手の映画出演は禁止ということで。よろしいですか?」 *6

「ああ。そうしてくれたまえ……」




北国・札幌といえど、8月は暑い。
そして、その札幌に本拠を構えるWRERA女子プロレスでは、夏よりも熱い選手が一人、特訓に励んでいた。

「よっしゃあ! 『ナパームラリアット』──ついに、完成だぜ!」 *7

「やったね、来島ちゃん! 私も、特訓に付き合った甲斐があったにゃん!」 来島

「おう! これも、タイトルマッチが近いのに俺のワガママに付き合ってくれた、寮長のおかげだぜ。ありがとな!」 *8

男らしい、とさえ言える来島の笑みに、堀も屈託の無い笑顔と、称賛の拍手で応えた。それが嬉しくて、来島は誇らしげに胸を張る。

「ロープに振って、すれ違いざまに一瞬の大爆発! へへ、やっぱりブルファイターの決め技といえば、ラリアットだからな!」

「──決め技?」

突然、横から割り込んだ女性の声。
初めて聞くその声の正体よりも、その口調に込められた嘲りの感情を見逃せず、来島は誰何の声を上げた。

「誰だよ、あんた!?」

「誰だ、か。まあ、コーチみたいなものかな」

突然ジムに現れた、帽子を目深にかぶった外国人女性は、何を思ったかリングに上がり、大胆にも来島を挑発した。

「早速ひとつコーチしてやるよ。お前のラリアットを受けてやる。決められるものなら決めてみな」

「!! 上等だっ! くらえ、ナパームラリアットぉ!」

ロープに振った来島と振られた女性がロープから跳ね返ったところで、女性は足に力を込めた。減速するためではなく、加速のために。

「お前のロックオンは──甘いのさ!」

加速、急制動、そして反転。女性が繰り出したのは、まさかのロープワークからのダイヤモンドカッターだった。 *9
練習用のリングを大きく揺るがし、来島がうつ伏せでマットに叩きつけられる。

「うぐっ! そ、そんな……」

「勉強になっただろ、ガール?」

落ちた帽子を拾い上げる女性。その顔を見上げて、来島は驚愕した。

「あ、あんた……! リリィ・スナイパー、なのか!?」

「ハハン、この国でも知ってもらえてるとは光栄だ」

実の姉妹による世界屈指のタッグチーム、“スナイパー・シスターズ”。目の前にいるのは、その一人、姉のリリィ・スナイパーだった。 *10
アメリカのWWCAで戦う彼女が、なぜここに──その答えは、新たにジムに入ってきた人影が握っていた。

「──おや? もう来てたのかい、リリィ?」 六角

「ヘイ、ハヅキ! 遅かったじゃないか」

「あんたが早すぎんだっての。しかもその様子だと、うちの若いのに早速ちょっかい出してくれたみたいだね。ったく」

葉月によれば、妹・コリィが怪我で長期欠場している間に、姉妹とWWCAとの契約が切れてしまったらしい。 *11
アメリカ時代に姉妹と親交のあった葉月がそれを知り、社長に提携契約を進言。自らも動いて、リリィを呼び寄せるのに一役買ったのだという。 *12

「世界レベルの選手が来れば、お客さんが喜ぶのはもちろん、私たちにも得がある。来島なんか、早くも喜んでくれたみたいじゃないか?」 *13

「……ええ。喜びましたよ。とってもねっ」

来島は、ゆらり、と立ち上がると、リングを降りたリリィに指を突きつけ、そして宣言した。

「覚悟しときな! あんたが日本にいるうちに、きっちりあんたを倒してやるよ! この俺のナパームラリアットでな!」 *14




札幌で、来島がリリィにダイヤモンドカッターをくらったのと、きっかり同時刻。
神戸にあるスレイヤー・レスリングの選手寮では、一人の新人レスラーが文字通りその門をくぐっていた。 *15

真田

「はわー! すごい寮っスね。マンションじゃないっスか!」

他団体のそれとは一線を画す、スレイヤー・レスリングの選手寮。新人テストに合格したばかりの練習生・真田美幸は、その立派さに驚いていた。 *16
築浅の鉄筋造り、清掃の行き届いた内装、充実した最新設備。
──そして、ロビーで出迎えてくれる召使いの少女。

「へ? 召使い!? か、家政婦さん?」 桜崎

「メイドですわ。お帰りなさいませ、お嬢様」

「お、お帰りなさいって、自分、初めましてっス!」

「ええ。存じておりますわ。これからよろしくお願いいたしますね、真田のお嬢様?」

いかにもメイド風な衣装ではなく私服ではあるが、優雅な物腰はまさしく貴族に仕える侍女のそれ。
自らをメイドと名乗るその少女に促されるまま、真田は自室までいたれりつくせりで案内された。

「いやいや、いいっスって! 自分でやりますから! 年上の人にそんな!」

「遠慮なさることありませんわ、お嬢様。これでも結構力持ちですのよ」

恐縮しながらも、メイドさんならそれがお仕事だし、手伝ってもらうのもいいか…と思い始めた真田。
その少女の仕事が、メイドではなく自分と同じレスラーで、一ヶ月とはいえ先輩にあたる、メイデン桜崎こと桜崎美咲だと真田が知るのは、もう少し後のことであった。 *17

「この後は、ジムにてさっそく練習の予定です。楽しみですわね、お嬢様♪」




「上原さん、そろそろ出発だよ」

上原 「ああ。今行くよ」

サンダー龍子の掛けた声に、ブレード上原は読んでいたスポーツ紙を置いて立ち上がった。
寸前まで読んでいた記事の中身を頭から振り払うように、軽く首を振る。

「まさに互角、か。本当に私があんたに肩を並べられたのか──できれば、直接確かめてみたいもんだね。理沙子……」

女子プロレスに力を入れる広スポこと広域スポーツでは、定期的に選手の実力ランキングトップ10なるものを発表している。 *18
タイトルの有無や人気によらず、独自の視点と分析によって「評価値」を算出しての実力ランキングは、なかなかに的を射ているということで、コアなファンにも概ね受け入れられていた。

ここしばらくのランキングを盛り上げているのは、首位を争うパンサー理沙子とブレード上原のデッドヒート。 *19
今号の広スポでは特集を組んで二人を比較したのだが、結果「まさに互角」との評定が下されたのだった。

「まさに互角、か。できれば、もう一度戦ってみたいものね、京子……」 *20 理沙子

東京と神戸。遠く離れた空の下で、理沙子もまた、かつての同僚に想いをはせていた。

上原と同様に軽く首を振ってから、手にした広スポを閉じようとした理沙子は、ふとあることに気付いて、その動きを止めた。

「ランキング十位、マイティ祐希子……」

ランキング初登場、WRERA期待の若手、といった簡単な寸評のみで扱われたその名を見て、理沙子は一度目を閉じ、そしてそれから、柔らかく微笑んだ。

「あなたは、覚えてくれているかしらね? あの日のことを……」 *21


「ふぇ……くしゅんっ!」

「ほら、言わんこっちゃない。上着あった方がいいって言っただろ? 祐希子」 *22

「寒くはないんだって。誰かの噂かなあ……ま、いいや。それより早くしてよ、恵理。カレー食べに行くわよ、カレー!」

「へいへい。おーし、じゃんじゃん食うぞぉ!」




*129分10秒、ジャニスへのプラズマサンダーボムで決着。
この頃、スレイヤーは4000〜5000席会場が安定して埋まるようになってます。
*2…と書いていて、自分の胸が痛いのは何故なんでしょうね…(汗)
*3「義理」持ちで責任感も強そうなRIKKAさんです。
*4この年の5月、フレイア出演の恋愛映画はヒットしてます。
*5…うちの鏡さんは、何かこんな感じの妄想設定スキルをお持ちみたいです。
*6まあ、練習全潰しの割に、実入りもそれほど多くないので。
7月は、WRERAにてゆっこの特撮映画交渉もありましたが、当然お断りしてます。ゆっこにはCMの打診もあり、こちらは受諾。
*78月、来島がナパームラリアット取得です。この辺の話の焼き直し(本当は逆)は、妄想補完その7でも書いてます。
*8この月の堀VSターニャ・カルロスのAACジュニア防衛第三戦は、11分46秒で堀のタイトル防衛でした。
*9ロープに振ってダイヤモンドカッターなんて、普通はありえない…と思います。
*10『バンダナしてるマッチョなあたし』こと姉のリリィ『ロングヘアのキュートな私』こと妹のコリィ
ここでは顔を隠す帽子のため、バンダナは無いでしょうけど。
*11…てな感じの妄想設定でございます。
*128月、WRERAが海外フリーのリリィ・スナイパーと提携。
この月は他に、市ヶ谷様プライベートイベント、市ヶ谷FC、六角の青春映画打診(お断り)、がありました。
*13団体評価値が足らず、AACからカラスが来てくれないWRERAにとって、過去最強の外国人レスラーであるリリィ(評価値1110)の参戦は122APを払う価値がありました。
まだまだ市ヶ谷やゆっこは軽くあしらえてしまう葉月さんにとっても、リリィは久々の「互角に戦える相手」です。
*14「V2」以来(?)の因縁あるリリィ相手ですが、現時点では全く歯がたたない来島さん (評価値800ちょい)。契約期間二年の間には追いつけると思うのですが…さて。
*158月のスレイヤーでは、石川のFC、上原のCM、がありました。
*168月、真田をテストで獲得。ちなみに15歳。
*17真田より一月早い7月、桜崎をスカウトで獲得してます。ちなみに18歳。
*18レッスル界ではおなじみの広スポを勝手に拝借。…結構長い間、なぜか「広島スポーツ」だと思ってました。
*192年目に入ってから、評価値は理沙子さんと上原さんが1〜10差とかでまさに抜きつ抜かれつ
資質B&平均&プレイヤー操作&24歳の上原さんと、資質S&長寿&COM操作&24歳の理沙子さんは、ちょうど同じくらいの成長をするようです。
*20旧作を尊重?し、上原さんは「京子」表記でいきます。
*21入団時にゆっこは理沙子と因縁ありの妄想設定です。良かったら妄想補完その1をよろしくです。
*229月のWRERAは、桜井FC設立。
スレイヤーは、森嶋FC、龍子SF映画(お断り)、上原の一日署長、がありました。
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