《さあ、満員の一宮文化体育館、いよいよAAC世界ジュニアのベルトを賭けたタイトルマッチの時間がやってまいりました!》
12月。WRERA女子プロレスの愛知巡業において、団体初のタイトルマッチが行なわれようとしていた。 *11
AAC世界ジュニア、チャンピオンのマスクド・ミスティに対するは、デビューからまだ半年のテディキャット堀。
まだまだ未熟かつ稚拙な堀は、序盤こそ経験豊かな相手に圧倒されるが、同期の仲間たちとしっかりと積んできた基礎鍛錬の成果が出て、徐々に優位に立っていき…… *12
《タイトル奪取っ! テディキャット堀、初挑戦でチャンピオンです! 11分22秒、トベ・リベルサで、マスクド・ミスティから3カウントを奪いましたあ!》
「……やった。やったにゃん! ゆっこ、来島ちゃん、麗華ちゃん、葉月さん……私、チャンピオンになっちゃったよ!」
「おめでとー! 寮長、あんた、大したもんよね!」 *13
「よくやったぜ、寮長! くぅー、先越されちまったなあ!」
祐希子や来島らの作る祝福の輪に、一人、市ヶ谷だけは加わらないままでいた。それに気付いた堀は、たたずむ市ヶ谷の元に駆け寄って、奪ったばかりのベルトを見せる。 *14
「えへ。麗華ちゃん、ベルト取れたよ。麗華ちゃんが鍛えてくれたおかげだね」
「……皮肉ですの? 私は、あなたの練習にお付き合いなどしていませんわ」
「試合で鍛えてくれたでしょ。麗華ちゃんの凄いパワーに慣れてたから、今日だって何とか逆転できたんだよ」
「……ふんっ。まあ、勝手に感謝する分にはかまいませんけど、所詮はジュニアのタイトル、名前の通りのお子様ベルト。そんなもので満足しているようでは、お里が知れますわね! オーッホッホッホ!」
「うん。ありがとね、麗華ちゃん!」
「あなた……少しは人の話をお聞きなさいなっ」
あんたに言われたくない、とその光景を見ていた全員がツッコミたくなったが、誰も口には出せずじまいに終わったという……
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