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2年目1stQ (4〜6月)

《目次っぽいもの》
春の嵐[WR]ベルトを巡って[SL]写真集を巡って[WR]注釈?



団体設立から1年が経った、WRERA女子プロレス。
旗揚げ当初は「新人」だったレスラーたちも、その肩書きがそろそろ取れてくる頃で、各々が更なるステップアップを目指していた。

「うわあぁぁっ」

どこか、もののあわれを感じさせるような悲鳴がジム中の視線を集めた直後、それはリングを揺るがす衝撃音に取って代わられた。続いて響き渡る、見事なまでの高笑い。

「オーッホッホッホ! これが本邦初公開、私の最強にして絢爛、最高にして華麗なる必殺技、ビューティボムですわ!」 *1

トレーニングに励んでいた他の選手たちの唖然とした視線を一身に浴びながら、リングの上に立つビューティ市ヶ谷は誇らしげに胸を張った。

市ヶ谷 「見ましたか、下々の皆さん? これでどんな相手も足下にひれ伏すこと間違いなし! 私の全国600億人のファンも大絶賛ですわよ、オーッホッホッホ!」

「……おい、市ヶ谷っ」

「あら、来島さん。まだいましたの?」

「それが、リングに引っ張り上げていきなり大技かました相手にかける言葉かよ!? もうちょっとで舌噛むとこだったぞ、舌!」

「うるさいですわね。あなた最近、祐希子に似てきましてよ。レスラーたるもの、いついかなる時でも油断は禁物だと、身をもって教えてさしあげたのですわ」

「どういう理屈だよっ!」

まだまだ続くリング上の漫才だが、それを早々に見限って基礎トレーニングを再開したのは、デビューを控えた千里だった。そんな彼女に、葉月が声をかける。

六角

「よっ。精が出るね」

「葉月さん」

「いいよ、そのままで。それより、すまないね。来て二ヶ月で、もうデビュー戦なんてさ」 *2

「いえ、むしろ願ったりです。皆さんの足を引っ張らないか、不安もありますが」

「あんたなら大丈夫っしょ、身体は結構できてるし。ま、いきなり勝てるなんて思わない方がいいけどさ。肩肘張らずにやるんだね」

「全力を尽くします」

「だから、肩肘張んなさんなって」 *3




4月のスレイヤー・レスリングは、本拠地・兵庫にて大一番を迎えた。 *4
GWA-T
ローズ・ヒューイット&ジャニス・クレアに、ブレード上原&サンダー龍子のタッグが挑む、GWAタッグ王座選手権。

団体初の世界タイトルを手中にできるかというのはもちろん、挑戦者たるブレード上原とサンダー龍子にとっては、別の意義も持つ試合であった。

同月に制定を発表した、団体最高位となるスレイヤー無差別級王座。
上原と龍子には、二人が勝てば、このベルトの王者決定戦を二人で行なうという話が事前に伝えられていたのである。 *5

そして、27分48秒。ブレード上原のフランケンシュタイナーによって、GWAタッグベルトは見事に挑戦者組の腰に巻かれたのだが──
龍子

「団体王座の決定戦は白紙!? どういうことだよ、社長!」

「約束を破るようですまんが、まだ時期尚早ということだよ。今の君ではな」

先のGWAタッグ戦、龍子はヒューイットに歯が立たず、ほぼ上原の独力で勝ったようなものだった。 *6
上原と龍子の間には、まだ大きな実力の溝がある。社長と井上が前言を撤回したのは、そう判断した結果だという。

納得いかない龍子は上原にも相談するが、上原の反応は龍子を冷たく突き放すものだった。

「今のあんたじゃ仕方ないでしょ。誰が勝つか決まってるタイトルマッチなんて、やる意味無いんだから」 上原

言葉の意味を正確に把握するだけの時間を置いて、龍子は息を引いた。その全身を包む怒気が静かに膨れ上がる。

「随分と……言ってくれるじゃないか、上原さん?」

地の底から響くような声。それを真正面から受け止めた上原は、不敵に微笑んだ。

「あんた、私に勝てるって、本気で思ってるの?」 *7

「………!」

いきがってみても、実力の差は大きい。突きつけられた冷徹な現実に押し黙る龍子に、しかし上原はむしろ優しく語った。 *8

「思うに、社長や井上さんは、あんたに期待してるのさ。だから、私とヒューイットでの決定戦じゃなく、ベルトを空位にしておく。それだけ見込まれてるってことなんじゃない?」

上原の指摘は的外れではなかった。
ただ、社長や秘書の井上にとって一番重要だったのは、あくまで性急に決定戦を行なうことで大きく損なわれる、龍子と団体ベルト両方の「商品価値」だという点を除いては。 *9

「傷のついた宝石は輝きを失い、それは取り戻せん。次代のエースもベルトの権威も、大切に守らんとな……」




6月。WRERA女子プロレス興行前、休憩中のひとときのこと。 *10

「ほうほう。なかなか大胆なポーズですなあ」

「うんうん。この表情なんか、そそるわよねえ」 堀

「ちょっとお! 来島ちゃんもゆっこも、恥ずかしいからやめてって! なにをそんな風にかぶりついて見てんのよお!」

「なにって、寮長の写真集じゃない」

「そういう意味じゃないにゃん!」

女子プロレスが全国的な大衆人気を獲得しつつあるこのご時世、試合以外で選手たちの露出を求める声も、日に日に高まってきていた。 *11
WRERAにおいても例外ではなく、営業からの強い要請もあって、頑固な社長も「練習がおろそかにならない程度」のイベント活動は許可するようになっている。 *12

堀の写真集も、それほど大作ではなく近場で撮影されたものだったが、猫と戯れる写真を中心としたことが功を奏したのか、発売以来、予想外の売れ行きを見せていた。 *13

もっとも、それが面白くないという人間も若干名ながら存在しており……

「霧子さん」

「……なにかしら、市ヶ谷さん」

「私の写真集は、いつ撮影に入るんですの?」

「出版社から打診があれば、すぐにでも──って、社長がおっしゃってたわよ」

「打診など、今まで何度もあったはずですわ! それを全部断っておいて、なぜあの猫又娘だけ、ちゃっかり写真集を出していますの? 納得できませんわ!」 *14

「そ、それは、タイミングの問題よ。出版社側にも都合があることだし……」

「タイミングも何もありませんわ! 出せば大人気で超絶売れ行き間違いなしの、この私の美貌と魅力と気品を収めた写真集。今すぐにでも出すべきです! それが団体のためですのよ! わかりましたわね!?」

「そ、そうね……話はしておくわ」

つい昨日、市ヶ谷に届いた映画出演の話を社長が言下に断ったことは、彼女には言わずにおいた方がいいだろう。それこそが団体のためだと、霧子はそう判断した。 *15




*14月、市ヶ谷がビューティボム(難易度9)取得。
*2わずか二ヶ月で桜井を興行に。どこが「WRERAは選手第一主義」だとも思いつつ…
まあ、ゲーム中、意外に選手がケガしないから大丈夫だろう & 実戦で鍛えようという意味もありますけど。
*34月のWRERAは他に特筆事項なし。5月は、牛丼なかのやがスポンサー(市ヶ谷)、市ヶ谷CM、六角CD(「かなり」の売れ行き)、深夜放送への移行、堀のAACジュニア防衛第二戦(vsマスクド・ミスティ わずか6:22で決着)、といろいろありました。
*4初の5000人会場札止め。4月のスレイヤーは、他に深夜放送への移行もありました。
*5一応、本気でその予定でした。評価値差は大きい(約150)ものの、龍子側を操作すれば熱戦も、と思っていたんですが…
*6龍子さんの飛防が低いのが大問題。ヒューイットの飛び技に翻弄される始末。いわんや上原さん相手では。そういうわけで、決定戦は延期してみることに。
*7予告編もどきで使ったシーンそのままですが、書いた当時はもう少し別のシチュを想像してました。さすがにそういう展開に誘導したわけではありません。
*85月には上原さんのプライベートイベントもありました。本文とは何の関係もありませんが。
*9商品と言えば(?)、5月にスレイヤーはグッズショップを兵庫県に開店。同月発生のRIKKAのFCや、フレイア出演の恋愛映画(受諾。結果はヒット)、龍子の写真集(「かなり」の評判)、などに関連するグッズも売られたことでしょう。
*10WRERAは2000〜2500席会場が札止めになるように。序盤からの経営難も一息です。
*11現実世界の女子プロレスも、これくらいの人気が出ると嬉しいのですけど…
*12一応、加入から1年くらい経たない選手は全部断る、といった基準を設けて進めてます。
*13WRERA初の写真集は「すごい」売れ行き。なにげに「魅惑」持ちの堀さんです。
*14市ヶ谷の写真集は、過去四回申し出を受けてます。それをスルーされて、一回目の堀をOKしたのだから、目立ちたがりの市ヶ谷様は怒りそうだな…と。
*156月、市ヶ谷にはファンタジー映画の打診がありました。
スレイヤーでは、食品スポンサー(上原)、龍子FC、龍子CMが発生してます。
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